首都って意外に狭い
皆々様、あけましておめでとうございます
今年1年が良い年になるよう、頑張っていけたら良いですね
太陽が真上に来る頃、首都の門壁が段々と近付いてくるのが見えた。
それを何となく確認して、アンリは体を起こす。
「15年ぶりねぇ、オルディア国首都がメルリーン」
「あそこが……そう言えば、依頼とかで首都に行ったことないかも」
「そりゃそうよ、私が行かせないように細工してたんだから」
さらりと言い放たれた言葉に、驚愕した顔でランは思い切りアンリを見た。
そのアンリは、六の肩に手を掛けて越しにメルリーンを見つめている。
「だって移住した目的が、首都で面倒事に巻き込まれないためだもの」
「……私が、姉さんから父さんと母さんの事聞いたことないのって」
「あえて言わなかったに決まってるじゃない。言ったところで何か旅が始まるわけでもなし、無意味なことはしたくないのよ」
「お前、その言葉いつもの自分に言ってみろ」
「挽き潰すわよ」
「何をだよ!?」
少しすれば、目の前には盛大に飾られた門と、その奥の街並みが目に映ってきた。
六が入門手続きをしている間、ランがキョロキョロと周りを見渡しているのを見て、小さくアンリは吹き出した。
「やぁねぇ、田舎ッ子の反応じゃない。ほらギルドカード出しなさい、入れないわよ」
「うえっ、あっすみません!」
慌てて門兵にギルドカードを見せる。
ギルドカードは身分証明書の役割も果たしているのだが……2人のギルドカードを見た門兵の1人の目が、見る見るうちに開いていった。
「?あの、どうかしましたか?」
「君達は、この首都出身なのかい?」
「私はクリスタで育って……姉さんは10歳まで暮らしてたみたいですけど……ねぇ姉さん?」
「えぇ、否定しないわ」
「……君は、まさか隊長の……!」
その門兵の言葉に、間を置いてニコリと笑う。
「どなたかと間違えてるんじゃないかしら?さっおっさん、馬車出して」
「自由人だなお前は……」
ギルドカードを受け取り、馬車はメルリーンの中心部へと向かって行く。
石畳で綺麗に舗装された道の両端にレンガ屋根の店が並んでいて、少しクリスタに似た雰囲気が感じられる。
その奥は居住地区のようで、点々とランタンが軒に吊されているのが見えた。
そして正面からは、白亜の城が日光に照らされ、輝くように街を見下ろしていた。
「ここまで来たのだから…元自宅がどうなっているのか見ましょうか。おっさんそこ右折」
「自分達で行け」
「ケチねぇ……ラン、ここで降りましょ」
「え!?あ、分かった!」
荷物を持って馬車の荷台から降り、ランは六を見る。
「師匠、ここまでありがとうございました!」
「おー、気ぃ付けろよ!田舎者は食い物にされるぞ!」
「食い物って……私達食べれませんけど……」
「否そう言う意味じゃねぇし……ほら姉貴が先行ってんぞ」
六の言葉にはっとしてランは後ろを振り返る。
本当に姉が先に歩いていて、六へ律儀に礼をして慌ててランはアンリの横へ。
裏通りを行くのかと思いきや、六が向かう方向とは反対の方向に向かっているのに疑問を持ち、アンリを見るラン。
「姉さん、居住地区にあるんじゃないの?」
「ウチは別物だったのよ。何せお偉い様の家よ?表にあるに決まってるじゃない」
「そ、そうなの?」
ランが首を傾げるのを見て笑い、ふと足を止める。
二人の目の前には、二階建ての薄い煉瓦の屋根の白い壁の家。
表札は、何も掛けられていない。
「ここよ。母さんの職場兼自宅」
「こっ……クリスタのギルド並に大きくない!?」
「メルリーンのギルドはこれの四倍の面積よ?後で見に行く?」
ランが首を振るのを見て、古ぼけたドアノブを掴んで回す。
中は埃臭くて、蜘蛛の巣が張っていた。入って10分もすれば肺が汚れてしまうのではないかと言うほど汚れが溜まっている。
扉近くのチェストの表面を指でなぞり、埃を確認して溜息を吐く。
「誰も来てないのね、少しガッカリ」
「…………何か、初めて来た気がしない」
「それもそうよ。生後何週間かはあなた、ここで暮らしてたもの」
「ふーん……家具が一杯あるんだね。ガラス棚とか……」
「そこは薬草とか入れてたのよ。母さんどこに締まったかすぐ忘れる人で、透明な方が分かりやすかったらしいわよ」
「へぇ………ん?ねぇ、姉さん今、誰も来てないって言ってたよね?」
二階へと上がる階段の手前で、ランがこちらを見て聞いてくるので首を振って肯定すると、何故か眉をひそめられた。
「ここ、足跡ある」
「!……あらあら」
ランの横へ行き、床を見る。
確かに足跡が2つ、階段の方へと登っていく足跡が埃の中に混じってうっすらと残っていた。
跡がまだ残っている事から考察すると、ここ数年のものだろう。
「他の所は無いから……ここの窓からかな?」
階段のすぐ横にある小さな窓を指示すラン。
確かにそこならば、大の大人でも時間を掛ければ中へと侵入出来るだろう。実際にその窓だけには埃は余り付着していなかった。
「盗るものなんて無いのだけれど……殆どクリスタで売り払ったし。薬剤道具とかを私が引き継いで使っている程度よ」
「じゃ、この足跡は泥棒か、それ以外の目的で?」
「かも、しれないわねぇ……どっちにせよ憶測の域は越えられないわ」
そう呟いてーーー背後からドアノブを捻る音がして反射的に二人は振り返った。
1人の女騎士が、そこにいた。
肩で揃えられた波打つオレンジ色の髪が女性らしさを引き立たせていて、体つきも女性に相応しい物だ。
鈍く輝く鎧を上半身と腕の位置に着用していて、堅苦しさは感じないものの騎士のもつ潔癖さと凛々しさを感じさせるような、そんな女性だった。
胸元の鎧の部分には、十字と蔦を彷彿とさせるこの国のエンブレムが刻まれていてーーー
「アンリ様!?」
一言、少し場違いに思えるようにそう言った。
……女性の一言にランが自身を見てくるのが視線で感じ取れたが、今自分はあの知り合いらしい女性を思い出そうと脳内を回転させていて話すことは何もない。
少しすると、とある少女が脳裏に浮かんできた。
「……あぁ、もしかして……セリちゃん?」
「はい!今まで何処にいたのですか?せめて行き先を私に伝えてくれれば……!」
「貴女……変わってないわね……」
………2人のやり取りを、ランは只見つめるしかなかった。
ふと、セリちゃんと言われている女性と目が合う。
「この方は……アンリ様の妹君ですか!?」
「い、妹君!?そんな高貴な呼ばれ方初めて!!」
「ランって言うのよ~私命名。ラン、セリちゃんは………」
「待って下さい、私から名乗らせて下さい」
ランへと体をしっかりと向け、一礼。
「オルディア国騎士団第二部隊副団長セリア・デュトロンと申します。アンリ様とはーーーー主従関係にごさいます」
「………………………………………はい?」
ランの頭が暴発するのを、主らしいアンリは爆笑するのを堪えて見ていた。
作者の今年1年の目標:受験合格。




