表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追憶のルヴニール  作者: 水景莉華
第1章 〜カオスゲート編〜
3/55

始動する歯車

「くそッ!入ってきた時はっ!何もいなかったのにッ!」


「きゃっ……!」


「姫ッ!」


あの後、すぐに玉座の間を出た2人。だが、2人の眼前に広がっていたのは、真っ白だった城内が黒い邪気に染まり、アンデッドのようなモンスターが王城を徘徊している様だった。


「待ってろ、今助けるからっ!」


レヒトは、持っていた短剣マインゴージュを鞘から抜き、周辺のアンデッドとエルシアを押さえつけているアンデッドに向けて構えた。


「出でよ、獄炎の光!我が(つるぎ)と共に燃えろッ!!」


レヒトがそう叫ぶと、彼の真下に紅色の魔法陣が出現した。この世界の、魔法である。呪文を唱え、魔法陣を展開。そうする事で様々な恩恵を受ける事が出来るのだ。彼が操る事が出来るのは、四大魔法の一つ、〈炎の魔〉だ。

その魔法陣の下から炎が発生し、彼の構えている剣へと巻き付いた。


火炎剣(ドラゴニアス)(ブリューレ)ッ!!」


レヒトが呪文と共に剣を振るうと、たちまち炎が広がり辺りにいたアンデッドを一掃する。その中に1人、メイドだったような格好をしたアンデッドがいた。


「お逃げ…くだサイ……姫、様…っ!」


「…っ!」


その黒く不気味なアンデッドは、死に際にエルシアを気遣う言葉をかけて、灰になった。


「大丈夫か、姫っ!?」


「う、うん…」


「ここは危ない!急いで抜けようっ!」


レヒトは、素早く私を抱きかかえると、燃える炎を背中に走っていった。彼に聞こえたかは判らないけれど、「姫様」と沢山の声が聞こえた。彼の手はとても温かくて、優しい人だとすぐに分かった。


判らない。

皆、私の事なんて愛していなかった筈。

なのに、どうして…

………。


……………。


「…おもい、出した…私…っ!

逃げなきゃ…また、殺されるっ…」


「おい、姫様っ!どうしたんだ…」


顔色を変えて、震える姫。

あの時の優しい笑みはどこにも無い。


「ドナフィスがっ…私を追って…!」


「姫様っ!落ち着いてくれっ!」


「…っ」


肩を揺さぶられ、ようやく落ち着いたエルシア。この感じは、多分精神操作系統の魔法だ。レヒトは彼女の肩を揺すり、その瞳に自分を映そうとした。


「大丈夫か?」


「ごめんなさい…。ごめん、なさい…」


呟くように繰り返された言葉。

直後、背筋が凍りつくような力を感じたレヒトは後ろを向いて立ち上がった。


「ー何故、嘘の世界に生きる?」


城の出口はすぐそこにある。

そして、その前に立ちはだかったのは彼から発せられているであろう禍々しいオーラをまとった謎の男だった。立ち込める邪気で、顔を見る事はかなわない。


「誰だッ!」


「…何故、滅びを受け入れない?

この世界は、罪に覆われ過ぎている。なのに…何故、生きる?人の子よ。汝は王であった。王であった男が、また繰り返すのか?」


「何を言っているんだッ!」


「…忘却こそ罪。

いつの日か、彼方に捨て去った事を悔いることになる」


「待てッ!!」


そう謎の言葉を残して、黒い男は姿を消した。というよりも、元から何かの幻影だったのかもしれないと思った。

分からない事だらけだが、今分かっているのは何者かに城が襲われていたこと、生き残ったのは、目の前の姫ただ1人だということ。レヒトは急いで城を後にした。

城から出る瞬間、身体が浮かび頭が痛むような感覚に襲われた。目にしたのは、来た時とは全く違う別の場所。


「どこだ、ここ…」


「城を出ると、別の場所へ転送される魔法がかけられていたはず」


「俺は元々、王都を目指していたんだ。ここから、近いか?」


「王都は国の東側だから、遠い…今抜けて来たのは、デリオル城なの…」


「そうか…やっぱり、あれがデリオル城で俺は王都のすぐそばまで行っていたのか。何か…あったのか?」


「…。下国(レイアーク)に…」


下国(レイアーク)…変な噂しか聞かない、あの国か…。全く、どうなってるんだ…

さっき見た、黒い男も気掛かりだ…」


地面の草が、ふわふわと揺れる。遠くで、白い鳥の群れが飛び立っていった。

優しい風が2人の髪を撫でていく。

青紫色の髪をなびかせながら、エルシアは首を横に振った。


「ごめんなさい。巻き込んでしまって…。

ここは、多分国の西部側…この街道の先には、カルム街があるはず」


「そうだな。王都へは急いで行く必要も無いから…行ってみようか」


そうして、青い空、白い雲…心地良い風が吹き抜けるカルム街道を歩いていくのであった。


「姫様、大丈夫?疲れてないか?」


「へいき。こうして歩くの…とっても、楽しい」


重そうなドレスを着ているのに、足どりは軽い彼女を見て、レヒトはほっと胸を撫で下ろした。


「ねぇ…あそこ」


「ん…?」


エルシアが指差した先には、女の子が倒れていた。2人は、慌てて駆け寄る。


「おい、大丈夫かッ!」


レヒトは女の子を抱き上げる。幸い、怪我も見当たらず気絶しているだけのようだ。だが、顔が青白くかなり体力も消耗している。


「う、ゔぅ…っ」


「レヒト、早く街まで…」


「あ、あぁ。そうだな」


こうして、急ぎ城下町を目指すレヒト達。

この時既に、後ろからフードを被った何者かに尾行されている事は知らないのであった。


謎のフードの人物「やはり、彼でさえ忘れてしまっているの…?

この世界は…どうなってしまうの…?

ボクは、どうしたらいいの?ねぇ、王女様…」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ