1<ゴッドオブロリータ>
どうも、一話ごとの適当な文章の長さがどれぐらいなのか、イマイチ良くわかりません。
1<ゴッドオブロリータ>
不良と言っても、何も、喧嘩をするだけが不良じゃない。遅刻もするし無断欠席もするし授業サボリも余裕でする。常人とは違う事、それも、悪い方を沢山積み重ねることで<不良>という称号が手に入る。良い方を積み重ねたらそれは、ただの喧嘩っ早い優等生だ。
俺らはその<不良>という称号を手に入れるために、中学時代は悪行を積み重ねた。何故俺らがそこまで不良に拘るのか。簡単だ。
≪喧嘩をしたいから≫
その一言に尽きる。元々は、俺らがボロカスにやられた奴らに仕返しをすることが目的だったが、喧嘩をしていくうちに、それ自体に快感を覚えるようになってしまったのだ。
では何故、それと不良とが結び付くのか。ただの普通の生徒が喧嘩をしたら、批判を受けるに決まっている。かつての俺達がそうであったように。だが、<不良>という肩書きを持てば、遠慮なく喧嘩ができる。他の奴らは、イジメたら逆にイジメられると思うから、絶対に批判しないし干渉もしてこない。だからこそ不良という肩書き・称号が欲しかったのだ。
中3にして、この地区最強の不良グループと化した俺たちは今、家の近くにあった私立近衛高校に入学し、初めの授業を初っ端からすっぽかしている最中だ。
「なあ、龍二」
「………どうした武」
屋上の床に胡座で鎮座している、具現化した
熱血ファイヤーファイターが俺に話しかけてきた。
「儂達は、こんな事してていいのじゃろうか」
「………何を今更。別に良いんじゃねぇの。いや、良くないけどさ。不良の肩書き背負ってるんだから、こんぐらいで退学なんてされねぇだろ」
具現化した熱血ファイヤーファイターこと武は、言葉遣いが古い。初めの頃は話す度に吹き出しそうになっていたが、いまではもう慣れた。本人曰く、昔のアニメでこの様な喋り方をしている人を見て、痛く感動したらしい。とても小柄な少年や着物を着た女性。さらには、体の大きな男でもこの喋り方をしている人がいて、そのどれもが、見た目や声に関わらずイカしてみえるらしい。俺にはその感性は全く理解できない。その前に、俺、アニメ見ないし。
「いや、儂が言いたいのはそういう事ではなくての。高校生になったのだから、今迄より将来の事を見据えなくてはいけないと思ったのじゃ」
確かにそうだ。俺らももう高校生。何時迄も授業すっぽかしてもいられない。だが………
「青春は今しかないんだ。今楽しまなくて何時楽しむつもりなんだ。大人になったら否応無しに、いろんな行動に制限がかかる。だったらそれまでの間に、やりたいことやりまくろうぜ!」
「だがしかし、その大人になるための準備が必要となるのではないかの。精神面、肉体面、知識面。様々な面の最終補正をするのが、この高校という場所なのだと、儂は思うが」
「時間はまだある。それに、うちには超天才が居るしな。中3の冬休みに親の都合でタイに行っちゃったから、今は居ないが。まあでも最近メール来て、<今年の春には帰るよん♪>って書いてあったから、もう少しで帰って来るだろうよ」
俺たちには理解不能な部品や機械を、まるで我が手のように操っている姿が目に浮かぶ。
あいつ、今頃どうしてるかな。
「肉体の方も、百何十という喧嘩のおかげで既に鍛え抜かれている。それに、喧嘩の終わりにやり過ぎない事で、我慢強さも強化されている。頭に血が上った連中の冷静な対処からも、いざという時の冷静な判断力が見につけられる。どうだ。これでも不満か」
「………そうだな。まだ、良いかもしれんな。だが、もう少し時が経てば勉強に専念したいぞ」
「うっしゃ。じゃ、高校生になったが、これからも宜しくな、武」
「此方こそ」
「それに、虎弥もな」
「…………………承知」
「今年でもっと喋れるようになろうな」
「…………………無理」
「おいおい」
入学初日からイザコザがあっては敵わん。俺はその場しのぎ力に乏しい訳ではないが、武が超単純な性格で助かった。雀だったら逆に言い負かされていた筈だ。………運が良いのか悪いのか。
虎弥は相変わらず無口だ。いつも、七文字分溜めてから言葉を発している。その言葉でさえ、熟語率が超高い。たまに的確なツッコミを繰り出す時もないわけではないが、一度に二文話したところは、今迄聞いたことがない。
「…………………下校生徒発見」
「えっ、早くねぇか。………そうか、今日は午前で終了だったっけな。くそっ、今日は、上手いので有名な近衛の学食を食うつもりだったのに」
「脅せばいいではないか」
「そういう非人道的なことはしてはいけない」
「どの口が言う。今現在、既に授業をすっぽかしている奴が言うと違和感しか感じられないのじゃが」
「………授業をサボっても他人には迷惑がかからない。だが、脅すとなれば話は別だ。明らかに迷惑をかけるじゃないか。俺は不良だが、そういう事はしない主義なんだよ。って、前にも言った気がするが」
「授業をサボると学費が無駄になる。親に迷惑をかけるのではないか」
「はっ、あれは他人じゃねぇ。寧ろ他人以下。あんな人種に生を与えた神の感性を疑うね」
「相変わらずじゃのう。その究極な家族嫌いは。これこそ、虎弥の無口と同等かそれ以上に直せそうもないの」
「そもそも直すつもりねぇし」
俺は家族がだいっっ嫌いだ。どれほど嫌いなのかと言うと、辛いメロンくらい嫌いだ。
小さい頃、俺は姉貴達やお袋の玩具にされていた。具体的には、着せ替え人形の代わりや、フリークッキングと題された家庭内料理講座で作られた禍々しい料理共のの毒味、さらには、ボクシングの中継を見て影響された姉貴に寝袋に入れられて、サンドバックにされた記憶もある。極めつけは、家族旅行の時。
「一等、3泊4日ハワイ旅行五人分、大当たりぃぃぃぃぃぃ!!!」
近所の商店街でやっていた福引で、俺が見事ハワイ旅行五人分を勝ち取ったのだ。この時ばかりは、姉貴達やお袋も俺のことを褒めてくれた。幾度となくテレビで見た、憧れの地、ハワイ。その頃には既に毛嫌いしていた家族と共に行くことは嫌だったが、そんなことも比較にならない程、ハワイ旅行が楽しみで仕方がなかった。だが………
「お父さんでしょ〜。静奈ちゃんに茜ちゃんに響ちゃん。それに私。これで五人なの〜。そんな訳で、四日間留守番よろしく〜。じゃね☆」
まさかの留守番命令。しかし、さすがに小学1年生で一人暮らしなんて不可能なので、留守番といいながら、ショタコン属性を持つ脂ぎった中年オバハンの家に預けられる事となった。
≪絶○した!!!ハワイ旅行を当てた本人を真っ先に切り捨てた家族に○望した!!!さらに言うとショタコン属性を持つ脂ぎった中年オバハンの家に預けられた事に絶○した!!!≫
とまあ、そんなこんなで、今に至る。流石にここまでやられたら、嫌いにならない方がどうかしている。最近では弄られる回数は減ってきているが、完全に無くなった訳ではない。今でも、玄関のドアを開ける時には覚悟を持って開けている。前に一度、ドアノブに電流流されてからトラウマなんだよ。
「では、儂等もそろそろ帰るとするかの」
「なに言ってやがる。今日も特訓だ」
「………じゃがなあ。特訓と言うても、最近は何処とやっても全く手応えがないからの」
「ああ、その点は問題無い。次のはいつもとは格が桁違いの筈だ」
「ほう、それは楽しみじゃのぅ!楽しみ過ぎて待ちきれんわ!して、その相手とは如何にっ」
武は本当に楽しそうにしている。まあ、仕方ないか。最近は全く手応えが無い奴ばっかだからな。久々に強敵とヤレる知らせを聞けば、そりゃあ、心が弾まない筈がない。俺だってそうだ。
「なんでも、激情高校の奴らしいぞ」
「激情高校じゃと………。しかしあそこのボスは、儂等が中3の時にボロカスにとっちめた筈じゃが」
「確かに昔、あそこのボスと戦って勝ったことがある。だが今回のはそれとは格が違う」
「格が違うじゃと。ボスでもないのにボスより強い者がいるということか」
「ああ、そうらしい。自称、かもしれないけどな」
「そうでないことを祈らんばかりじゃ。しかし、其奴はいったい何者なんじゃ。今のボスより強いのならば、其奴と変われば良かろうに」
「よく分かんねえが、変われない程強えんじゃねぇか。所謂、裏ボスとか」
「なるほど。では一刻も早くその裏ボスとやらとヤリたいのぉ!」
確かに振り返ってみると、武が言った通り、高校生にもなってこんな事をしていて良いのか、と思えてくる。だが、喧嘩は今じゃないと出来ない。大人になって暴力沙汰に手を出すのは流石に気が引ける。
高校は将来の事を考える3年間だ。社会に出ていい暮らしをするには、今からもう、こういう風な喧嘩は止めておいた方が絶対良い。しかし、楽しいのだ。喧嘩が。あまりにも。この深みに一度嵌ってしまったら、もう二度と抜け出せない。
………今は深く考えるのはやめておこう。まだ時間はたっぷりとあるんだ。じっくりと考えていこう。
と、自分の中でそんな結論が出た、その時。
「おい、あれは………」
校内から屋上に通じるドアが、ゆっくりと開いている。そして、一踏み一踏みの足音が屋上に広がる。そこから、制服姿の生徒が姿を現した。
「やあ、四神の諸君」
屋上のドアから、一人の少女が現れた。ていうか、少女と言うより………
「幼女…?」
「幼女言うにぁぁあ!君らだって、イケメンと熱血ファイヤーファイターとレッサーパンダじゃないかぁ!」
「………褒めてんの?貶してんの?」
「うぅぅぅぅぅ」
騒がしい幼女が俺たち三人の会話の中に乱入してきた。今は、一人で頭抱えて狼狽えている。何をしに来たのか、皆目見当がつかない。
「さ、さてと」
意外と立ち直りは早いようだ。
「君達は、今までここで何をしていたんにゃ……だい」
「今までって………」
この幼女は何を意図して質問しているのか理解出来なかった。知ってどうする、って話になるが。しかし、答えなければ、絶対に帰してくれない気がする。幼女だから。お子ちゃまだから。仕方ないので、思い出すことにした。今までの事を。
授業すっぽかして、屋上で駄弁って、幼女に出会って………。まあ、ありのまま言ったら確実に嫌味を言われるので、ありふれた嘘でまかせを言おう。
「儂に任せろ」
「武………」
武が、何かを決意した様な顔をして肩を掴んできたので、言葉が喉の末端まで来てたが、無理やり飲み込んだ。武には途轍もなく良い嘘を思い付いた様だ。俺も言おうとした身だが、ここは、仲間を信じることにしよう。
「授業すっぽかして屋上で駄弁っていたのじゃ」
「なに本当の事言ってんだてめぇ!嘘言わねぇと意味ねぇだろうが!」
「え、だって。この幼女が、今まで何をしてたのか聞いてきたんだもん」
「だもん、じゃねぇよ。子供か!キャラ崩れてるぞ、もっと定めろよ!」
「グヒヒ、さーせん」
「やべぇよ!キャラが終わってるよ!」
「さて、そろそろ本題に戻ろうかの」
「お前が脱線させたんだがな」
「全く、龍二は仕方がないのう」
「……………疲れたよ、パト○ッシュ」
高校生になってもこいつのボケ連発劇は健在だった。俺は本来、真面目な不良キャラなのだが、こいつと居ると何故か狂う。しかし、一緒に居たくないとも思わない。一緒に話しても楽しいし、自分の内を曝け出すことができるぐらい気の置けないマブダチ。それが具現化した熱血ファイヤーファイターこと、玄野武という男だ。
「で、其方は何者じゃ。見たところ、この高校の生徒の様じゃが」
その幼女はこの高校の制服を着用していた。だが明らかに背が足りていない。俺らと同様、新入生だろうか。しかし、仮にそうだとしても小さ過ぎる。これならまだ、小学4年生が高校の制服のコスプレ衣装を着て、学校に忍び込んだと考えた方が納得できる程の小ささ。
「ふふふ、よくぞ聞いてくれた!」
幼女は腰に手を当て、仁王立ちをした。そのまな板な胸がさらに強調されて、思わずプッときてしまった。
「私はこの鬼ヶ島高校の生徒会長にして、理事長の孫、初音婦梨茶だっ。恐れ入るがいい!」
小さいお子様が、出来るだけ自分を大人っぽく見せようと背伸びしているようにしか見えない。ザッツ、ロリ。将来は、ロリコンな中年オタクにストーカーされそうだ。お兄ちゃん、とても心配だよ。
「うんうん、偉いねー」
「なっ………!ば、馬鹿にするにゃあ!本当なんにゃあ!」
「…………………てか、初音婦梨茶って………」
「い、今流行りのキラキラネームという奴じゃな。わ、儂はこういうものは好かん。名とは本来、『将来はこうなって欲しい』とか、じ、字画とかで決めるものじゃ。そそれが最近は、ら、雷音や愛度留ななどどど。将来に苦労するのは子供じじじゃ。お、大人の都合で勝手な名前を付けられる身にもなれってももももんじゃじゃ!」
「声が吃り過ぎだぞー。お前、キラキラネームが良かったのか」
「べ、別にっ。キラキラネームが良かったなんて、全然思っていないんだからね!………勘違いしないでよね」
「男のツンデレはきもいんにゃ!」
「こっちもこっちだ。語尾が『にゃ』って………」
「…………………萌え」
「にゃーーーー!!」
ついつい撫でたくなる衝動を抑える事が出来ずに、怒らせてしまった。腕を振り回してワーギャー騒がしく喚いている。
このプリティーちゃんを高校生と認識することは不可能に近い。ぶっちゃけ、脳内で無意識に拒否られてる気がする。
「でだ。今度こそ本気で本題に戻ろうか」
「ふぃー………。取り乱してごめんね。生徒会長の私がこれじゃあ、全生徒に顔向けできないよね。で、君達が今まで何をしていたのかだけど………」
「君は本当に中学生かい?」
「それ本題じゃにゃい!しかも、にゃにっ。中学生!?私は中学生の限界ラインすら越えられてにゃいの!?おかしいでしょっ。私は本物の高校3年生で、生徒会長にゃの!これ証拠!」
と言って、ロリ子ちゃんは身分証明書を胸ポケットから取り出した。障害物無しにサラッと取り出せた事に、俺は思わず微笑んでしまった。
クイーンオブロリータから身分証明書を受け取り、そこに書かれている文字を、一字一句じっくりと眺めた。しかしこの身分証明書は本物で、俺のと比べてみても、字数、漢字、字の大きさや角度まで、全く同じだった。
ここから導かれる答えは一つ。
「偽造しちゃダメじゃないか!」
「偽造じゃないんにゃーーー!!ほ・ん・も・の!どこまで信じたくないんにゃっ、お前は!」
「地平線の彼方まで」
「……………………もう反論する気力すらでないのにゃ………」
まったく。ここまで笑えるリアクションを取られると、さらに苛めたくなるではないか。………まずい、ニヤケが止まらない。メッチャ弄りてぇぇぇ!
〔テレレレッテレー
"青山龍二"は新しく≪S属性≫を修得した〕
「嬉しくねぇー………」
「どうかしたか龍二」
「いや、なんでも………」
「お主、流石にロリ生徒会長を弄り過ぎじゃ。完全にご機嫌斜めになっているぞ。普通に話を聞いてやれ」
「ああ、わかった………………とでも言うと思ったかぁ!この俺がこんな面白いも_______」
〔バシュン!
"青山龍二"に≪ゲンコツ≫がヒット。56のダメージ〕
「さっきから何なんだこのテロップは!」
「黙れっ。少しは反省しろ」
「はぁ………」
でもまあ、改めて振り返ってみると、少しやり過ぎたと自分でも思う。仕方ない。ここは男らしく、真面目に謝ろう。
「本当に、誠に、真剣に、リアルに、本気ですいませんしたッ!!」
「うおぉう!?」
土下座で謝罪。社会での基礎知識だと雑誌で言われていた。その言葉を信じ、コンクリートの床に全力で頭を垂れた。これを読んだ時、猛烈に違和感を感じたが、何回を読み直す内に普通の事だと思ってしまった。………本当だよな。デマじゃないよな。
「な、なかなか凄まじい謝罪方法だね。斬新だ。こういうの、私は好きだよ」
「いや、まあ。確かに斬新じゃが………。何かが、何かがずれておる」
「…………………変人」
「本当に影が薄いよのう、お主は」
「…………………当然」
………そろそろ頭を上げていいだろうか。血が上って来たのもあるが、それ以前にコンクリートが痛い。微妙に凸凹しているところが無駄に痛いんだよ。
「ま、私もそこまで子供じゃないしね。許してあげるよ」
「ほ、本当か!」
「う、うん」
「さっすがゴッドオブロリータ!単純過ぎ_______」
〔ゴキン!
"青山龍二"に≪正義の鉄拳≫がクリティカルヒット!50000000000のダメージ〕
「……………………」
「反省しろにゃ!このボケ茄子!」
いやー、あのロリにあんな力があるとは思わなかったよ。何で先に教えてくれなかったかなー。おかげでお兄ちゃん、下を向くと肩甲骨が顎に当たるようになっちゃったよー。あはは、あははは、あははははははははは_______
「おい虎弥っ、救急車だ!」
「…………………了解」
俺の頭は、異常にゴリマッチョなドクターにコブラツイストを食らわされて、2分で完治したらしい。………そのドクター、絶対に就職先間違えただろ。