これぞ、驚きの潜在能力
「懐かしいなぁ、僕のこと警戒してくれる女の子、皆僕のこと色目使って見てくるから、少し刺激的だよ」
「ギルドマスターは、あーいった変人がなれる」
「酷いじゃないか、昔馴染みをそう紹介するかい?」
六の言葉に、イヴァルは振り返らずにそう言い返した。
イヴァルとシェルを先頭に、ギルドへと向かうアンリ達、馬と馬車は門近くの馬小屋に預けてきた。
「にしても六、一段と老けたね、どれ位に見られるようになったんだい?」
「その綺麗な顔を八つ裂きにされたいのかお前」
「イヤだな、こんなの何時もの事じゃないか」
……正直言って、アンリはイヴァルが同類な気がした。
同じ穴の狢だから分かることなのか、それとも只単に勘なのか、それについては後で考えることにした。
ふと、イヴァルが足を止めた。
「ここがクリスタのギルドだよ」
「……………………」
白い壁に、赤い煉瓦の建物がギルドの看板を背負って建っていた。
正直言って、ここまで乙女チックな見た目とは思わなかった。
「女の子みたいだから改装したいんだけどね」
「私も是非それを薦めるわ」
「安心しろ、中は普通ってか、木造だから、前のギルドマスターが女だったんだよ」
「入るのです!さっさと入るのです!」
シェルに言われ、中に入ったアンリ。
そのアンリの前を…………小さな人形が荷物を抱えて通った。
「!?」
「ようこそ、僕のギルドに」
溜まり場とは言えないが、人が多く賑やかな雰囲気だった。が、それよりも目にはいるのが、人形の姿だ。
顔に目も口もない木製の人形から、ブリキで出来た人形、仕舞いには等身大のマネキンが、働いていた。
「…夢でも見てるのかしら、中も乙女チックなのだけれど」
「駄目じゃないか六、中は普通なんて嘘教えたら」
「これやったのお前だろ……あのな、コイツの職は[人形師]なんだ」
「[人形師]?」
首を傾げたアンリに六はわざわざ説明してくれた。
[人形師]とは、名の通り人形を魔力を込めて作ることで、意のままに操れるという珍しい職だ。
イヴァルの場合、人と接するのが面倒臭くなり、前のギルドマスターが雇っていた職員を全て辞めさせて人形に代えたらしい。
「皆僕の命令には従順だからなぁ、人間は嘘吐くし」
「そう言うお前も人間だって事を忘れるなよ」
「あ、シェルも僕の人形だよ、渾身の一作なんだ、自慢話は後でするから先に登録しよう、二階においで、六はどうする?」
「こいつの職が気になるから行く」
イヴァルの案内で、木製の階段を上り二階に移動する。
椅子があったので座ると、シェルが何かを盆の上に乗せて運んできた。
イヴァルがそれを受け取り、アンリと向かい合わせになるように座る。
「この紙に名前と出身、今の年齢と能力を書いてくれ」
「え、おっさんの話じゃ職を得たときに貰えるって聞いたけれど」
「あぁ、それは職能力の事だよ、僕が言ったのは個人が生まれたときから持っている潜在能力の事だ」
能力は大きく二つに分かれる。
職を得たときに自動的に獲得する職能力
そして生まれたときに個人で持つ潜在能力、所謂才能だ
「例えば六の《検索》は潜在能力に分類される」
「ふぅん………でも私、知らないわよ?」
「マスター!持ってましたですのー!」
アンリがそう言ったとき、シェルが何かを抱えて戻ってきた。
シェルの手にあったのは、手の平サイズの水晶玉だった。
「君みたいな子が多いから、潜在能力を調べる道具がちゃんとあるんだ、感謝してね造った人に」
「顔を見たことない人に感謝するのは後にするから使い方を教えて下さいな」
「………やっぱ、この二人会わせたらいけなかったな」
六がそう呟くが、二人は見事にスルーした。
「水晶に魔力を送ればいい、潜在能力が浮かび上がってくるから」
「潜在能力は人によって数が違うですの!多い人は五つもありますの!」
「因みに僕は四つだよ」
「魔力を送ればいいのね」
イヴァルの言葉もスルーして、アンリは水晶玉を手に持った。
魔力を送るイメージで水晶玉に流し込むと、段々と文字が浮かんできた。
「……へぇ、アンリちゃんは二つも持ってる………ん?」
「お?何か面白い能力だった……か………これは……酷いな」
水晶玉に浮き出た文字を見て、三人は同時に固まった。
《植物学者》
それは問題なかった、問題は次だ。
《幸福狩り》
そろそろ合宿シーズンですね