TPOは大切に
連載二周目に突入しました
この話、何時まで続くんですかね…意外に長いです
釘を打ち付けて金鎚で叩けば、銃と床の接着部にひびが入る。
それを繰り返している《獅鋼乃爪》のメンバーを見て、神月は横にいるジークリドを見た。
「……あれは何している?」
「床ごとアジトに持って帰って魔法解除するんだよ。ここでやって一般人に何かあっちゃあ、俺ら信用がた落ちだしな」
「ふん、落ちるほど信用なぞ無いだろう」
「うぐ……」
セッカに言われ、小さく呻くジークリド。
今この場にいるのは神月とセッカ、ジークリド、目の前で作業している《獅鋼乃爪》の数名だ。
セストはチェリナによってナル達の所へ連行され、アストリッドはアジトに戻り弾丸をやっと摘出している所だろう。
そしてアンリはランを連れ、何処かへ向かった。
「にしても……妙だな。あいつ等が今日でこんなに動くなんて…ここ数十年、一度も無かったぞ」
「数十年……一度も?」
セッカがにジークリドの言葉に反応する。
「あぁ。あいつ等は基本、表立つ行動はしない……あくまで静かに、着々と国を内部から壊していく……穏便かつ隠密に、って感じだ」
「‥…はっ、あれが穏便かつ隠密か?私にはそう見えないがな」
鼻で笑い、セッカは顎で銃を示す。
それを見て頭をかき、不思議そうにジークリドは言った。
「だから妙なんだよ……神月、何か知らないか?」
「‥………何か聞かされたとでも思うか?」
「あ……あースマン、思わん‥……つーか、アンリとランは何処に行ったんだ?敵がまだ近くにいるかもしれねぇっつーのに」
「私が知るか」
クリスタの赤い屋根の建物なんか比べ物にならないくらい高級そうな住宅街。
庭も整えられ、道は雑草の一本も生えていない。
そんな住宅街を歩く、ギルド員二人。
「ね、姉さん……なんか、やけに綺麗な家ばっか建ってるところに来ちゃったけど…?」
「そりゃそうよ。ここ、上流階級の人間が住む所だもの」
「‥…貴族とか?」
「ここら辺は男爵とか騎士の家が多いわねぇ。もっと向こうは城にも近いし伯爵家とかがあるわ」
アンリがそう言えばランは少し顔を青ざめ、慌てたようにコートの埃を手で払い始める。
それを見て少し吹き出しつつ、アンリは言った。
「大丈夫よ。この時期はみーんな田舎の別荘に行ってるもの、誰も見やしないわよ」
「え、祭りの開催時期なのに?」
「いつの時代も、貴族が興味あるのは金と権力だけよ」
そう言って再び歩き出すアンリを見て、ランもその後に着いていく。
確かに人気は少ない‥…残っているのは従者や馬番の人なのだろう。
そこでふと、ランに疑問が浮かんだ。
「じゃあ姉さん、今から誰に会いに行くの?誰かに会いに行くから着いてこいとしか言われてないし‥…」
「ふふっ、着いてからのお楽しみ」
「‥…?」
少し楽しげな姉の様子に首を傾げる。
そのまま暫く歩き、同じような屋敷の風景にランが少し飽き始めた所で、アンリの足が止まった。
「ここよ」
「‥…」
唖然、ランはその屋敷を見上げてその場で固まった。
白く汚れのない壁、整えられて恐らく精密な計算の元植えられたであろう木や花達。鉄格子の前には門兵もいる。
どの屋敷よりも清潔さと規律性と、威圧感を感じる屋敷だった。
「ね、姉さんこの屋敷…って、ちょっと!?」
つかつかと門兵の方まで歩いていく姉に驚きを隠せず、それでも一人では危険なのでランも慌てて駆け寄る。
威圧感を放つ門兵を見て笑い、アンリは言った。
「ここの主人にお目通り願いたいのだけれど……ご在宅中かしら?」
「‥…主は今外出中です。失礼ですがお約束はされているでしょうか」
「いいえ?」
そう言えば、怪訝そうにアンリを見る門兵二人。
それもそうだろう、見知らぬ女が館の主人に会わせろと言っているのだ。不審者として斬り捨てたとしても問題にならない。
それを表情を通じて解ったのか、ギルドカードを出し、門兵に見せながらアンリは言った。
「そうねぇ……じゃあ、アンリ・ヴェストルドが来た。と伝えてくれるかしら…《念話》でも何でも使える手段を使ってね今すぐに」
アンリの名前を聞いた瞬間ーーー門兵二人の顔が一気に青ざめた。
そして何かを小声で話したかと思うと片方が屋敷へと走っていく。
「あら、居るんじゃない……嘘吐きねぇ門兵さんは」
「し、失礼しました……」
「‥…姉さん、もう一回聞くよ。誰に会いに来たの?」
後ろで目を細めながら言うランに、アンリは微笑しながらギルドカードをしまう。
「ゼルセス・デュトロン……セリちゃんのお父様で、城で‥…多分偉い人の副官してる人よ」
「姉さん説明アバウトすぎる……え、と言うことは」
少し何かを考えたかと思うと、その場から数歩下がるラン。
先程より遠い位置から屋敷を眺め、アンリを見た。
「セリアさんの家!?何で姉さん知ってるの!?」
「何回か遊びに来たことあるのよ。セリちゃんが居ない時を見計らってセリちゃんの部屋に入って、悪戯仕掛けて、次の日にセリちゃんの反応を‥…」
「コラ!!それ犯罪だから後で謝っておこうね!!」
とーーー先程屋敷に行った門兵が戻ってきた。
「…どうぞ、ゼルセス様がお待ちです」
その言葉を聞き、アンリはランを見た。
「良いラン、これはセリちゃんの人生がかかってるわ。貴方は黙って、私に運気が向くように祈ってて」
ー……姉さん。
ー志は認めるけど、元から運無いのに向くように祈っても…
プラスマイナスで0になるのではないかと思ったが、珍しく真剣な表情のアンリにそう言えなかった。
ひとまず、姉が一言余分なことを言わないことを願っておく事にした。
今日から木曜日まで、午前と午後二回更新頑張ります
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