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高級な物は物置に絶対行く

お祭り更新二回目

私の中だと貴族のおじさんは短気なイメージです

高級感溢れる置物、歩く度に沈む赤いカーペット。

柱は窓から差し込む光を浴びて白く輝いているように錯覚するほど磨かれていて、毎日掃除してるのかとつい思ってしまう。

そんな一室の、これまた高級感溢れるソファに腰を落ち着かせている庶民二人。


「姉さん、セリアさんのお父さんに会ったことあるの?」

「ある訳ないじゃない。父さんなら面識はあったと思うけれど……私、あのおっさん嫌いなの」


ピシィッ!…丁度、二人のために紅茶を入れてくれていたメイドの持っていたポットにひびが入った。

ランがメイドを見ると青ざめていた。


「城に籠もってばかり……仕事人間よ。どちらかと言えば奥様の方が好きかしら、腹黒くて好きなの」

「それ好感度を上げる要素に入るの?」


と……部屋の扉が開かれ、二人の体が自然と固まった。

入ってきたのは、赤みがかった少し長い茶髪を後ろで縛った、歳を感じさせない男性だった。

アンリとランを見て少し目を開くが、すぐに口元に笑みを作る。


「久しいなヴェストルド嬢。行方を眩ませたときはどうしたものかと考えだぞ」

「あら、わざわざ心配して下さって……光栄ですわ」

ーですわ!?


変な口調のアンリにツッコミたくなったが、押し留めるラン。

色々と聞きたいことが多すぎてそれ所ではないし、何より黙れと言われたのだ……流れに身を任せるしかないと判断した。


「少し彼女たちと話がしたい、下がれ」

「‥…畏まりました」


共に入ってきていた執事はアンリとランを一別し、頭を下げてメイドと共に部屋から出ていく。

残ったのは三人だけとなった。


「其方はヴェストルド嬢の妹か」

「えぇ、ランと言います‥…ほら固まってないで」

「え……あっ、ラン・ヴェストルドと申します。姉がセリアさんに御世話になっていたようで‥…」

「別に良い、楽にしてくれ。正式な場ではないのだ……ヴェストルド嬢もな」

「‥…ふふ、なら話が早いわゼルセス様」


ゼルセスに言われ、口調を元に戻すアンリ。


「私が何故、この屋敷に来たのか‥…分かっているのでしょう?」

「‥…セリアの件については本人に代わり謝罪しよう。だが君は私にその様なことをさせるために来たのではないだろう」

「えぇ勿論。聞くけれど…セリちゃんをどうするつもりなのかしら?」


アンリのその言葉に、部屋に緊張が走る。

自分を直視してくるアンリを見て、ゼルセスは紅茶を一口飲む。

そして言い放ったーーー呆れたように。


「君がそれを知ってどうする?ヴェストルド嬢……これでも私は忙しいのだよ。後数分でここを出なくてはならないのだ」

「なら数分で話をつけましょうか。知る権利ならあるわ、私は被害者でセリちゃんの友人だもの。これは知る理由にならないかしら?」

「‥…何が言いたい」


ゼルセスの言葉を探るような言い回しを聞いて、笑う。


「単刀直入に言わせてもらうわ。セリちゃんの処分は私に任せなさい」


アンリの言葉にランは目を見開き、ゼルセスは逆に目を細めた。

そんな二人の様子を見て、笑みを深めるアンリ。


「‥…何を言い出すかと思えばヴェストルド嬢、随分可笑しいことを言うじゃあないか……」


クツクツと笑みを殺すように笑いーーー

手に持っていたカップを、握り砕いた。

紅茶が下のカーペットに染みを作っていくのを、冷静な目で見つめるアンリ。


「笑えんな」

「あら、私から見れば楽しそうに笑っていたけれど?」

「貴様……何のつもりで今の言葉を発した……!」


怒りで手が震えているゼルセスを見て、内心アンリは息を吐いた。

この男は自分の事にしか興味がない。だから嫌いなのだ……同族嫌悪とも言うのかもしれないが、少なくとも自分なら今の発言でカップは破壊しない。


ーこういうプライドの塊は、へし折りたくなるのよねぇ…

「変なところがあったかしら?被害者が加害者に対して何かしらの要求をするのは当然のこと……けれど、貴方の保護下にセリちゃんがいると手出し出来ないのよねぇ……権力で押し潰されちゃうわ」

「‥…何だと」

「私がこの子を連れて首都を出たのは、そんな権力まみれの場所に居たくなかったから‥…実際、今貴方と話してるけれど……吐き気がするわ」

「貴様!!」


立ち上がったかと思えば、ゼルセスは部屋の壁に飾ってある剣を手に取った。

そして素早く鞘を抜き、先をアンリの喉元に突きつける。

それでも、アンリは笑みを崩さなかった。


「あらあら、自分のプライドが傷付けられたから遂に実力行使に動いちゃって……それでも偉い人の副官?横暴ねぇ」

「警告だ。それ以上何か発してみたまえ……その首、二度と胴体と合わさらなくなるぞ」

「それ、仮にも貴族の紳士様が言う発言かしら?」


からかうように言えば、刃先が少しアンリの喉に食い込んだ。

横でランが腰の剣に手を伸ばす気配がして、軽く後ろ手でそれを納めさせる。

この男が剣を持った時点で‥…アンリの勝利は決まったも同然なのだから。


「もう一回言ってあげましょうか………私の従者は私が裁くわ。引っ込んでなさいおっさん」

「ーーーーッ!!」


その言葉で、ゼルセスのプライドに火が付いた。

剣を握る手に力を込め、目の前の女の首を跳ねようと振りかぶりーーー剣先が消えた。

唖然として剣だった棒を見るのと、天井に刃先が突き刺さるのはほぼ同時だった。

……剣を納め、呆れたように姉を見るラン。


「言わんこっちゃない……全く姉さんったら」

「出来る妹がいて助かるわぁ……さてと」


部屋に掛けられている時計を見て、ぼうっと立った状態で固まっているゼルセスを見た。


「忙しいのでしょう?今日はもうこれで失礼するわ……今日は、ね」


紅茶を飲み干し、そして微笑んだ。


「大好きなお仕事、頑張って下さいな……最も、そんな状態で仕事が出来るのか考えるところですけど」

「えっと、失礼しました」


部屋の扉へと向かうアンリとラン。

ふと、ランは部屋を出ようとしたところで足を止め、何かを考えたかと思うと未だに固まっているゼルセスの元に戻った。


「あの、失礼ですが…剣、手入れ不足です。天井に刺さったから良かったけど、もし戦闘になったときに折れて目にでも刺さったら、死んでますよ?」


そう思うと、先程の刃先はアンリの方に飛んでいかなかった。

運が良いのか悪いのか……悩み所だ。


ー……まぁ、でも。

「序でに言いますけど……あんな態度とってると、植物園の人に馬鹿にされちゃいますよ……というか、微妙に馬鹿にされてるのではないかと」

「ラン、何してるの行くわよ」

「ハーイ。それでは私もこれで」


ゼルセスに一礼し、ランも部屋を出ていった。

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