冬
自分が生きていると自覚したのは真っ白い部屋に黒縁の眼鏡をかけ長く黒い髪を後ろに束ねる大和撫子のような白衣の先生のカウンセリングを受けていたときにふと自分がなぜ生きているのか、自分は何者なのか……哲学的な何かを感じ取った瞬間に頭が真っ青になり体の振るえと共に記憶が鮮明に蘇りその場で何も腹の中に入っていない胃の中を無理やり搾り取った体液を吐き出していた。
高校に入学してから女性への恐怖はなぜか和らいでいた。あの日洲崎と出合ってからの俺は大地と出合ったかのように普通の生活が出来ていたんだ。だけれど俺はどこで道を踏み外してしまったんだろうか。後悔と反省だけが募る中俺のカウンセリングは嘔吐と共に中止となった。
なぜ俺は吐いたのか。それすらも解らなかった、あの医者に悪い事をしてしまったな、とにかく俺は今なぜ病院にいるのだろうか誰かが俺を連れてきたのか……違う、部屋を出てから誰一人長細い廊下を通らないそれどころか真っ白いこの病院に恐怖を感じていた。
「――早坂さん大丈夫ですか?」
先ほどの医者だった。心では解っているのだが差し伸べられた手を跳ね除けた。俺はドアのそばで倒れていたらしい。自分の事ですら解らない。なにもわからない。何一つ解らない。
「辛いだろうがもう少しの辛抱だ、後二週間がんばって耐えてくれ」
二週間の意味は二週間経ってから解った。俺は入院していた。
怪我の治療とメンタルケアの名目と同時にあの日の出来事はTVでも取り上げられるような重大事件となり政府も対応する一大事件となったらしい。
退院後俺は黒いスーツを身にまとったサングラスの女性に黒い車で連れられ訳のわからない場所に連れられると訳のわからない話の後に自分の家にたどり着いた。
「我々も今後の支援に努めさせていただきますが、やはりあの高校には行きづらいでしょうし変えるというのも手だとという事を頭の片隅に入れて置いてください」
黒服の女性が来るまで去っていく。
二週間俺は女性を見ても吐かなくなった、その証拠に今の今までどうにか話をある程度することが出来た。それもあの先生のお陰だった。
アレから夏休みが終わり二学期の後半、既に月日は11月の末。
俺は今日からもう一度学園生活に望む事になる。
お久しぶりです。
次回からボチボチ再開して行こうともいます。
更新頻度はわからないですが月に一回以上はできるようがんばりたいと思います。




