3/8
死人花《シビトバナ》
真っ赤な真っ赤な花が咲く
死人の白い顔を飾るように
媚びるように風に震えたのは
甘やかな赤の彼岸花
灰色の空の下
ひっそりと艶やかに
あの世とこの世の狭間
死の向こう側へと花弁を揺らし
こちらへおいでと緩やかに手招く
眼球に染み付く原色の赤
それは滲んだ血のようでもあり
白い女の唇に引く紅の如く
仄かに浮かび上がる
笑みを溢し
誘うように
毒花の香に酔い
滲む赤に目が眩み
よろめいたその爪先が
鮮やかな花の陰
その暗がりに踏み入れてしまわないように
また何処かで
赤が揺れる
作者マイページ 氷月 深夜様
http://mypage.syosetu.com/310847/




