夜の月見にはおつまみと酒が必要不可欠
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3日を過ぎたら自由がなくなる、そんな音国です
新品種登録協議会は、小難しい話で最後は幕を閉じられた。
辺りは花の香りが漂い、建物や軒下に連なっているランタンに灯りが灯される。
怒濤の一日は、やっと終わりを迎えたのだ。
「セストとアストの生存確認祝いと、アンリの慰め会を兼ねて……」
夜になっても賑やかさを失わない街の一角にある酒場。
ナルは発泡酒を片手に持ちそれを上に掲げ、宣言した。
「かんぱーーいっっ!」
「ナル君、その足削ぎ落とすわよ」
ナルの背中を棍でつつき、セリアから注いでもらった果実酒を飲む。
何故か知らないが宴会が始まっていて、未成年であるランやサラ、コウキは先程駄賃を六から貰っていたので、他の店に食べに行ったようで姿が見えない。
ナル達もある程度の事情は聞いたらしく、ジークリドが混じっているというのに疑問にすら思っていないようだ…というか、何故いるのだろうか。
「おいセリア、もっと飲め」
「いえ、私がアンリ様より飲むわけには……あの話を聞いて下さい」
「私の酒が飲めんのか!飲めと言ったら飲め」
ー……あぁ、セッカ酒弱かったわねぇ。
既に酒が回ったらしいセッカに絡まれているセリアに、ほんの少し同情した。
エルフはアルコール類に耐性があまりないらしい。セッカは酒を飲むと絡んでくる迷惑なタイプだが、もっと飲ませれば寝てくれるので安心だ。
そこでふと外を見ると、店前で樽を椅子代わりにして一人、静かに酒を飲んでいる神月の姿が目に入った。
「一人寂しい月見酒…こっちに来ないの?」
窓枠から少しだけ身を乗り出し神月を見る。
アンリの方にちらりと視線を向け、酒を呷いだ。
「…俺が、中の空気に着いていけると思っての言葉か?」
「私がそんな事思うとでも?」
後ろを見ると、セリアはミライと共にセッカに絡まれていた。離れても問題ないだろう。
近くに軽く摘めそうな料理があったのでそれを手に取り、外に出る。
「お隣、宜しくて?」
「……好きにしろ」
神月の言葉に軽く笑い、アンリも外に置いてある樽の上に座った。
月が綺麗な、雲一つない夜空が浮かび上がっていた。
「今日はもうくたくた……明日十分寝て、クリスタに帰るわ」
「そうか」
「……あのねぇかーくん、私が帰るって事は?」
……何が言いたい。といった感じの視線を向けてくる神月。
その視線に、呆れるしかなかった。
「ランも帰るのよ?」
「帰る場所は同じだろう」
「………せっかくのお祭りよ?何か買ってあげるとかすればいいじゃない」
一向に気づかないようなので仕方なく答えを教えると、眉をひそめる神月。
何というか、何故自分の周りには恋愛感覚が粉々に破壊され尽くされた人間ばかり居るのだろうか……アストリッドは置いておいて、だ。
そんな風に反応されると、こちらが何かを言っても無駄なような気がしてくる。
ー……まぁ、無理な話かしらねぇ‥…。
「……ハァ、もういいわ……お酒が不味くなっちゃうけれど、貴方に話しておかなきゃいけないことがあるのよ」
「……?」
「キャットウォークマンについて、捕まってるときに聞いたのよ‥……殺した犯人を」
そう言い、横目で神月を見るアンリ。
常に平然としているその目に、様々な感情が込められているのが垣間見えた。
それを見て残りの酒を飲み干し、空いている樽の上に置く。
「奴等の仲間でケッちゃんって呼ばれてたわ。傀儡術を使う[妖術士]よ」
「傀儡術だと……まさか」
「そのまさかだと思うわ。確証はないけれど……キャットウォークマンは操られていた。恐らく傀儡術を伝授したのもそのケッちゃんよ」
ずっと疑問に思っていたが、あの時のユーグレナの言葉で理解できた。
ここ数年、キャットウォークマンは魔力の高いものや価値が高いものを盗んでいた。何故か……あくまで考察だが、奴等の研究材料や資金集めの道具の一つとされていたのだろう。
だが、流石にそこまで言うと暴れ出しそうなので言わないでおく…ジークリドには言うが。
「…そうか、[妖術士]か」
「…ねぇかーくん、貴方」
キャットウォークマンの事が好きだったのか。なんて言えなかった。
もうあの猫耳女はこの世に存在していないし、ここで言えば神月がどんな行動を起こすかも想像できない。
言ってはならないと思った、神月が神月であるために。
ー………大変そうねぇ、この先。
ー……ロータス共和国、だったかしら
キャットウォークマンの故郷の国名を頭の中で呟く。
こうなってしまえば、彼らは何をしでかすか分からない……情報を集めなければいけないようだ。
「‥……‥アンリ」
「ん?」
「情報提供、感謝する」
神月の目は、いつもの少し冷めた目に戻っていた。
否……意志がひしひしと感じられた。
それを見て、アンリは微笑する。
「情報提供料として3万ギル頂戴」
「今手持ちが5000ギルしかない、諦めろ」




