序章 雑談
「ねえねえ、本当にそれで行くの?」
明るい声が響く。
その声は吸い込まれるように消えていった。
「使い込んでて、取り回しやすいし。」
同じくらい明るい声が響く。
まるで、遊びに出掛ける女子大生の会話のようだ。
・・・ここまでは。
「100メートル位が多いのに、大丈夫?」
「何年目だと思ってんの?」
一人の服装はT-シャツにジーパン・・・などではなく、
長袖で、厚めのコンバットシャツにカーゴパンツ、明るい茶色のベストにトレッキングシューズ、頭にはニットキャップをかぶり、ゴーグルをかけていた。
しかも、コンバットシャツはマルチカムと言われる迷彩が施されている。
もう一人の服装も、同じようなものだった。
そして、二人の手には、銃があった。
銃といっても、本物ではなく、遊び用のエアガンだ。
だが、服装にその銃のリアルさが、どこかの軍人に見えなくもない状態を作り出している。
一人目の手には P‐90 が。二人目の手には M14 SOCOM が。
「2年目をなめんなよ。」
「1年の差じゃん。あまり変わらないじゃん。」
「馬鹿にしてる?おこるよ?」
「お姉ちゃん、もう怒ってるじゃん。」
そう。しかも二人は女子である。女子大生。
人によって趣味は違うにしても、女子の人気がないような趣味の為、場違いに見えてしまう。
周りの人も同じような服装をして、雑談にふけっていた。
どういうことなのか。
話は半年前、四月に舞い戻る。