コスモスのワルツ
全ての生き物(人間も)偏見などのない世界になればいいなと願ってこの物語を書きました。
もうすぐこの森で子供達によるダンスの発表会がある。
男女ペアを組んで森のみんなの前で踊るのだ。
投票で決まる優秀賞をとったペアはなんでも好きなものを一つもらえる。
みんなはダンスが踊れるのと優秀賞のことでウキウキ気分なんだけど。
私は不安で仕方ない。
だって踊るのが下手だから。
去年だってペアの子に迷惑かけちゃったんだよね。今年は大丈夫かな。
今はを決めるくじを引いているところ。
ペアを公平に決めるためにくじで決めるらしい。
くじを引いていったみんなが笑顔でペアになった子に挨拶をしていってる。
とうとう次は私の番かあ。
いいペアでありますように。
そんな願いを込めて箱の中の真ん中の一番上を引いた。
恐る恐るなかを見てみると「オオカミ」と書かれている。
「俺のペアはウサギか」
キツイ声にを振り向くとニタニタと笑ったオオカミがいた。
よりによって怖いオオカミくんとだ!? 失敗したら怒られるよね、きっと。
「よろしくね、オオカミくん……」
「なんだよウサギ。俺じゃ不満か」
うつむいた私の顔を覗きこんでくる。
「違うの、私。踊るのが下手だからきっと迷惑かなって」
「まあ、俺は気にしてないぜ、よろしくな」
オオカミくんはそう言ってくれてるけど、次の時間はダンス練習。心配。
「みなさーん。ペアはできましたか? それでは広場に行って踊ってみましょう」
首のながーいキリン先生の指示に従ってみんなが移動する。
「はい、着きましたね。まずはペア同士で手を繋いでみましょう」
あーいよいよ始まっちゃう。
「私の掛け声に合わせてステップを踏んでください。はい、1・2・3。1・2・3」
オオカミくんと手を取り足を動かす。上下に動いたり回ってみたりみんなは思い思いに動き始める。
よーし私もやってやるぞ!
「つっ! 痛ってーな。開始早々足なんて踏むんじゃねーよ」
いきなり踏んじゃった。でも、頑張らなくちゃ!
「ゴメンねオオカミくん、頑張るから」
近くに他のペアが近づいてきた。
「おい、オオカミ。こいつはマジで何にもできねぇよ。去年、俺とウサギはペアだったんだ」
嫌味ったらしく喋って来るのはトラくん。トラくんのせいでもっとダンスがトラウマになっちゃったのよね。
「分かんねーだろそんなの、俺は優秀賞取るつもりだからな」
えっ!? 優秀賞!? そんなの私には出来ないよ。
「ま、せいぜい頑張れよ」
華麗なステップで回りながら遠くに離れて行った。トラくんはダンスが上手で去年も張り切ってたけど私のせいでダメにしちゃったのよね。
「気にしなくていいぞ、俺が教えてやる」
そんなオオカミくんが少しかっこ良く見えた。けど……。そのあとも私は何回も足を踏んだり、反対に回っちゃったりしちゃった。
「ゴメンねこんな私とペアになっちゃって」
「なあ、放課後時間あるか? なんでおまえが踊れないか分かった気がする」
踊れない理由?
「はい。やめてください。発表会は一ヶ月後ですのでしっかり練習してきてくださいね」
「「はーい」」
みんなは楽しみのためかいつもより返事がよかった気がする。
そうこうしているうちに授業が終わり、放課後なった。
「じゃあ行くぞついてこい」
「もうちょっと待ってて、すぐにしたく終えるから。よしオッケー!」
せっかちで先に歩いてしまっているオオカミくんの後に続く。
「ねえ、どこにいくの」
「秘密」
なにも答えてくれない。それっきり目的の場所に着くまで何も話せずにいた。
「よし着いたぞこの茂みの奥だ」
オオカミくんが示した茂みをくぐる。
「わあ、素敵!」
そこには赤いコスモスが風に揺られて辺り一面に咲いていた。
「綺麗だろ、ここ。俺のお気に入りの場所なんだ」
コスモスを見つめて満足げに答えている。
「この森にこんな素敵な場所があったなんて。オオカミくん花とか好きなの?」
「俺の顔に似合わないだろうけど、まあ、好きだな。この場所、俺しか知らないから内緒だぜ」
怖そうって思ってたけど、オオカミくんって以外と可愛い一面もあるのね。
こうしてオオカミくんとの個人レッスンが始まった。
「ところで、なんでこんな場所に?」
わざわざこんな所に来たのだから何かちゃんとした理由があるのかと思って質問してみる。
「特に理由なんてねーよ。おまえがここに来たときどんなこと思った」
「素敵な場所だなって」
「それでいいんだ。その気持ちで踊ればいい」
オオカミくんが言ってることが理解出来ない。踊りと気持ちは関係あるのかな。
「おまえは普段から頑張ろうと思いすぎなんだよ、もっと気楽に俺に身体を預けるだけでいいんだ」
そう言って私の手を取ると三拍子のリズムで足を動かし始める。
「まだ体が硬いぞ、リラックス。リラックス。」
目を閉じてオオカミくんリードを感じる。そしてゆっくり目を開くと不思議と心が落ちついた。
「こんな感じでいいかな?」
「そう、その調子」
今まで出来なかったステップも難なく出来た。まるでオオカミくんと私の身体が一つになったみたいで、次に動く動作が伝わってくる気がする。
「ほら、出来たじゃねーか」
またあのニタニタとした笑顔で顔を覗きこんできた。でも、もう怖くない。
「凄い! ちゃんと踊れた! オオカミくん魔法使いみたい!」
「これから毎日練習してやるから、覚悟しとけよ」
このとき、私はすごくドキドキしていた。きっとこの気持ちは踊れるようになったからだよね。
これから一ヶ月オオカミくんとの放課後レッスンを行った。今まで知らなかったオオカミくんのこともいろいろと分かったし、難しいステップも出来るようになった。それに、私自身もある気持ちに気づきかけていた。
「いよいよ発表会明日だな」
「そうだね、今日まで色々ありがとう。ちょっといい?」
「なんだ」
「もし、私達が優秀賞をとったら伝えたいことがあるの」
それだけ告げてオオカミくんとの最後のレッスンを終えた。
いよいよ発表会当日。
広場に森のみんなが集まって、公演を今か今かと待ち望んでいる。
控え室でトラくんがオオカミくんに話しかけていた。
「おい、オオカミ。ウサギに何を教えたかは知らないが、優秀賞は俺が頂いてくぜ」
あまりにもバカにして来るので私は少し腹を立てた。
「気にするな、それよりあんまり緊張するなよ、今までどおりでいいからな」
オオカミくんの言葉で我に返ると今まで練習してきたことを思い返す。優秀賞をとってオオカミくんに恩返しがしたい。そして……。
「それではみなさん、始まりますよ、しっかりと踊ってきてくださいね」
キリン先生が誘導すると、オオカミくんと手をとって舞台に上がった。
みんなで一礼をした後三拍子の音楽が流れ始める。
私はオオカミくんに教わった通りに心を落ち着かせて、リードに身体を預けた。
難しいステップを決めると観客のみんなからの拍手が聞こえる。
私、上手く踊れてる。私のペアがオオカミくんでよかった。踊りに中で自然と笑顔が生まれた。
「あのウサギとオオカミのペア上手だな」
「今年はあのペアで決まりね」
観客の声も感じながらさらに踊りに集中してく。
けど、このまま終わらなかった。
観客からの声を聞いたのかあのトラくんが、私達の進路を妨害して踊りにくくしてきたのだ。
「お前ら、邪魔なんんだよ」
トラくんが低い唸るような声で囁いた。私達の前に着きそのままずっと前を渡さない状態のまま踊り出し始める。
「あのトラのペアもいいぞ」
「一番かっこいい」
なんて声も上がり始めた。
まずいこのままじゃ……。
「心配しなくていい、俺がなんとかする」
オオカミくんはトラくんのステップの隙を着いて前を取り返した。
「なんだと、オオカミ! てめぇ!」
「悪いけど、俺は負けられないんだっ!」
曲が鳴り止むと同時に私の身体を何回も回し綺麗にフィニッシュを決める。
拍手が鳴り止むまでしばらくかかった。
森のみんなは投票するための用紙にどのペアが一番良かったかを選び、先生に渡した。
「おい、オオカミ、 ウサギにどんなことしたんだよ。去年俺がどんなに教えてもダメだったのに」
「俺は何にもしてない。全部ウサギが頑張っただけだ」
「そーかよ。でも、まだどっちが優秀賞かわからないぜ」
トラくんはギロっと私に視線を走らせる。
「それでは結果発表です。みなさんは前に並んでください」
全員が並び終えると、結果発表だ。
凄く心配。でもオオカミくんの顔を見ると、笑顔を返してくれた。それだけで気持ちがいっぱいになる。
「今年の優秀賞はー」
お願い。どうか優秀賞であって。
「オオカミくんとウサギさんペアでーす!」
やった! やったよ!オオカミくん!
嬉しさのあまりオオカミくんに抱きついてしまう。
「おい、みんなの前だぞっ」
「いいの、とっても嬉しいんだもん。ありがとう! オオカミくん!」
「それでは前に出てください」
ゆっくりと歩き、観客からの拍手と歓声が響く。
「ウサギさん、オオカミくん。優秀賞おめでとう。願い事なんだけどなにがいいかしら」
私はもし優秀賞をとったら何を貰うかを決めていた。
「「赤いコスモスの種でお願いします」」
オオカミくんと声が重なっちゃった。多分オオカミ君も私と考えてることは一緒なんだと思う。
「はい、分かりました。後日二人に届けるわね。それではみなさんもう一度拍手をお願いします」
もう一度凄い拍手が起こった後、控え室に戻った。
「優秀賞おめでとうオオカミ、そしてウサギ。あんなこと言って悪かったな」
びっくりした。あのトラくんが謝りに来てくれたからだ。
「うん。もういいの、ありがとう」
「来年は負けねーからな」
クルッと向きを変えてトラくんはスタスタと帰って行った。
私達もそろそろ帰ろう。
そして私はオオカミくんをあのコスモスの場所に誘った。優秀賞とったし、伝えたいこともあるしね。
「ねえ、オオカミくん。伝えたいことがあるの」
「なんだ」
「まずは、ありがとう。踊れない私を優秀賞まで導いてくれて」
「さっきも言ったけど、ただおまえが頑張った結果だ、俺は何もしてねぇ」
「もう一つ伝えたいことがあるんだけど……。踊ってからにしよう!」
今度は私をからオオカミくん手をとって踊り始める。
ねえ、知ってた? 赤いコスモスの花言葉は「愛情」って言うんだよ。
End




