第一のフィアンセ
翌日、洲崎の姿はなかった。
案外あいつのお陰で学園生活が楽しかったんだと思い知らされるとは思いもしなかったが。
たまには屋上で食べるひとり飯も悪くない気がした。
ガチャリと後方のドアの開く音が聞こえると、「ゲェ」という悪いものでも見たような言葉が聞こえた。
だれだか知らんが、人をみてそういうのは良くない気がするなその顔を拝んでやろう。
後ろを振り向くとオーバーリアクションをしている女が立っていた。
それも漫画のような奴だ。
何回か瞬きをした後、ぎこちなく後ろを振り向き下の階に下りていってしまった。
なんだか魔女とか、そういうなんというか、黒くて地味で、人見知りのなんていうんだ、とにかく人とは縁がないような子だった。
あの子のテリトリーだったのか、それならすまないことをしたのかもしれないな。
心の中で彼女に謝ると手に持っていたおにぎりを頬張り始める。
昼食が終わると同時に昼休みを終えるチャイムが鳴っていた。
この場所から聞くと普段よりも大きく聞こえるような気がした。
立ち上がり室内に入り、階段を降りきったところで偶然にも生徒会長と出会ってしまった。
彼女も俺を見るなり気まずそうにしてそそくさと歩いて行ってしまった。
あの日アレを見ただけだけど、そんなにか?
少しばかり男嫌いとかそういうのが入ってるんだと自己完結して教室に向かった。
それからは頭に授業の内容など入るはずもなくあっという間に放課後だった。
HR中に担任が俺を読んでいた気がしたが俺にとっては関係の無いこと。
下駄箱に直行していた。
俺の考えを読んでいたのか下駄箱の前で仁王立ちする担任がいた。
「あかね君どうしてここにいるのかな?」
かなのあたりで声が裏返っていた。これはまじで怒ってる奴だ。
「先生がここにいると聞いたので」
「それにしては私を見るなり嫌そうな顔をしていなかったかしら」
唇がピクピクと震えている。
駄目だ終わった。
耳を引っ張られ職員室に連行され、監禁された。
「いいかい、今日は大事な話があると言っただろ」
そんな事言ってたような、そうじゃないような。
「はぁ~君にはホントに手を焼く、困って仕方がないよ」
最高の褒め言葉と受け取っておきますよ。
「それで、大事な用件ってなんです?」
「君たしか生徒会長さんと結婚するんだろ、だからお前の人生、いや性格を更生させるためと今後の夫婦せいかつのため、生徒会に入れ」
「は?」
長く驚くような事はなく、むしろ怒っている時のは? が担任の前で出ていた。
いやまて、なんだ。
整理させてくれ。
えっと。
だめだ、
なんだ。
え。
は?
「あれ? お前と美兎はそういう関係だろ、校長からもしっかり聞いているが、アレだろ君が将来の人を追っかけるようにここを志願したって」
俺は去年の担任に『どうせ進路なんて考えないんだろここ行け』っていう軽いのりで来た、いやもしかして根回しされていたのか?
なら、いやでも、生徒会長はそれらしい事もしないし、入学して一ヵ月半俺たちはたまに顔を合わせる程度のそんだけで、道で顔を合わせる、一生徒なかんけいであって。
「まさかお前自分の将来の相手の顔を今まで見てこなかったってこと無いよな、男なんだから日々妄想したりしてたんだろ、おめでとう君は今日からその妄想を発揮できるが。学内ではやめてくれよな」
なぁ先生、俺、まぁいい。
「と、とにかく整理させて欲しいのと、絶対に生徒会には入りません」
いやだ、あんなまじめ集団、いやでもあの人のことをそう呼ぶのは良くない気がするし。
あぁ、クソ、少しぐらい写真でも見てれば今こんなに驚きもしなかった。
となるともう一人の方が気になる。
「すみません、急用思い出しました」
そういって俺は急いで家に向かった。