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 2013年1月25日金曜日。午前10時45分。黒い影はゴルフバックを右肩に担ぎ、タカハラマンションの屋上に立っていた。

 その黒い影はチェック柄の上着から赤いチョークを取り出す。

「これは警察への挑戦状」

 黒い影は独り言のように呟き、手にしている赤いチョークで屋上のアスファルトの床に『34』と数字を書く。

 落書きをした後で黒い影は担いでいたゴルフバックを屋上の床に置く。ゴルフバックのファスナーを開けると、中にはライフル銃が閉まってあった。

 黒い影はドラグノフ狙撃銃にスコープを装着して、ターゲットが現れるのを待っている。


 午前11時。非番として警察を休んでいる大野は同居している西村桜子と新宿を歩いていた。

 西村桜子はテロ組織退屈な天使たちのっメンバーだった。去年の10月31日、彼女は大野と対峙して、銃撃戦を行ったが結果、彼女は大野の銃弾により被弾し、記憶を失った。

 今は西村桜子という偽名を使い、大野と同居している。同居が決まった理由は彼女自身が大野を信頼しており、大野と一緒にいれば記憶が戻るのではないかという、警視庁上層部の企みが絡んでいる。

 西村桜子。ラジエルと呼ばれた女が東京警察病院を退院してからもうすぐ一か月が経過しようとしているが、退屈な天使たちは何もアクションを起こさない。あのテロ組織は仲間を捨てたのかと一瞬大野は思った。


 だが彼らがラジエルを捨てたとすると、奇妙な矛盾が生まれる。彼らは仲間が逮捕されそうになると、必ず仲間を暗殺しようと動き出す。だがラジエルの場合はそれがない。

 この矛盾が意味することを大野は理解できなかった。大野が眉間にしわを寄せながら歩いていると、隣にいた西村桜子が心配そうに声を掛けた。

「どうしたの。大野さん」

「病院を退院して1か月経過しているのに、君を襲おうとしている悪い奴らが動き出さないことがおかしいと思いました。そろそろ彼らが動き出してもおかしくないと思うのですが」

「もしかしたらその悪い奴らは私のことを諦めたのかも」

 それはないと大野は思ったが、西村桜子の笑顔を見ると彼の険しい表情は和んだ。


 その様子を黒い影が400ヤード離れたタカハランションの屋上でスコープ越しに見ている。

「風向き。追い風。視界良好」

 その黒い影はドラグノフ狙撃銃を構える。

「標的をセンターに入れて撃つ」

 スコープに標的が映ったのを確認すると、黒い影は引き金を引く。銃弾は物凄いスピードで前方に飛んでいく。


 それはわずか1秒にも満たない出来事だった。大野と西村の前を歩いていたスーツを着た男が突然倒れた。スーツの男を撃ちぬいた銃弾は腹部を貫通し、近くの店の窓ガラスに突き刺さる。


 大野は倒れたスーツの男に駆け寄る。だが男は既に息絶えていた。その遺体の近くには銃弾が落ちている。そこからこのスーツの男は何者かに射殺されたと大野は感じた。


 一方ドラグノフ狙撃銃を撃った黒い影はスコープを覗きこみ、頬を緩ませる。その後黒い影はライフル銃を片づけると、狙撃現場から逃走した。

 

 それから1分もしない間に、野次馬たちがスーツの男の周りに集まった。仕方なく大野は携帯していた刑事手帳を野次馬たち見せる。

「警視庁の大野です。今すぐ警察と救急車を呼んでください」

 その瞬間大野はハッとした。もしもこの狙撃が退屈な天使たちの仕業だとしたら、西村桜子の命が狙われていることになる。この状態はまずいのではないかと考えつつ大野は仲間の刑事を狙撃事件の現場に呼んだ。


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