灯りがともる街と巨大蟹
私の小説を愛読してくださりありがとうございます。
昨日からとても寒くなりましたが 皆様 コタツに入ってみかんを山のように積んで、あったかいココアを入れて(ココアは牛乳半分)暖まってみて下さい。
私はですが とても幸せな気分になりました。
どうか風邪などひきませんようにお祈りします。
ただ漂っている感じがする。体の感覚もとても頼りない。
夢とは何故か思えない。本当にただ真っ白な世界を漂っている、ような気がする。
僕は死んでしまったのか……死ぬってこうゆうことなのかな?
何だか身体がやたら軽い!身体がなくなっているのかもしれない。
やっぱり魂だけになったんだ……
はぁー何て事なんだ、あんな豪華な船になんか乗ってしまったから、バチが当たったんだ……魂だけになってもこんなに頭で考えられるんだ!すごい発見だ!
発見しても死んでるんだから世に発表なんて出来ない……悲しい。
ただ感じる空間を漂ううちに何かまた別なものを感じた。
灯り・・・?かな?とすると天からのお迎かな?はてはて?
音もなく近づいてくるそれに僕は焦燥にかられる。ひどく喉が渇いている気がした。
沈黙・・・そして静寂。体験したことない恐怖が僕を襲う。
うわー、うわー!
身体が急に何かに締め付けられ、ふわっと浮いた。
と思ったら急降下!久しぶりに感じる地面にお尻を打ち付ける。
いててって~!
締め付けが揺るんだと思ったら落ちた、明らかにおちた、なんで・・・
重力なんかなくなっているのかと思っていたのに落下するなんて。
魂なら浮くだろう?!だよね、とほほ……
そもそもどこから落ちたのかすらわからない。どこに落ちたのかもわからない。ただひとつわかるのはぼくの目を開けることで真っ白な世界は元の色を取り戻した。
はて?ここは?
「瑠璃ー、るりー」
?探していた声が聞こえたような・・・
「母さん?」
母さんだ!振り向くとそこに母さんがいた。
たかだか時間にして半日とちょっと、しかも大半は寝ていたというのにそこに母さんの姿を見つけた僕は大きな安心感に包まれた。
僕は涙が出そうだった、でもここは男だ!泣くもんか!
それにしても一体何なんだ、この状況・・・畜生・・・別の意味で泣きたいくらいだ。
「瑠璃~」
「えっ、えっ?母さん?かあさん、かあさーん」
これ程 母が恋しいと思ったことはないだろう。いやマザコンじゃないんだよ?僕。
「ここだよ~、瑠璃くん!」
「かっ、母さん!」
「ほらほら、抱き締めてあげるよ」
そう言って 母さんは両手いっぱい広げていた。
「いやそれはいいです」
「ふーん、寂しかったのかと思ったよ」
何をおっしゃってますか、この母は。
「それより、母さん、僕達は死んじゃったの?ここは?天国?いや、バチが当たって地獄?」
「いーえ、生きてるみたいよ、だって 足あるもん、ほら!」
そういって あの古いワンピース、いや、可愛いワンピースの裾を上げて見せた。
あぁ・・・何だか、やっぱり母さんだ・・・( ̄▽ ̄;)こんな時まであっけらかん!この人の辞書にに焦るという言葉はないのだろうか。
いやいやそんなこと言ってる場合ではない。
「なら、ここは?船、BIG客船…レストランに、プール、大きなベッドそれに……」
「瑠璃、ちょっと静かにして!みんな何かに恐れているみたいで・・・母さんも何がなんだか分からないの。でもとりあえず、しー!私達、何だか変な所に来たみたいだよ、って言うか連れて来られたのかな?」
母さんは口元に人差し指を立ててそんなことを言った。
「なんで?」
「母さんも分からないの、ほら 船に乗ってた人達いるでしょ、多分みんな気がついたらここにいたって感じね」
「ふーん、っていうか何で静かにしてるの?出口探そうよ」
「んーそうしたいんだけど・・・なんかね、出れないみたいだよ」
回りを見たら船に乗ってたと思われる人が数人、座り込んでいた。
何だかみんな表情が暗いな・・・けっこうやばい状況なのかな?
こんな体験をしていながら普通に出ればいいのに、みたいに考えてる僕も母さんのことはあまりいえないくらい楽天家なのかもしれない。
何か音がする、ぴたん、ぴたん……
水が落ちるような音だ。水?少なくともこの部屋に水はない。じゃあ何の音だろう・・・
この小さな部屋から出れないのか?
この四角い窓もない部屋からとにかく出ないと。何処か出口は・・・
カチッ!
なんだ!なんだ!
座っていた人達が立ち上がり、叫び始めた。そして人とひとがぶつかり、その勢いで転がっている。
「きゃー」
「うわー」
「助けてくれー」
経験したことのない出来事はどうも簡単に人をパニックに陥らせるらしい。かくいう僕もかなりビビッている。
ウィーー!ウィーン!
部屋がフワフワ動いてる。
部屋がエレベーターのように上へうえへとあがっていくようだった。ただ、エレベーターのようにスムーズではない。
縦に横にと揺れる。まるで水の中をカプセルで動いて居るようだった。
?????
なんなんだ、ここは!くそっ、何度 驚けばいいんだ!僕は!
そうだ、母さん!かあさんは大丈夫なのか!?
「か、かぁさんー!」
「ふぁ~ぁい、いとっと・・・」
場違いなほどどこか楽しそうな返事が聞こえる。
ガタン!どたん!
「いててて・・・」
「母さん!大丈夫!?」
「・・・」
あれ?母さんが答えない。打ち所でも悪かったのか!?
「かあさーん!」
「ばぁー、大丈夫だよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ」(〃´o`)=3
こんなときまで茶目っ気だすなよ・・・母さん・・・。
んで、とりあえずここは何処だよ!
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「うっわ~ うわ~わっわっ なんだ、なんだ!?」
動いていた部屋が止まったそこは窓がなかったはずなのに何故か周りが見渡せた。
異様、とえば異様。ともかく見たこともない景色だった。ただとにかくどこかの室内にいて外は水中のようだ。ここは水族館?いや、潜水艦?海中トンネル、それとも・・・
まず魚が泳いでいる。海上にいたことを考えればここは海中なのかもしれない。
魚に続いて巨大な何かが横切っていく。これは・・・海亀!?でかい!!
魚たちが泳いでいるのはガラスの向こうだ。ガラスだよな?これ。
見る方向を変える。これは・・・
街があるぞ!それも綺麗な街だ。建築様式も街並みも見たこともない造りだった。何よりも色がすごかった。街の色が虹色なんてこんなの始めてみたぞ!
おもむろに母さんの方を見てみた。母さんは両手を胸の前で合わせて恍惚な表情で街を見ている。
やっぱりトリップしてるよこの母さん。
何しろこの母はこういった見たこともない絶景!的なやつが大好物なのだ。
あの街には人が居るのだろうか?まだここは街の入り口のように見える。
目線を上にやると電灯があった。ん・・・?電灯?
うわっ!この灯り、全てガラスの外から照されてるんだ!すごい!これは・・・クラゲ?の光だ!なんなんだ、ここは!?海の博物館なのか!?
「ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
周りを見渡していると一緒にいた一人が突然悲鳴をあげた。
振り向くとそこには・・・!うそ!身長165センチ、体重50キロ(痩せ型) 血液型はA型!あっ、血液型は必要なかったか。僕が8人、いや、中途半端な数字だ、10人並べたくらいの蟹がいる。ハサミの爪がどす黒くて 目が黒々としていて、大きな違和感のある口は何故か人間の唇に真っ赤な口紅を塗ったような形と色をしている。
巨大蟹だ~、ひぇ~・・・・・・・うん、そして気持ち悪い。
それが僕達の目の前に居るのだから、僕は気絶しようかどうしようか本気で迷っていた。
「お前達は今からこの街、いや、この世の海の世界すべて、そして全地球を全て支配するであろうデコス樣の為に働くのだ!」
赤い大きな人間の様な唇をぱくぱく動かせながら巨体蟹が話し始めた。いやそもそも話せるのか!?蟹って!ぬぉぉ!気持ち悪すぎる!
って???いやいや母さん?何を蟹さんに近づいていってらっしゃいますか?
「か、母さん、危ないから!こっちに来て!」
母さんは巨大蟹の近くで何してるの?息子ながら母を理解できません。ぐれるぞコノヤロウ。
なにをするつもりなのか怖すぎて声が出ない。
母さんは大きな目をもっと大きく開けて科学博物館にでも展示されてる標本を見るように観察しているようだった。
怒るでしょ!怒るよ!きっと蟹がおこるぞー!!頼むから下手に刺激しないでください。
とっ、その時だった。
「何を訳分からない事言ってるんだ!私は世界でも5本の指に入る程の金持ちだ!金ならいくらでもくれてやるからここからだしたまえ!」
一緒にここへきた人たちの中の一際恰幅のいい男が喚いた。巨大蟹は目玉を男に向けて言う。
「なんだ貴様?何様だ?金?はて?逆らうものは全て排除しろとの王からのご命令!」
「馬鹿か!貴様は!」
と言うと同時に蟹はその男性をはさみで掴んで持ち上げた。
「な、な、なんだ!やめろ!」
「だから、排除すると言った」
その途端、硝子の隙間が開き蟹は男性を持ったまま海の水の中に放り出した。
少しの海水が僕の顔にかかった。
う、うそだろ……
誰もが沈黙と絶句だった。
男性は海底の砂から一瞬顔を出した、牙のついた蛇?いや、鱧のような魚に加えられて 、その不気味な魚と共に砂の中に消えていってしまった。
くそっ!なんだ、そこまでしなくても!!僕達の命を何だと思ってんだ!
くそっ!くそっ!
僕は今までこんなに怒ったことがなかった。怒りを感じることは多少なりともあったが、それでも簡単に流すことができていた。
人の命が一瞬で、しかも理不尽に奪われることがこんなにも怒りを感じることだと理解した。
あんなにはしゃいでた母も泣いている。もともと感情の起伏の激しい母だ。よく人のことで泣いたり笑ったりしていた。
くそっ!畜生!!
僕は何も、何も出来なかった。
それから誰も何も言わず巨大蟹に逆らうものはいなかった。
ただ、言われるがままに巨大蟹の後をついて行くだけだった。
そう、誰かの葬儀の参列のように・・・・・・
最後まで愛読して下さりありがとうございました。
あなた様の大切なお時間をお使いになって頂いたこと とても感謝しています。
まだまだ寒い日が続きますが どうかお身体に気を付けてお過ごし下しいませ。