それが愛ならば ③
先輩はいつの間にか着替えてるしメイクが学校のときと違う、こういうのをなんていうのか知らないけど少なからず昔はやったギャルに似ている気がする。そういえばギャルはエロいイメージを抱かせるからみたいな事で一時期大問題になったらしいな。
「早いですね」
「お前と一緒に遊んでるとこみられるとお互い面倒でしょ」
「それ先言ってくださいよ」
「私だけでいいんだよ」
「そんなもんですかね」
「そんなもんだよ」
集合場所からすこし歩けばこの辺一帯がいろんなお店(主に服)がありよくクラス内でもここの話題がよく出ていた。だがこんな場所に男が行く必要が無ければましてや先輩はどちらかというと……。
前を歩く先輩が俺の顔を見ては「やっぱり無理言ったかな」とすこしばかり悲しそうな顔をされてしまうとこればっかりは弱いな。
そういえば先輩と話していても平気なのは俺を男として見ていないからなのだろうか、やましい気持ちもなければ仲良くなろうとはせず一定の距離感だから。だとすれば先輩も疲れるしいろいろ面倒ごとを抱えてしまうのではないかと思う。
まぁイメージの悪い先輩が今更生徒会長みたく真面目な学生生活送るはずも無いけど……っておれとほぼ同類ってことだろ? 俺はいいとしても先輩危なくないか。
「着いたぞ」
先輩が立ち止まるとこ洒落たカフェだった。中に人は半分って所かなうちの生徒はいないみたいだしここは先輩の行きつけか何かなのだろうか。
「いらっしゃいませ」
可愛いウエイトレスに案内されてカフェの隅に案内された。俺たちとしてはこんな丁度いい四角もある場所だと嬉しい限りでウエイトレスさんに心の中でありがとうと叫んでおく。
座るとウエイトレスさんにいつものお願いと頼んだ、俺はメニューを知らなかったのだが先輩がしまったという顔をしてアイスコーヒーのなにかよく分からない単語を呟いていた。
「ごめんな癖で」
「先輩が頼むものならなんでもいいですよ」
内心はよくないと思っているがこういう場所には普段から行かないからこの場合は助かったといえるだろう。
「今日実はな頼みがあるんだ」
「あんまり無茶なお願いは無理ですよ生徒会長の目もありますし」
「平気だよ」
先輩の顔は明らかに元気を失っていた。ここまでくるのに演技してたのか問題児の先輩にもなにやら悩みはあるみたいだな。いやいやこんな事は失礼だな。
「実はさこないだ君にも見られた子いるじゃん」
「はい」
たしか……あんまり顔は覚えてないな。とにかくやばかった事だけは覚えてる。
「親から結婚相手紹介されたんだってさ」
「そうですか」
最近だと珍しくないらしいな親同士が勝手に決める結婚、俺の場合は政府から直属だけどそれは正妻というべきか最初の結婚相手は必ず政府または生まれる以前から結婚を約束されていたかのどっちかである、親同士が決める場合は大半が多重婚となるわけで。そういえば洲崎の場合は前者の方だろうな。
「私との関係を終わらせたいと泣かれてしまってね」
「先輩には相手いないんですか?」
「一応はいるけど……」
「今は話せないかな」
一分少々の間があったが先輩からしてみれば重たい時間だったのかもしれない。
「どうすればいいのか分からないんだ、私がここまで思うのも彼女が初めてなんだ」
そういえば先輩はよく違う女の子といるのは知ってたけどどうやらとうとう運命の相手というのか現れたのか。俺はうらやましいと思ってしまった反面この気持ちをもう二度と出ないように封印する事にした。
「駆け落ちも考えてみたけど正直な」
「先輩はどうしたいんですか?」
「私は……」
唇をかみ締めたあと先輩は俺の目を見据えた。
「この気持ちを忘れようと思う」
先輩は諦めたのだ、諦められないが諦めた。
先輩はとても強い人なんだと思い知らされた。
その後間合いを見ていたのかウエイトレスさんがコーヒーを持ってきてくれた、先輩には常連だからとパンケーキをサービスして貰っていた。ここのお店に無いメニューらしい。
それから適当に駄弁って少しばかり仲良くなった気がした。
「それじゃこれで」
「今日はありがとな」
まさか出会ってすぐの先輩から人生相談されるとは思ってもみてなかったな。
なんだがすこし疲れたような気がする。
「うそつき」
大声で叫ぶ女の声が背後から聞こえると俺は後ろを反射的に振り向いてしまった。
そこにはうちの制服を着た女のこが先輩を叩いたのだ。




