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作戦会議はコンマ単位で

この前軍手が道端に落ちてると思って自転車で通り過ぎようとしたらそれは牛蛙でした

ランの言葉を受けつつ、アンリは銃に付けられたタイマーを見る。

タイマーの残り時間はおよそ10分。10分もあれば簡単な料理が三品ほど作れるが今そんな喩えを口に出せば、容赦なくランからチョップを喰らうだろう。

魔法陣を削ろうとすればその時点で魔法が発動し、銃弾が放たれると予測できる。


「つーかよ、この銃どこに向かって撃つようになってんの?」

「あら、私が来るまで何してたの貴方達?」

「見つけたのが俺達なんだよ……」


その言葉に、納得してしまった。

三人のジョブは、言っては悪いが銃や魔法には余り接点がない。

ランはアンリで幾らか馴れてはいるものの魔法陣には全く詳しくないし、神月かつきはそもそも魔法自体が使えない。

セストは……論外。


「セストから連絡を貰って俺達は少し前に来たんだ……と言うかアンリ、お前どこに落ちたんだ?」

「見てわからない?敵と戦ってたのよ。だから物凄く疲れてるのよねぇ……」


肩を回しながら言うアンリを、一同は冷静な目で見ていた。

視線で分かる、全員信じてないのだ。アンリが戦って、しかも物凄く疲れるなんて滅多にないから、信じようとも信じきれない部分があるのだろう。

これが日頃の行いからの信用の差、というものらしい。世界はなんて不条理なのだろうか……。


「……どこに?はっ!どう考えても会場だろうよ、考えて分かれハゲ」


ものの見事にセッカの言葉でアンリの言葉は無かったことにされてしまった。

セッカの言葉にギョッとするセスト。


「ハゲ!?俺まだハゲてないっつーの!!」

「そんな事はともかく、今はこの銃をなんとかしないとでしょ!?」

「ランお前……ひっでぇ……」


ランの言葉にセストはダメージを受けたようだが、確かにランの言うとおりだった。

だが、今の発言は少し違う。


「ラン、論点が違うわね……誰が代わりに犠牲になって撃たれるか。ここが重要よ」

「それこそ論点が違う!!最終手段を真っ先に提案しないで姉さん!!」

「誰かを銃口に縛り付けて、撃たれている隙に魔法陣を破壊するのが手っ取り早いと思うのよ」

「確かにスピード解決するけど!そういう発想はいけないと思う!」


ランから猛反対を受け、溜息を吐く。

それくらいしなければ、このままでは銃弾が発射されて会場にいる誰かが確実に撃たれてしまう。

コロナは《追尾ホーミング》が使えた。もしこれを設置したのが彼ならば容易に目標の脳髄に当てることが出来る筈だ。


ー……ん?

ー……代わりに犠牲……。


ふと、先程の自分の発言を思い返して……ハッ、とした。

そして自分を差し置いといて討論している一同を見る。


「皆、良い方法を思いついたわ……標的を変えればいいのよ」

「標的を……って、そんな事したら確実に姉さん撃たれるでしょ!?」

「要するにお偉い様を撃たせなければ、この場は私達の勝ち……なら、銃を設置している場所を変えればいい」


アンリの言葉に、一同の頭に疑問系が浮かんで……各々理解したような表情に変わっていった。

つまり、転移魔法で魔法陣ごと銃を別の場所へ転移させればいいのだ。遠ければ遠いほど《追尾ホーミング》は弱くなる、近くで穫れた野菜は新鮮だが遠くにいくほど新鮮度が下がるのと同じだ。

だが、アンリの提案については一つだけ問題があった。


「転移魔法、今すぐに使える奴いなくね?」


セストの言葉に、空気が重くなる。

妙案な名案なのだが、今この場に転移魔法を使える者は誰一人としていなかった。

今からメルリーンのギルドに駆け込んでも信じてもらえる訳ないだろうし、そもそも魔力の高い人間がそこら中にいるわけでもない。

そう思考していたらーーーセッカの眼鏡が光った、気がした。


「否、一人だけ事情を大体把握してかつ、転移魔法が使える馬鹿が一人だけいるぞ」

「えっ、誰かいたっけ……?」

「チェリナ」


……一同の脳内に、脳内花畑の年齢不明の魔法使いが現れた。


「チェリナ!?そういえばチェリナがいた!今姉さんの代わりで会場にいるけど!」

「けどよ、ここから意外に距離あるぜ。あいつ、確か浮遊魔法も使えるけどよ、呼びに行くのに時間がかかるじゃねーか」

「ギルドの皆に呼んで貰えばいいのよ……そうね。会場に確実にいるような物好きが……あ、いたわ」


少し考え、ある人物が即座にアンリの脳裏に浮かび上がった。


「芋づる式にホイホイ出てくるな…………それで今度は?」

「シスコンの方のおっさん。だって私と賭けてたんだもの、会場にいなくちゃおかしい人よ」


アストリッドへ笑いながら答える。

アンリの言葉を受けてランは首を傾げて……徐々に目を見開き、頭を抱えた。

姉が国境沿いで言っていたのを思い出したのだ、アンリに変装させたランを協議会に出し、最後までバレなければアンリの勝ちでバレたら六の負けという、本人に無断で行おうとしていた賭けの事を。


「なんだろ……凄く、やるせない」

「イヤねぇ、これくらいの事でへこたれてるの?今後が心配だわ」

「今後なんてあり得ないから、そんな機会作らせもしないから!」

「…なら、あいつにはどうやって知らせる」


神月かつきの言葉に、アンリは口元を歪めた。


「どう考えても《念話テレパシー》しか方法はないわ。はいこの中で《念話テレパシー》が使える人挙手!」

「……………チィッ」

 

渋々、本当に嫌そうに舌打ちをしてセッカが手を挙げた。

確かにセッカは六との付き合いが今この場にいるメンバーの中では一番長い、的確かつ簡潔に事情を話してくれるだろう。

一同の期待の視線を受ける中、セッカは指を頭に当て集中し始める。


「………繋がった」

「おぉ、見た目じゃ全く変わってないけど繋が」

「おいシスコン老け顔バカ、三分以内にアンリの姿になってる花畑馬鹿を私達の方に飛ばせなければ貴様の商売道具を全て灰に返すぞ私は本気だ」


そして指を離すセッカ。


「的確かつ簡潔に言ったぞ」

「それ単なる脅しだろうがぁぁっ!!」

「‥……師匠、来てくれるかなぁ‥…」


危なくなったらセッカを盾にしようと、頭を抱えながらランは思った。

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