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渋いものは乾燥させれば大体美味しい

日曜が全部試験だったりバイト先で面倒なお局に苛められ辞めたり雪でスッ転んだりしましたが生きてます。


カチャカチャ、薬品の入った壺の蓋を開きアンリはにんまりと笑った。


「良い具合に乾燥しちゃって‥……ふふふふ‥……」

「姉さん、お客さんが引いちゃってる…お茶でもどうぞ」

「ごっごめんなさい!私もお手伝い‥……」

「良いんです!どうぞ、座っててください」


あの後、優姫が手に小さい怪我をしていたことに翔識が気付いて言った事でアンリに火事の詳しい説明を求めるランの説教が止まった。

その後説明をしながらもクリスタの自宅に戻り、優姫を手当てし終えて今に至る。

因みに蒼姫(あき)は店の隅でどこからか連れてきた猫を膝の上に乗せ、ぼんやり外を見ている。


「それで…お二人は異世界から来た。という事で良いんですか?」

「はい!」

「何でそんな嬉しそうなんだ馬鹿」


スパァン!翔識が良い音を出して優姫の頭を叩く。


「だって翔、お母さんの世界が本当にあったんだよ!?怖い魔物に綺麗な魔法…お母さんが話してくれたことは本当だったの!!」

「‥……お母さん?」


優姫の楽しそうな声が届いたのか、壺が入っている薬品棚の扉を閉じるアンリ。

優姫とランを見比べて、アンリは翔識を見た。


「ねぇ、この子のお母様って大体40歳くらい?」

「‥……それがなんだ」

「‥……成る程、そういうこと」


そうポツリと呟くアンリを見て、あ‥……となるラン。





思い出すのは先日。《獅鋼之爪(レグルス)》の8代目頭領であるジークリドから聞いた、彼がまだ青年だった頃に出会った異人の話。

異人が来たのは今から約28年前でジークリドは現在46歳‥……優姫はランと同い年に見えるので、もしかしたら彼女の母親がジークリドの言っていた異人なのかもしれない。

あの会話だけですぐにその考えに行き着く姉、是非ともそれを仕事に向けてほしい。





「あとは、白い騎士と黒い騎士!」

「騎士?」

「お母さんの絵本に、女の子を守ってくれる二人の騎士が出てくるんです!」


目を輝かせながらそう言われるが、アンリもランも何も言えなかった。

騎士は、言い方は悪いがどこにでもいるような(ジョブ)だ。

誰の事を言っているのかは分からないが、期待させてあげられない‥……が、それを言うわけにもいかない。

姉妹が珍しく困っているのが初対面ながらに分かったのか、翔識は深く息を吐いてアンリを見た。


「テメー、取引を忘れちゃあいねぇだろうな」

「取引?」


ランと優姫が不思議そうにお互いの縁者を見れば、アンリは分かってると言いそうな顔で微笑んだ。


「私は貴方にここについての知識を与える。それ以外の事は不干渉」

「そうだ」

「けれど、それで良いのかしら?」


眉をひそめる翔識。

取引を持ちかけた時と今は状況が違う。あの時は彼等についての好奇心で取引を持ちかけたが、奴等に命を狙われていると分かった今、約束ですかあぁそうでしたハイさようなら。なんて流石のアンリも言えるわけがなかった。


ーこの二人は、こちら側に居た方が良い

ー…特に


アワアワと翔識へ何かを言っている優姫を横目で見つめる。

奴等の狙いは彼女だ、理由は彼女が異人の娘だから…奴等は彼女さえ無事なら、翔識は殺してしまうだろう‥……否。


ー私なら、殺す

「貴方達みたいな違う世界から来たって言う人間に会ったことがあるって言うおっさんがいるのよ。明日来ることになってるのだけれど…その人から話を聞いてからでも、クリスタを出るのは遅くないわ」

「翔、私は残った方が良いと思う」

「‥……あ?」


アンリの話を不機嫌そうな表情で翔識は聞いていたが、優姫がそう言った事で本音が少し漏れた。

そんな翔識を見ながら優姫は蒼姫(あき)を指差し、そしてアンリを見た。


「この人達は私達を助けてくれたんだよ?翔の言ってた人や矢を射ってきた人が、何で私達を狙ってるのかは分からないけど…話を聞いてからこの後どうするのか、考えた方が良い」

「‥……」


「達」じゃねぇ、お前を狙ってやがる。と翔識は言おうとするが、優姫の真剣そうな表情に喉まで出かかったその言葉を飲み込む。

その様子を、アンリはニヤニヤ笑いながら見ていて‥……その頭にランが軽くチョップをお見舞いした。


「姉さん、笑わない」

「あら、私は至って真剣そのものよ?残るって事で良いのかしら」


そう問えば、優姫が何度も頷く。翔識は納得いかない部分もあるらしいが優姫の意見に同意と言うことらしく、何も言わない。

それを見てアンリは了承の笑みを浮かべ、ランを見た。


「ラン、イヴァルさんに火事の原因と彼等について伝えてきてちょうだい。おっさんの事はもう話してあるから通じると思うわ」

「え、私が火事のこと言うの!?私なにもやってないのに!?」

「良いじゃない別に、多分怒られないわよ多分」

「怒られるに決まってるじゃん!もう‥……わかったよ、すぐ帰ってくるから変なことしないでね!」


そう言うとランは立ち上がって机に立て掛けていた自身の武器を手に持ち、店から出ようと歩き出す。

が、それを見て優姫が慌ててランの腕を掴んだので足を止める。


「あのっ、ごめんね!わざわざ色々やってくれて…」

「大丈夫です!絶対に貴方達を元の世界に戻します!」


そう言ってランは笑い、外に出ていく。

心配そうに見送る優姫を見て、翔識はアンリを無言で見つめた。


「あら、何か?」

「‥……こんなのが姉だと苦労も倍増するだろうよ。と、思ってな」

「ふふ、言ったじゃない。私より真面目な子だって」


お前に比べれば殆どの奴は真面目に見える。と翔識は言いそうになった。


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