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捜査一課サイドは容疑者情報解禁で終了?しばらく退屈な天使たちサイドと式部サイドの話が続く。
午後3時。警視庁捜査一課3係に木原たちが集った。合田は木原と神津に捜査に状況を説明する。
「明日藤原高明の関係者が一堂に会する誕生日パーティーがクルーズ船で行われる。俺は被害者の妻から受け取った招待状を使って乗船するつもりだ」
合田の話を聞きながら沖矢はホワイトボードにパーティーの出席者の名前と職業を記す。
『藤原愛衣。株式会社ライトクローバー事務員。源幸助。株式会社センタースペード警備員。東宮初音。東都西銀行銀行員。柏木香織。東都商業高校古文教師。京宮蛍。劇団シラウオ劇団員。式部香子。横浜大学生』
「この6人の中に狙撃手がいるのか」
神津からの問いかけに対して合田は頷く。
「その可能性が高いということだ。被害者の藤原高明を恨んでいる人間は会社内にいなかった。狙撃事件が発生した時間帯営業に行った会社員は6人いたが、全員アリバイがあることが確定した。手がかりが増えるまでこの6人を容疑者として捜査する」
捜査方針が定まった時、北条が捜査一課3係に顔を出した。
「分かったことがあります。まず狙撃手が使用したライフル銃はドラグノフ狙撃銃です。被害者の体を貫通した銃弾とライフルマークが一致したので間違いありません。それと、被害者の体を貫通した銃弾の発射角度と事件当時の天候の状況を考慮してシミュレーションした結果、犯人は北東の方向400ヤード先にあるビルの屋上から狙撃した物と思われます」
「400ヤード先か。犯人は銃器の扱いに長けているようだな」
「そのようです。公安は狙撃犯の目的が退屈な天使たちのメンバーだった西村桜子の暗殺とみて独自に捜査しているそうです。公安の捜査の邪魔をするなというのが上層部の判断ですので、公安との合同捜査本部は設置されません。千間刑事部長からの指示は狙撃事件と退屈な天使たちは無関係であることを証明しろ」
「千間刑事部長にしては真面な捜査方針ですね」
北条から千間刑事部長の指示を聞いた木原は腕を組みながら頷く。
「この前の暴行事件の美味しいところを組対に持って行かれたことが悔しかったからでしょう。また手柄を横取りされるようなことがあってはならないから、公安と対立するような捜査方針にしたのですよ」
「そんな裏話があったのか。これまで千間刑事部長とは捜査方針で対立していたから珍しいと思った」
「公安の捜査は強引で手段を選ばない。公安だけでなく公安調査庁もこの事件を受けて動き出すかもしれないな。一度浅野房栄公安調査庁長官に話を聞いた方がいいかもしれない」
テロリストによる犯行という疑惑が浮上した狙撃事件。公安が絡むということはこの狙撃事件が危険な事件であることを意味している。これまでのような組対との対立とは話が違う。
捜査一課3係は危険な真実を暴くため公安と対立する捜査方針の元で捜査を開始する。