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栄養満点、笑顔抜群

 国の方針からして男は生まれた瞬間から永遠の富を手に入れ男を産んだ親は死ぬまでお金に困らないと何処かのネット記事で見たことがある。

 実際にも母親はパートだけをしていて俺達三人一戸建で十分お釣りが出るほどに充実な生活を出来ている。それに精子提供すればさらなる莫大なお金が懐に入る。


 将来なにもする事がないのなら精子提供で大富豪になろうと考えると同時に自分の知らない子供が生まれ続けると思うとぞっとする話である。

 気にしなければもしかしたらそれはそれで俺にねずみ講のようにお金が湯水のごとく湧き出る。それは一生かけても消費できず何代もの子供にお金を与え続けられると思うとこの世界で最強の男であり子供の最も多い男となる。

 ギャルゲでもそんな設定無いぞ。


 ポケットが振動すするが()()を取り出すことは無く無視をするがメッセージにしてはバイブレーションが長い。もしかしたら母親から電話でも来ているのかも知れないので早急にチェックするためポケットに手を入れると同時に屋上のドアが開かれる。


 「今日も来てみました」


 アレから数日。毎日のように暇で退屈な屋上に入りびたりの俺の所にお昼休みになると訪れるようになっていた。毎日アニメやゲームの話をしてはそれだけで特に俺達の仲に進展があるわけでもなく友人という言葉のみが俺達の現状であり、今の俺に()という性別だけがはびこるこの世界で唯一話のできる人物の一人となってきている。


 ピンクの風呂敷に花柄の刺繍。中身はお弁当である。色とりどりでバランスのよいとてもおいしそうなお弁当だった。


 「どうしたんですか?」


 「いや、お弁当おいしそうだなって」


 「本当ですか?」


 「あぁ……」


 岸辺は万遍の笑みを浮かべながらミニトマトを口に運ぶ。

 まったりできるようになったのはいつ振りだろうか。張り詰めて自暴自棄になっていたあの日が嘘のように感じるがやはり俺の歩んだ道の中で数々の傷が重なり続けて病気の症状として現れているんだ。きっとこの子もどうなるのか解らない。


 だんだん頭が痛くなってくる。こないだまでは平気だったのに……。



 「顔色悪そうですけどお昼食べてますか?」


 「いや、食べてないけど」


 「それなら明日お弁当作ってきますよ」


 「いや、悪いよ」


 「駄目です」


 頑なに受け入れてくれず俺が折れる形で明日お弁当を作ってきてくれるらしいがとても心配である。


 それにもしも明日のお弁当で発作さえ出なければ俺も。

 

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