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少し時間を置いて喋る
「――俺なんもしらなくてごめん」
洲崎は無言だった。
無言のせいか屋上の空気は少し肌寒い風の音だけが聞こえてくる。
「君が何も知らない事は知ってた、入学式の日は本当にうれしかった。だけど二日過ぎたぐらいからそういう噂が流れ始めて、最初は信じられなかったけどこないだ先生達が話してるの聞いて……」
洲崎は俯いてしまった。
「俺は未だに分からないことがあるんだ」
分かれるかのような空気だった、コレが最後の質問、そんな気がしてならない。
「私は嬉しかったんだよ、今もそう、だけど心に残る何かは消えない」
洲崎の中では割り切れない部分があるが理解はしてくれているんだろう。
「こんな俺と友達になってくれただけで嬉しかったよ」
俺はその言葉だけを残して屋上を後にした。
最後洲崎が何かを言おうとしていた気がするが正直聞きたくは無かった。
5月だというのに今日は暖かく、その暖かさに俺は少しだけ救われたような気がした。




