温度
「一人じゃ心細いと思ってな」
担任の後ろから洲崎が俯いたまま出てきた。この場から今すぐにでも逃げ出したかったがさすがに担任の前でやるのはどうかと躊躇してしまい、適当に話してる担任が喋り終えて部屋から出て行った。
「そ、その――」
「平気俺は生徒会なんて入らないから」
「そ。そう」
無言のまま俺は沈黙を破るように部屋から出ようとしたとき運が悪いのかいいのか、生徒会長がやって来た。
「おお、赤祢君じゃないか――」
右手を陽気に振ってる生徒会長には後ろの洲崎は見えないだろう、この状況すごくまずい、まずい。
「ん? 後ろにはもしかして先生の言ってた役員に入る子かな」
俺の横から覗き悪いものでも口に入れたようなリアクションだった。
いや正確には尋常じゃないほど顔が青ざめていた。
「えっと、会長少し外周りしてきてもらっていいっすか?」
「え、えぇ」
まさか生徒会長の動揺した姿を見ることができるとは思わなかった。
さて会長が外に出て行ってもらったお陰で少しだけ張り詰めた空気が緩和されたような気がするがそんなの倍に膨れたものが元の大きさに戻っただけだと言い聞かせる。
「――いろいろあったけど私は別に何も気にしてないよ」
俯いていた洲崎はいつのまにか顔を上げていた。
少しばかり顔が赤かった、なぜそんな表情をしているのか到底理解できなかった。
「でも、俺無神経すぎた、ほんとに――」
「謝らなくていいよ、その代わり私ともう一回友達になって」
右手の拳に力が入る、俺は情けない、彼女は強い、俺なんかよりよっぽど、背中を押された俺は……
「避けてごめんな、なら仲直りだ」
俺達は握手を交わした、少し汗ばんだ俺の手は彼女の冷たい手に触れて少しばかり熱が下がったような気がした。




