食べ物は咀嚼しないと喉に詰まらせる
春から学生になります、あとバイト始めました。自分にとって充実した専門学生2年間を過ごせるように努力したいですが、目先の目標としては免許をとる。これ重要。
「失敗した、完全に選択を間違えたわ」
そう呟きながら森の中を走るアンリ。
頭に思い浮かんだのは、先程の男の事だった。
「ちょっと格好つけてこっちに来たのは良いけど、連れてくれば良かったわね……今頃笑いながら逃げてるわ、絶対逃げられた。いつかあの細目に肉の塊ぶちこんでやるわ………!」
上手いこといったから、後でランやセストに話すためにと格好良いであろう台詞を考えて、言って、去った。今頭を冷やして冷静になって考えると、馬鹿としか思えない。
人の急な気分の高揚というものは時として人を惑わす、といった所だろうか……教訓にしてランに教えといておこう。
ー……それにしても、あの子はどこに行ったのかしら。
ー魔物に食われて骨をしゃぶられてないといいんだけれど……
「アンリ」
「キャアッ!?」
突如として真横の茂みが大きく音をたて、大きな影が飛び出してきた。
アンリはそれに驚いた拍子に足を滑らせ、顔面から地面と対面する。
「アンリィィィィィイ」
「ちょっちょっ、ちょっと待って!!しつこい!!」
「む………」
顔をあげれば、鍬を担いだ蒼姫の姿があった。
それを見て息を吐き、立ち上がって服の埃を払うアンリ。因みに言うとあんなに長く言葉を発する蒼姫を初めて見た。
「蒼姫ちゃん居たのね、吃驚したわ…」
「ん、森が騒がしかった……人を探してる………」
「人って、スーツの男?」
………身ぶり手振りで何かを伝えようと手を動かし始める蒼姫。
体手前で左手を斜めに動かし、両手で髪のモサモサ感を伝えようとしてくる……が、全く分からない。
「………若木みたいな、胴長の【弓士】……だと、思う」
「えっと、そいつの髪がアフロっていう事は何となく掴めたわ」
「アフロ違う……モサモサ……ハネハネ………ピンピン………?」
「……表現的にそれ、髪が薄くなっていってないかしら」
アンリの言葉に蒼姫の動きが数秒止まり、そして鍬を持ち直した。
「奥に極東の子、いた………巻き込んだか………?」
「あっ諦めた……そうねぇ、寧ろこっちが巻き込まれたような……」
「速いよ翔!もう少しゆっくり走ってってば!」
ふと、若い女の子の声がしたのでそちらの方向を見る。
森の奥の方から翔識と名乗った彼と、彼の連れらしき少女………どうやら目覚めたらしい。そして黒い犬がいてソレは一目散にアンリの頭に噛みついた。
唐突な出来事だったので反応できず、今度はアンリの後頭部が地面と対面する。
「!お前、くたばってなかったのか」
「今くたばりそうよちょっと蒼姫ちゃん!!人が必死で抵抗してる時にこの犬に餌あげようとしないで!!」
「………こっちの方が旨い」
蒼姫が犬に乾燥させた肉を渡すと、すぐにアンリから離れて肉へとかぶりつく犬。
ー今、あっちの方が美味しいって…
ー……私が美味しくっても、嬉しくないけれど…。
複雑な気持ちになったところで立ち上がり、頭についた葉を取りながらアンリは少女へと向いた。
少女はアンリを見て目を開いている……視線は髪に向かっているようだった。やはり珍しいのだろうか。
「初めましてお嬢さん。私はアンリよ、最初に貴方達を見つけたのが私だったりするのよ~」
「あっ、八月一日優姫です!あれっ英語の方が良いのかな、まいねーむいずユーキ・ホズミ……」
「馬鹿が英語なんぞ使ったら馬鹿がバレるだけだ、止めろ………おいアマ」
翔識へと視線を移すアンリ。
翔識はくいと顎で蒼姫を示し、それから口を開いた。
「そこの女もお前の仲間か」
「そうよ?蒼姫ちゃんって言って、貴方が少し前までいた圃場の管理を私がいない間にやってくれるの。まぁ………」
「………?」
蒼姫の足元で肉を頬張る犬……恐らく魔物だろうそれを見て、アンリは目を細めた。
犬というより狼には余り良い思い出がないのだ……こちらの犬は飼い慣らされているが。
「魔物と宜しくしてるとは思ってもなかったけれど」
「ん………友達、狩った魔物の肉をあげてる、代わりにモフモフさせてもらってる………」
「見事なまでに有効な見返りがないわね。蒼姫ちゃんは魔物牧場でも始める気なの?」
………ゆっくりと首を横に傾げる蒼姫。
「………この子達、どうする………?」
「いきなり!?」
「いつもの事よ……そうね、ひとまず向こうで知り合ったおっさんやイヴァルさんに会わせようと思うの。その方が早いと思うわ」
そう蒼姫に言い、アンリは翔識の方を見てニコリと笑う。
優しさが全く感じられない、威圧感のある笑みだった。
「その方が貴方にとっても良いと思うのだけれど、どうかしら?」
「………言っとくが、説明を受けたら出ていくぜ」
「良いわよ別に、じゃあ森から抜け出しましょうか」
そう言って来た道を戻ろうとしたアンリの後頭部に、犬はかぶりついた。
† † † † † † †
森から出れば、街の方角から走ってくる人影が複数見えた。
どうやら自身が起こした火事に気付いて来たらしい……もう自分で消火済みだが。
その人影の先頭は、ランだった。
「あっ……姉さーーーんッ!!今度は何をやらかしたのっ」
「紹介するわね、私の妹よ。ランっていう馬鹿真面目な性格なの」
息を切らしながら駆け寄ってくるラン。
それから顔をあげてアンリへと何かを言おうとして、アンリの横に立っている翔識と優姫に気付く。
それから蒼姫を見て、再びランの視線はアンリへと戻った。
「本当に何したの!!」
「確かにしたけど、完全に私が悪い流れになろうとしてるわよね………ラン、ひとまず紹介するわね」
それから横の二人を手で示して、言った。
「翔識君と優姫ちゃん。私が火事を起こした原因で今から街に連れていくの。一緒に行く?」
「………は?」
一番自分の事を理解しているであろう妹に、周囲の一般市民がするような反応をされた。




