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それから10分後2人はイタリアンレストランディーノに到着した。店内には昼時だというのに客が一人もいない。
「栞。今日は友達と一緒か」
店主でシェフを務める板利明が宮本栞の顔を見ながら聞いた。宮本栞は頷く。
「はい。香子がどうしてもって言うから一緒に来ました。本当は一人で来る予定だったのですが」
「そんなこと言わないでよ。まるで私が邪魔者みたいじゃないですか」
式部香子は宮本栞の一言に対して反論してから、頬を膨らませた。その後式部香子はキョロキョロと店内を見渡す。
「そういえば今日はあの黒ずくめの人たちはいないんですね。お揃いのサングラス。ネクタイの色だけが違うあの4人組。2か月くらい見かけないけど何かあったの」
「さあ。海外支部に転勤になったと聞いているが」
「そう。ということは、彼らの正体がしおりの執事ではないということかな。しおりの周りに張り付いていたから、てっきり執事だと思ったけどね」
式部香子は宮本栞が退屈な天使たちのメンバーであることを知らない。もちろん彼女は暗部世界の住人ではない。何も知らない彼女が鴉たちのことを執事だと思ってもおかしくはない。
宮本栞に張り付いている鴉と呼ばれる男たちの存在に気が付いている所から、式部香子は只者ではないことが分かるだろう。
2人はミートスパゲッティを注文すると、店内に取り付けてあるテレビからニュースが流れた。
『先ほど午前11時頃東京新宿で狙撃事件が発生しました。狙撃により亡くなったのは株式会社ライトクローバーに勤務する会社員藤原高明さん。37歳。警視庁は藤原高明さんの命を狙った殺人事件であるとみて調べを進めています』
そのニュースでは被害者となった藤原高明の顔写真も公開されている。そのニュースを見て式部香子の顔色は青白くなった。
「嘘。あの藤原高明さんが亡くなるなんて」
「知り合いですか」
宮本栞からの問いに式部香子は頷く。
「うん。藤原さんは私のお父さんの幼馴染なんだよ。それで子供のころ遊んでもらったことがあるんだよ。あの藤原さんが狙撃されたとしたら事件だよ。ということで一緒にこの狙撃事件について捜査したいのですが」
宮本栞は式部香子の声を聞き思考回路が固まった。
「なぜ捜査したいと思うのですか」
「藤原さんの敵を取りたいから。犯人特定の重要な情報を警察に伝えたら警視総監賞受賞が貰えるから。こんな身内が絡む事件じゃないと、中々捜査できないよ。容疑者が分からないからね。明日その容疑者たちが出席するクルーズパーティーにお父さんの代理として参加するから捜査もしやすいでしょう」
「藤原さんの敵を取るというのは建前のように聞こえますが。本当の目的は警視総監賞受賞獲得ではありませんか」
「いいでしょ。こっちは容疑者が特定されているから捜査がしやすいし、この店に通っている江角千穂探偵を絡めたら向かうこと敵なしだよ。三人いれば文殊の知恵っていうし」
勝手に巻き込むなと宮本栞はため息を吐いた。こうして宮本栞と式部香子は警視総監賞受賞獲得のため狙撃事件の捜査を行うこととなった。




