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剣の威力.仲間と呼べるのは……2

翌朝……

「起きて!瑠璃!いつまで寝てんの!」

朝一番、あまり聞きたくない声が聞こえてしまった。

「今、寝たところだよ……もう少し寝る……」

眠りについた時間が遅かったこともあり、俺の目覚めは悪い。

「ちょっと、面白いものを見つけたのよ!この時間じゃないと、いつも李塔って人がいるでしょ?いいから聞いて!」

「ったく、何だよ……朝っぱらから……うるさいなぁ」

俺の胸ぐらは既に美憂の手に掴まれていた。

「あぁ、はいはい。わかりました。しっかりと聞きますよ」

俺は観念したように両手をあげた。にもかかわらず、胸ぐらを掴まれたまま話がはじまった。

「あのね、さっき、昨日の扉の所に行ったのよ。そしたらね、大蛇がいたの!見たのよ!それがね、その大蛇ね……」

美憂みゆは興奮した様子で、身ぶり手振りを加えて話していたが、なにかに気づいたのか、話すのを泊めた。

「何?話しかけで止めるなよ」

「ごほっごほっ、早くご飯食べなさいよ、朝御飯!」

わざとらしく強引に話をそらす。

「へっ?話の続きは……」

振り向くと李塔さんがいた。

そっか、早く海中に出ないと!

「すみません、李塔さん。すぐに仕度します!」

「ああ、頼む」


朝食をとらず、とりあえず海中着を身につけた。

「李塔さん、今日は何処の珊瑚を取ればいいですか?」

「今日は 少し街から離れるから」

「はっ、はい」


李塔さんとパルのどちらが正しいかはわからないが、とりあえず剣の力を信じて、何が出てこようと戦う!絶対に逃げない!剣の力がどれくらいの物かはわからないけど……とにかく、俺はやる!


深海の中はとても静かだ。他に何もないように静けさが場を制している。街から離れると次第に暗くなって、灯りも少なくなってきた。

「瑠璃、俺はもう少し先に行く。ここからは危険が多いから、この辺の輝きが強い珊瑚を探していてくれないか」

「はい、頑張ります」

李塔さんは 怖くないのかな?


うわっ!この輝き!いや、こっちの方が……いやいや、この輝き……いけない、目移りばかりしてしまう。きちんと探さないと。

クラゲの放つ光が珊瑚を照らし、一層輝きを増す珊瑚はどれも美しかった。


珊瑚をひたすら探す俺の視界に、見たくもない姿が入ってきた。

「嘘ですよねー、また出ましたか?」

目の前にはひらひら、羽が沢山ついた竜のおとしごのような自分と同じくらいの大きさの生き物がいた。

羽は緑色だった。害がなさそうだったけど、自分と同じ大きさにびくついていた。だって、竜のおとしごって、ねえ?手のひらよりちいさいくらいでしょ?

そいつは少しずつ近づいてくるように思えた。後ろへ下がってみた。やはり下がればそれだけ少しづつ近づいてくる……

「くるな!」

とりあえず、声で威嚇してみるが……声がわかるはずないよなぁー。

こいつが毒でも持っていたら……やばいよなぁ。

どうしよう……どうしよう……

そうだ!剣、いざとなれば剣の威力を試すことができる!

少しずつ下がってはいたが、もうこれ以上、この生き物から逃げられる感じはしなかった。

俺は覚悟を決めて、背中に入れてあった剣を引き抜いた。

剣を手に持ち、切っ先をその生き物に向けた。この剣に威力があるのなら、きっと何が起こるたはず!

目の前にいた生き物は、剣を見るなり物凄いスピードで逃げていった。

えっ!?いや、剣を向けただけですよ?

これは……本物かもしれない!


「瑠璃、今 ゲンナが逃げていったが……大丈夫だったのか?あいつは猛毒を持っている。羽に触っただけで体がしびれて動けなくなるんだ。」

俺は剣はすぐに背中に隠していた。

それにしても、毒って……剣がなければ……そう思うと震えてきた。

「大丈夫か?瑠璃!」

「はっ、はい、李塔さんが近づいてきてくれたので、また逃げ出したみたいです。李塔さんのその見えない強さというか、パワーというか、すごいですよね」

「いや……そうか、なら良かった。さあ、気を取り直してここにある珊瑚を少しでも街へ持ち帰ろう」

「はい」


いつものように珊瑚を運び街へ帰った。


「おかえりーすっ!」

「ふぅー、って美憂か!」

思わず不満げな声を出してしまった。

「あら、失礼ね、私で悪かったわね!ま、いいけど。それはそうと、朝の話ね……」

「あっ、李塔さん」

またかっ、みたいな顔を露骨にした。失礼な美憂はふてくされた態度のままこの場からいなくなった。

なんだろ、そんなに李塔さんに聞かれたくないのか?


美憂みゆが去ってから少しして、俺は李塔さんと夕食に向かった。

「あっ、お帰りなさい、今日も珊瑚は沢山とれました?」

砂里さんが出迎えてくれた。

「少しだけど」

「砂里さん、とても綺麗な珊瑚が沢山ありましたよ」

李塔さんは言葉少なく答えたが、俺はどうしても気持ちが高揚してしまう。

「へぇー、明日 磨くの楽しみだわ」

砂里さんは 上品で美しい……それに比べて……

「ちょっと、瑠璃!早く食事済ませて!話があるのよ」

いつの間にやら美憂みゆが帰ってきていた。

「いやいや、ちょっとね……疲れて……」

と、振り向いて答えたが……もう、居ないし(--;)

何度もうるさい美憂の事思うと、早く話を聞いておいた方がよさそうな気がして俺は席を立った。

「李塔さん、俺 ちょっと用があるので行きますね」

「ああ、また明日」

「あら、瑠璃君、何か用があるの?」

「あっ はい、美憂が用があるって、うるさいんで……」

「そっか、また明日ね」

「はい、砂里さん」

いやー、ほんとにお美しい……


「あっ!瑠璃、こっち!」

「あのなぁ、いったい何だよ!」

俺は少し気持ちがイラついていた。

「あのね、こっちに来て」

「どこに行くんだよ?」

「まあ、いいから来て!」

あー、俺は美憂の何かが受け付けない!

あ、そっか。あいつの思い、言動、しぐさ。誰かに似てる……そしてこの苦手な感じ!

母さん!そうだ、間違いない。母さんのマイペースぶりにそっくりだ。だからなんか苦手なんだな。

でも、俺はもう男になったんだ!舐められてたまるか、強気でいくぞ!

「いったい、なんなんだよ!」

よしっ!強気だ!

「いいから、これを見て」

「なんなんだ?これは……」

「私ね、ゴビラの後を追けていったの。そしたらゴビラがここから出ていったのよ。出て行った後で中を見たら何枚かの鱗が落ちてて。でもこれはゴビラのじゃないわ。だってゴビラには鱗がないはずよ」

「鱗?・・・・・・しかしすごい枚数だな。100枚……いや200枚……なんか魚を料理した後みたいだな。……夕御飯の時に使ったんじゃない?」

「んな訳ないでしょ!魚料理なんて1度も見たことが無いわよ」

「そう言われてみれば……まぁそうか」

なんて俺が相槌を打ったその時だった。ゴビラが、まさかのゴビラが後ろに立っていた。

「貴様ら!何しているんだ!」

ゴビラの不気味な顔がもっと不気味に見えた。

「お前達、どうなるかわかってんだろうな?勝手なことしやがって」

ゴビラはカエルのような手で美憂と俺を摘まみ上げ、少し歩いた先にある扉を開けて放り込んだ。

どーん!

「いたいっ!」

「いててっ……」

「ここがお前らの最後の場所になるな!」

薄気味悪い笑みを浮かべてゴビラが言う。

「うそー、何でこんなことになるんだよー」

「ねえ、瑠璃 この場所……」

そう、あの骨が落ちていた場所だった。

とっ、言うことは 俺達は……ここで 何かに食われるって事……?

「美憂!おまえのせいで……?」

「ねえ、この骨って人間じゃ無いわよ。だってこれって帯びれの骨っぽいでしょ?これ見て」

手を広げたくらいの大きさで、団扇の骨だけになったような形のものだった。

「えっ?これは頭の骨……?嘘でしょ……」

さすがの美憂も びくついていた。

「うぎゃー!いやいや、あわわっ」

俺はもっとびくついていた。

人間のような頭の骨だった。


俺が喚いていると、ぎーっと扉が開いた。俺が前に見たコブラのような頭が5つ着いた蛇が入ってきた。

もう、目の前にある光景に声がでなくなっていた。

5つの頭が 気味悪く舌を出しピロピロしていた。

「ねえ、何とかしなさいよ!」

「いや、いや何とかって……」

度重なる出来事に頭がショートしている。

もうだめだ、俺の人生は……こんな形で終わるなんて、くそー!


…………いや!ちょっと待てよ、剣だ、剣があるじゃないか!今はこの剣の威力を信じるしかない!

背中に隠し持っていた剣を出し、蛇に突きつけた。

「かかってきやがれー!」

おう、我ながら格好いい!

「ねえ、そんな剣で大丈夫なの?」

「そ、そんな剣とは何を言うんだ」

「小さいよね?」

カッチーン!こいつ、絶対俺を馬鹿にしてるよな……いや、今は目の前のこの不気味な生物との戦いだ!

蛇の5つの頭は 全てが自分の方を向いていた。その表情から感じ取れるものは何もない。

ただ少しずつ近づいてくる。そう、確実に少しずつ……

蛇に突きつけた剣は俺の手の中で小刻みに震えている。戦おうにもどのタイミングでどのように刺せばいいのかすらわからない。

そんなことを考えている間に、もう目の前にあの不気味な顔が……

くそ!とりあえず一度は逃げだ!距離を開けよう。必ず不意を打つチャンスがあるはずだ!


「美憂!とりあえず動け!俺を信じろ!」

「い、いやよ……信じられない……」

いやいや、んなこと言ってる場合じゃ……あーもう!えっと、そしたらっと!

こんなことやってる間に二人とも殺られてしまう。

「美憂!俺がやられても、その後はお前にいくぞ!なら、今やられろ!」

「バカじゃないの!」

だよね、さすがにまずかったか……挑発したらいけるかと思ったんだけど。

くそー!どう言えば美憂が動くのか……

そうだ!

「美憂、後ろにゴビラが!」

美憂が振り返った。そして後ずさりをした。

蛇の5つの頭も一斉に美憂の方を向いた。

いや、美優が動いてくれればよかったんだけど……

でも逆に考えればチャンスだ!あいつは美優に注意をとられている!

今しかない!

「うりゃー!」

剣なんて持ったことも使ったこともない。それでも俺は目一杯剣を振り上げ首のところを突き刺した。

蛇は頭をうねらせながら体をばつかせていた。効果はあったようだ。

「痛っ!」

暴れていた蛇の尾が運悪く美憂の身体に勢い良く当たり、美憂は倒れてしまった。

「美憂!大丈夫か!」

「……」

返事がない……くそ!当たり所が悪かったのか!?

蛇の動きは止まった。しかし不気味な液体を口から出し始めた。

「これは、ガブの時と同じ液体……ということは?……身体に触れると俺たちもまずい!おい!美優!!」

美憂を揺すったが起きない。気絶しているようだ。

くそー!どうすれば……

とりあえず抱えていくしかない。出口はすぐに見つかったが、鍵がかかっていた。

あー!くそー!

まてよ、もしこの剣に威力があるのなら……

動きが止まった蛇の首から、液体が身体に触れないように剣を抜き取った。

そして、剣でドアのノブを強く突き刺した。


ガチャン

うわ!開いたー!すげーなぁ、この剣!

よしっ!美憂を抱えていこう。液体はもう足元まできている。早くしないと……


何とか美憂を抱えて外に出ることができた。

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