Prologue<四神誕生>
超不定期です。一年休んでも、読者様の寛大なお心でお許しください。
Prologue<四神誕生>
それは、中国の神話に出て来る天の四方の四方位を司る霊獣だ。東の青龍<緑>、西の白虎<白>、南の朱雀<赤>、北の玄武<黒>。五行説には、中央に麒麟<黄>を据える場合もある。
漫画的に、それぞれをタイプで表すとすれば、青龍は木タイプ、白虎は光タイプ、朱雀は炎タイプ、玄武は水タイプ。最後に、麒麟は土タイプとなる。
この五匹の霊獣達は、見た目や名前がカッコ良く、尚且つタイプ付きであることから、最近ではゲームや漫画で引っ張りだこだ。狂い咲きも甚だしい。
さて、こんなにもカッコ良い霊獣達の事を知ったら、確実に放っておかない者達が、この世にはいる。そう、自らを悪魔の申し子と讃えたり、フルメテオ帝国の偵察者などと訳の分からない事を言ったりする、夢の覚醒者達。そう、所謂、中二病感染者だ。
「パリで凱旋門を見た時の強烈な既視感………あの正体が今、やっと分かった。僕は前世で、地獄の門の管理者だったんだ!さあ、お前ら、少しでも悪さをしてみろ………そうすれば、この僕が直々に地獄へ叩き落としてやろう!」
と言う、チビでメガネな超いじめられっこ。
「私は精霊の祖たるアルナの生まれ変わった姿。またの名を飛鳥。私は直接この世界に干渉する事が出来ません。いえ、してはいけないのです。もし貴方達と同時空に、私の存在を一欠片でも同調してしまえば、この世界の均衡値が崩れ、間も無く空間ごと崩壊していくでしょう。ですから皆さん。出来るだけ、私に近づかないで下さい。皆さんの存在が保てなくなります。」
と言う、超美人な痛い子。
この二人の例からわかる通り、中二病には、二通りある。一つは、真性の中二病。文字通り中二辺りに発症し、ドラゴン・精霊・悪魔・魔術etc、などの非科学的・非現実的な妄想が本当に有ると思い込んでしまう。将来には、黒歴史と化す病だ。
もう一つは、自分の身を守るための、虚偽の中二病。イジメの対象にされている時、自分が前世で地獄の番人だったと言う事で、虐められなくなると考える。しかし実際は、頭がおかしくなったと相手にされなくなるのだ。
しかし逆に、さらにイジメがエスカレートする可能性も高い。ある意味、一種の賭け。成功確率50:50の、命懸けのルーレット。当たるも外れるも、相手次第だ。
ここに、満14歳の真性中二病感染者<男>がいるとする。そしてある時、彼はこう言ったのだ。
「青山龍二で"青龍"、白井虎弥で"白虎"、朱織雀で"朱雀"、んで最後に、玄野武で"玄武"、か………。すげー、すげーよお前ら!同じ学校に四神が揃ってるよ!これが興奮せずにいられるかっ、どうだお前ら、俺の仲間にならないか!俺今、霊獣の召喚にチャレンジしてるんだよ。あと少しなのになかなか召喚出来なくてな………。けど、同じ霊獣が宿っているお前ら四人が揃ってれば、出来る気がするんだ。よろしく頼むよ!なあ!」
翌日、その四人は強制的に中二病に連れられて、学校の屋上へと向かった。そこには既に巨大な魔法陣が描かれていた。四人はそれぞれの霊獣が司る方角の場所へ立たされ。延々と、中二病の放つ召喚呪文らしき意味不明な言葉を満1時間程度聞かされた。
結局、中二病は妄想の中で召喚に成功し、一人で満足して去って行ったという。
流石にこれは、四人全員がムカついた。あり得ない程眉間に皺が寄り、眉が綺麗な八の字を描いた。今度は四人がその中二病を屋上へ呼び出し、一人は竹刀で面打ちを、一人は自作スタンガン<1万V>を、残りを二人でダブルラリアットを、それぞれ気が晴れるまでくらわせた。
もともと面識が無かった四人だが、これがきっかけで、休み時間中にも他教室に向かって世間話などをするようになった。その間に、いつの間にかその四人は、親友と呼べる関係にまでなっていったのだ。
_______(≧∇≦)中学で、四神を名乗る四人組が連んで一人の生徒をリンチした。
そんな噂が学校中に広まるのに、そう時間はかからなかった。大多数の生徒達は、この四人を批判し、遂には先生達に呼び出しをくらう羽目になってしまった。
『どうしてこんな事をしたんだ』
『…………………』
全員共、答えることができなかった。リンチ後、それぞれ反省したら、「やり過ぎた」と全員が思ったのだ。しかし、その時にはもう手遅れだった。そのリンチされた中二病が学校中にその話を触れ回り、学校外にまで広まったのだ。私立校であるため四人は二週間の停学を貰い、復帰した直後には、学校のゴミとしてイジメを受けることになった。その何日か後には、他校の不良からの宣戦布告を受けた。当然、殴り合いの喧嘩などしたこともない彼らには勝ち目が0.01%も無く、結果は惨敗であった。
彼らは超負けず嫌いだった。心が未成熟なだけに、負けることに寛大では無かった。さらに、初戦は惨敗だったのだ。四人は既に、相手を喧嘩で圧倒的に負かす事しか頭に無かった。
【一つ、手加減無用。いくら弱くても、常に全力でかかるべし。一つ、武器の使用は不粋である。正々堂々、正面から立ち向かうべし。最後に一つ、相手に一生ものの怪我を負わせてはいけない。
これらが、喧嘩を行う際の絶対条件だ。逆に、これに違反した場合、その瞬間それは喧嘩ではなくなる。相手が違反すれば、此方はもう、何をしても許されるのだ。此方が違反した場合も同様、相手のすることに一切文句を言うことが出来なくなる。______<『喧嘩上等』〜鬼灯出版>より引用】
【君は、喧嘩には何が一番必要だと考えるだろうか。筋肉、気合、根性etc。その中でも私は、柔道を身につけることをオススメする。
『柔を持って剛を制す』
これは、柔道を嗜む上での合言葉だね。知っている人も、もしかしたらいるのではないかな。
世の中には、力ばかりの馬鹿もいるだろう。知能だけの秀才もいるだろう。だが、どちらにも偏りすぎてはいけない。柔軟な姿勢・考え方があってこそ、より良い方へ進めるのではないだろうか。
『天才とは、99%の努力と1%の閃きで出来ている』
これは、かの有名な偉人、トーマス・エジソンの名言だ。知っている人も多いだろう。しかし実は、最近になって、これは誤訳だったという事実が判明した。
『1%の閃きがあれば、99%もの無駄な努力はいらない』
これがその新訳だ。閃き<=柔>さえあれば、努力<=筋トレ>はいらないという事だと、私は解釈した。つまり、筋肉隆々、腹筋山脈の出来上がっているゴリマッチョにも、柔道を完璧に身に付ければ勝てるのだ。強く、そして優雅に。さあ皆で、レッツ・プラクティス・柔道!(お問い合わせは<090-****-○○○○>まで)______<金………もとい、柔道の亡者〜鬼塚出版>より引用】
彼らの中の2人は早速学校の柔道部に入部し、その後2人共、メキメキと頭角を現してきた。1ヶ月後にはレギュラー入り、2ヶ月後には、県大会で優勝するまでになった。そしてその片方は、柔道だけでは飽き足らず、空手・合気道・カポエラetc、出来ることには全て手をつけた。最終的には、様々な武道が融合し、文字通り最強の武道家となった。もう片方は、身長210cm・体重が110kgの超巨漢へ成長し、こっちはこっちで最強となった。
残りの中の1人は、もともと剣道を習っていたため、部活は当然、家でも並々ならぬ努力を積み重ねていった。その結果、日本一位の座に君臨し、僅か14歳にして、最高位から二番目の七段に昇格した。
最後の一人は、所得している科学技術のレベルが半端ではなく、プログラミングはまだ序の口。ハッキング、ウイルス放散を一切バレずにやるのはお手の物。スタンガンや銃などの武器を自分流に改造し、さらにパワーアップさせることも出来るのだ。本当に、言い出すとキリが無い。
そんな、一人一人のスペックが尋常でない者達がグループとして活動し始めたらどうなるかなんて、目に見えている。
四人は、武術としては最強となったが、如何せん、不良としての喧嘩は、他と比べて余りにも経験不足であったのは否めない。だから彼らは、真っ先にその経験不足を埋めようと考えた。勝つにしても負けるにしても、夜な夜な街に繰り出し、他校の不良共と毎日の様に喧嘩をしていった。
初めのうちは、相手の連携プレイに翻弄され、それぞれのスペックが高いのにも関わらず負け続けた。しかし、何十回と喧嘩を繰り返していくうちに、他のグループにも引けを取らない程の、寧ろ其れらを上回る程のチームワークが出来上がっていた。そしていつしか彼らは、四神と呼ばれる様になり、その地区最強の不良となっていった。