見てないです ②
下駄箱に入っていた最近買ったばかりのお気に入りに靴を手に取った瞬間朝のHRで渡された重要なプリントを持ち帰るのを忘れた事に気づいた。
別に明日取り急ぎ渡さなくてはいけないわけじゃないが、忘れたままになりそうなので下駄箱に戻すのも面倒なのでそのまま置き去り急いで教室に向かった。
三階の教室まで全力で走った。
この学校はもと金持ちが使っていたがっこうなだけあって広いし綺麗だし、設備は最新だったり。
少しばかり気が気でない。
そんな事はさておきもうじき自分の教室の前まで到着する。
三階についてからは呼吸を整えながらゆっくり歩いていた。
ズボンのポケットの中に入っていたスマホが振動すると、すぐにポッケから取り出し通知を確認する。
『お兄ちゃん今日発売のいつもの雑誌買ってきて』
と画面に表示されていた。
ぱしりに使うなと思いながらも俺は買ってしまう。なんと情けない。
まぁかわいい、いや可愛くはないが妹なんで免じてやろうじゃないか。
ポケットにスマホを閉まったと同時に、大きな音を立てて目的地である教室の扉が開くと、一人の女子生徒が顔を赤らめてまっすぐ走り去って行った。
なんだと思い教室に早足で向かうと、窓の外を眺めた女の子が机の上に座っていた。
学年の女子とは違うオーラをまとっていた。
俺が入ってきたことに気づくと、そのこは机から降りては俺を見るなりにこりと笑って、
「見てた?」
と笑顔とは裏腹に怒った声が聞こえてきた。
上級生だ、リボンの色がそう告げている。
「いや、すれ違いになりましたけど何もみてないです」
「まぁいいや、生徒会長に言わないでくれればそれでいいから」
そういうと上級生は片手を振りながらその場を後にしてしまった。
これはもしかして教室でいけないこと――なわけないな。
少なくとも短時間でそんなできるはずがない。
でもきっと何かが起ころうとしていたんだな。
見ていなくて少しばかり安心した。
その後はプリントをカバンにしまい、下駄箱まで何事も起きる事はなかった。