とある世界の彼と彼女
言い訳タイム:合宿でした
チャイムが鳴ったのを確認して、鞄を掴む。
周囲の目が自分に集まるのを感じたが、毎日同じ行動をとっているので慣れてしまった。
教室を出て、まだ静かな階段を降りて玄関口に向かい……何かに後ろから激突された。
「だーれだっ?」
「……」
「えぇ……無視しないでよ翔」
その言葉に呆れつつ、後ろを振り替える。
黒髪の制服を着た少女……まぁ、幼なじみが何故かいた。
「……何でオメーが居やがる」
「またホームルーム聞かないで行っちゃうの?駄目だよちゃんと聞かないと」
「無駄に長いハゲの話なんざ聞く気が湧かねぇ。俺は何でオメーがここにいるかって聞いたんだ、優姫」
「えへへ」
彼……織崎翔識の言葉に八月一日優姫は笑った。
笑って誤魔化そうとしている彼女を見て軽く溜息を吐き、翔識は下駄箱から靴を取り出してさっさと外に出る。
それを見て優姫も慌てて靴を履き替え、翔識の隣に並んで歩き出した。
「翔、先生がまた翔の事で困ってたよ?“織崎は協調性がない“~って」
「困る?あいつらが困るのは自分に入る金が減るときだろう」
「そんなこと言わないの!先生だって頑張ってるんだから」
「ふん」
まだ閉じている校門を横に立っている塀を使い、登って越える。
着地して振り返り、越えようとしている優姫に手を差し伸べる。
「…………さっさとしろ」
「えっ、あ…ありがとう」
「ふん」
優姫の手を掴んで降ろし、再び歩き始める。
優姫とは小学校からの付き合いで、彼女の母親が父親と離婚した際に慰謝料代わりに翔識の近所の家を譲られたことから始まる。
彼女の母親は絵本作家で、統一された世界観で描かれている。
「そうだ!お母さんが新しい絵本出すんだって、見に来ない?」
「あ?……パス、面倒」
「えー!そんな事言わないでよ、私好きなんだから、お母さんの描く絵本!」
そう言って楽しそうに笑う優姫。
それを見て、翔識は少し落ちてきた前髪を手で後ろに撫で付ける。
「…………行けばいいんだろう」
「ホントッ!?じゃあお菓子とか出さないとね!」
「おい待て、本見に行くだけで菓子を出す必要はねぇだろ」
翔識はそう言ったが、優姫本人は嬉しいらしく全然話を聞いていなかった。
それに溜息を吐きそうになり、鞄を持ち直す翔識。
暫く歩くと、帰路は道路沿いに出る。
「翔何食べる?チョコでも出そっか?」
「オメー……俺の話を聞きやがれ」
「エヘヘッ、やーだよっ」
信号が青になり、軽い足取りで横断歩道を渡り出す優姫。
刹那、角向こうからスピードを緩めず一直線に優姫のいる方へと走ってくるトラックが見えた。
それを見て、目を見開き翔識も横断歩道へと走る。
「優姫!!!」
「え?」
画面が赤くなり、音が鳴り響き出す。
それを見て、ユーグレナは慌てて操作し出すが、音は止まず遂には発光して電源が落ちた。
「ちょっ……待ってーーー!?二人は、二人は無理だよぅぅ!!」
「実験、失敗ですね」
頭を抱えたユーグレナの視線の先で、二つの反応が消えた。
木々が揺れ、栽培している花が風に揺らめいている。
ふとーーーすぐ近くで強い魔力の反応を感じて足を止めた。
「…………あらあら」
魔力の感じた方を見て、笑う。
見たことのない黒い服を着た青年が、少女を抱き抱えて圃場内に咲いている花畑の中で倒れていた。
「これは……面白いのが見れたわねぇ」
昼食や本の入った籠を持ちながら、アンリは愉しげに呟いた。




