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-273℃の世界で愛を叫びたい

やっと戦闘終わりました

これで一週間更新に戻れます、というかお詫びで暫く投稿し続けます。

「……石灰に……ロープ?何よここ、家かと思ってたけど倉庫?」


棚の中に入っていた道具を見つつ、アンリはそう呟く。

何故かコロナはすぐに追ってこなかった。鬼ごっことして楽しんでいるのか未だに驚いて固まっているのか、その両方なのかもしれない。

とにかく、今はこの建物内の間取りを見つからないように調べる必要がある。


「植物園の管理の仕事をしてる人の所有物件かしら…なら、壊しても問題無いわね。どうせ一般人から巻き上げた金で修理するんでしょうから」


金は回せばいいのだ、金が回れば世間も回るとはよく言ったものだ。

それにしても、と心の中で呟き、首に触れる。

コロナから床に押し付けられた際に掴まれた首が痛むのだ、時間差で痛みが発生したことに微妙に苛つきを感じたりする。


「赤くなってるかしら…店に湿布薬のストックあったと思うけど、流石に今から行くっていう訳にはいかないわよねぇ。私頭脳派なのに……」


周囲を凍らせつつそう呟き…冷気によるものとはまた違う、悪寒がアンリの背筋を駆け巡った。

反射的に体を横にズラすと、肩を少し掠めて何かが勢い良く飛び、壁に突き刺さる。

それは鈍く光る、コロナが持っていたナイフだった。


「なっ……もう来たの!?所々の扉は凍らせてあるのに……!?」


そして背後を見て、更に目を見開く。

ーーー誰もいない。


ー……つまり、このナイフは突然現れたって事になる。

ー…けど、あんな正確に寸分のズレもなく……?

「………少し走った方がよさそうね」


そう呟き、足音をなるべく立たせないように走り出す。

そして階段を転倒しないように気を使いつつ素早く降り、下の階に向かい扉に手を掛けたーーー瞬間。

ブォン、と音と共に目の前に赤く光る魔法陣が現れた。


ーっつ!!


ナイフの先が魔法陣の中から見えたと認識した瞬間に、アンリは手中の棍で目の前の扉を突いた。

棍が当たった反動で体は後ろに倒れ、発射されたナイフはアンリの目の上ギリギリを通り、髪の毛数本を巻き添えにして反対側の壁に突き刺さる。

神回避を行った本人は、頭と足を抱えて床に倒れている。


「~~~ッ痛いわね!今はランが居ないから死にやすいのに何してくれんのよ!」


今行っているのは殺し合いに分類されるものだが、それを軽く無視した発言をしつつアンリは立ち上がる。

そして先程の魔法陣について思考した。


ーあの子、魔法使えたのね。

ー……正確にナイフを転移させる、つまり。


アンリ自身に、位置情報を伝える何かを細工したとしか考えられなかった。

そのタイミングとしては、屋上での《天光アスティオン》発動時になる。

その直前に何をしていたか、まぁ当然ながら戦っていた。


ー……まさか。


近くの窓に写る自分を見て、目を見開いた。

自身の首筋に変な模様が浮かび上がっていて、赤黒く発光していた。

それは、今自分も使っている魔法。


「《追尾ホーミング》……成程、飛んでくる訳だわ。解除出来るかしら」


首筋の魔法陣に手を伸ばして……激痛が走り反射で手を引っ込める。

魔法陣から解除させないようにか、茨に付いているような棘が出てきてそれが手を貫通したのだ。

手から血が滴り落ちる光景を見て、つい舌打ちする。


「………まぁいいか、多分静脈だし……サラちゃんに治してもらいましょ」


ひとまずそう結論づけて今度こそ先程の扉を開く。

中はまた倉庫のようで、アンリも使っている農薬や肥料が多く保管されていた。


ー……高い農薬使ってるのね。

「あらやだ、何で倉庫にマーガリンなんてあるのよ。汚いわね……ここの持ち主吹っ飛ばしたいわ。どうせ嫁もいないわよここの持ち主」


酷いことを言いつつも棚の中を漁り、手を止めた。

そして、あるボトルが目についた。


「…………これ」

「なんだ、もう終わりかよ?」

「…………そうねぇ、お互い飽きちゃったでしょう?」


ゆっくりと後ろを振り見る。

手に溢れんばかりのナイフを持ったコロナが、不敵な笑みを浮かべながら入口の前に立っていた。


「なぁ龍の奴、後時間はどれくらいよ?残り五分をきったと俺は考える。それマイナスで冷気を張り巡らしてたから……三分くらいか?」

「………そうね、概ね正解よ」


コロナの答えに頷いて、再び冷気を放出させる。

部屋が床から段々と凍っていくのを見て、コロナは更に深く笑みを作る。


「オイオイオイ、龍の奴俺を凍死させる気か?人間は体温が20℃を下回ると確実に死ぬっつーけど、こんなの20℃以下まで下がんねーだろ?つか下げたら龍の奴も死ぬし」

「そうね、そうやって油断させるために凍らせてるのよ」

「………よく言う」


コロナの言葉にアンリも笑みを浮かべる。

そして………体の後ろで手に持っていたボトルをコロナに投げた。

それをナイフを一閃し一刀両断して…つかさず突いてきた棍を体を横にして避ける。

頬に赤い切れ目が入ったと認識したと同時に、血が凍っていくのを感じ口元を歪ませつつナイフをアンリめがけて振り下ろす。

それを弾いて後退し、ナイフが床に落ちたと同時に魔法陣が中に消えたのを見た。


「ほら龍の奴、どこから来ると思うよ?」

「……私は的じゃないのだけれど」


そう呟いたアンリの右斜め後ろの棚から魔法陣が出現する。

殺気を感じてしゃがむと同時にナイフが頭上を掠め、先程まで見ていた薬品棚にナイフが突き刺さり、ガラスが飛び散る。

そのままコロナが追撃してきたので横に飛び避け、避けた場所にあった机の面を掴み前に出すと同時、数本のナイフが机に突き刺さった。

正直に言おう、自分で下の階に来たもののはっきり言って、屋上の方が良かった。


ー……今更、か。

ーこうなれば死ぬ覚悟でやらないと。


コロナが机を飛び越えてアンリの上からナイフを投げてきたのでそれを避け、氷を再び張り巡らせる。

それを見て、コロナは目を細めた。


「………龍の奴、何故そこまで氷にこだわる?」

「言ったでしょう?油断させるためにって」

「けっ!!よく言うぜ……この野郎」


そして三本ナイフを投擲した。

それを弾かず、何故か体を横にしてアンリは避けて………氷に突き刺さり、氷が割れた。

それを見て目を開くコロナ。


「不思議?硬い氷がたかがナイフに傷付けられて割れたなんて、けど理論上出来るのよ。傷を入れた氷の傷の部分に水を入れてまた凍らせれば、その氷はすぐに砕けるようになるの」

「……ふーん、意外に物知りだな龍の奴」

「意外には余計よ。そんな事より今、貴方の負けが確定したわ」


コロナが疑問系を浮かべている間にドアノブに手を掛けるアンリ。

それにはっとしたのかコロナが素早くナイフを投擲するが、先にアンリが部屋の外に脱出して扉を閉めたのでナイフは扉の板に刺さった。


「俺の負け?ハッ、逃げた方の負けに決まってんだろ龍の奴!アンタは屋上で俺から逃げたとき、もうその時点で負けてんだよ!」

「貴方の勝ち負けは殺す殺さないかでしょう?私の勝ち負けは如何にして相手に殺されないように勝つか、なのよ。自慢のナイフでも研いでから出直しなさい」

「………てめぇ」


挑発的かつ、勝ちを確信したようなアンリの言い方に、眉間に血管が浮いたような感覚を持った。

逃げず扉の前に居るらしい。もうナイフを使う気もなくなった。

そもそもコロナがナイフを好んで使うのは斬るときの感覚が好きだからで、別に銃を持っていないとかそんな理由ではない。

なので彼は只単純に、殺そうーーーそう思ってベストの下に隠していたホルダーから拳銃を取り出した。


「聞くけれど、この世界で一番怖いものってなんだか分かる?」

「……………」

「それはね、無知よ。何かを知らなくては人に騙されるし何かに気付かなければそのまま人生は終わってしまう。そうね……貴方の敗因を言うとすれば…」


無表情で拳銃の安全装置を外してーーー


「とっても美人な薬剤師を敵に回した事かしら?」

「………あ?」


引き金を引いた瞬間、視界が輝いたと認識したと同時に爆風がコロナを包み込んだ。

盛大に音を立てて破壊される部屋を階段の下から見て、飛んできた瓦礫は避けたり棍で弾く。

それを見て、小さく呟いた。


「怖いわねぇ爆発って、今度試しにランで試してみようかしら」






黒煙も収まってきたので、棍の冷気を解除して部屋に戻る。


「…………あら良かった。生きてたのね」


そう言って笑う先には、皮膚が爛れ床に倒れているコロナの姿だった。

良くて全身火傷、悪ければ体の一部が動かなくなっているだろうか。


「まず、手順を追って説明してあげるわね。あの時砕けた氷の中には可燃性のガスを閉じこめておいたの、貴方がここで始めに切ったボトルに入ってた物ね」

「…………て…………め………」

「他の階を凍らせていたのは不自然に思わせないため、一応足止めも兼ねてたけれど」


喉が焼けているのか、掠れ声のコロナだが今は無視する。


「後は貴方の部屋の奥に追いやって氷を砕けば、密室でのガス充満でドーン!……という事よ。子供でも思いつく作戦ね」

「お………れが、じゅ………を…持ってる……て……!」

「だって貴方、アス君の腕射撃してたじゃない。あの時持ってて今は持ってないっておかしいでしょう?持ってなくても私が炎放てば平気だったし」


そこまで聞いてーーーコロナは、笑った。


「この…………クソ、やろ………」

「ーーーー褒め言葉をどうもありがとう」


アンリも不敵に、笑い返した。

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