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午前8時10分。成田国際空港へと向かう道は渋滞を起こしていた。ハニエルが運転する車内で助手席に座っているサラフィエルは呟く。
「何で渋滞やねん」
「今日はアイドル歌手三沢マコが世界ツアーから凱旋帰国するそうです。おそらくこの渋滞の原因はそのファンが空港に押し寄せていることでしょう」
「まさかレミエルはんはこれを計算に入れたんか」
「そうです。レミエルさんは狩りをするためなら手段を選びません。ライバルを狩るチャンスが舞い込んで来たら確実に動き出します」
「そのためなら仲間の追跡も回避するちゅうことやな。厄介な野郎や。ほんでどうするん。このまま空港行っても奴が逃げた後やで」
「そうですね。それでは作戦を変えますか。次の信号を右折します」
「行先は取引が行われる横浜プリンセスホテルか」
「違います。そこに行ったとしても彼の性格上無駄足になるでしょう。それならじわじわと相手を追い詰めるだけです」
ハニエルが運転する自動車は間もなくして信号機に差し掛かり右折した。彼女が運転する車は渋滞により集まっている自動車の山から遠ざかる。
その頃成田国際空港に到着した飛行機から金髪のスポーツ刈りにサングラス姿の男が降りた。その男の名前はジョニー・アンダーソン。彼は退屈な天使たちでレミエルというコードネームを与えられている。
レミエルはスナイパーとして退屈な天使たちの活動に参加している。彼の愛用するライフルはH&KPSG―1である。彼は700ヤード以上先のターゲットを狙撃することも可能である。
そんな彼は現在ハニエルたちに追われていることを知らない。そして彼は現在愛用しているライフル銃を所持していない。
もしも彼が空港内でライフル銃を所持していれば銃刀法違反で現行犯逮捕されてしまう。暗部の人間である彼はそのようなミスをしない。
彼はライフルを別の場所に預けている。まずはライフルを引き取らなければ工作員Sとの銃撃戦どころではない。レミエルは一応体術も心得ているが、サラフィエルやハニエルのような体術に長けた暗殺者相手だと負けてしまう。それは体術に関してはサラフィエルの方が上であることを意味している。
相手はレミエルと互角の実力を持っているスナイパー工作員S。ライフルを所持していなければ確実に工作員Sに殺されるだろう。
スタンガンの電流で銃弾の軌道を変えるという神業を持っているウリエルなら工作員Sとの戦闘もライフルなしで勝つことはできるかもしれない。
兎に角工作員Sとの戦闘に置いてライフルは必需品。ライフルを所持していなくても勝利できるのは一握り。
ジョニーは愛用するライフルを引き取るため、路線バスに乗り込む。その行先は横浜プリンセスホテル。




