親心子供心
「絶対反対!姉さん誘拐されたらどうするのさ!」
「どういう状況を想定して言ってるのよ」
珍しくランの言葉にアンリがツッコんだ。
あれからクリスタに戻るまで、ランが行かせまいとずっとアンリの後ろから説得し続けているのだ。
勿論、アンリは聞く耳を持ってはいない。
「そもそも何で勝手に応募したの!?」
「何かをする事に、ランの許可は一々いらないでしょう?」
「せめて話くらいしてよ!」
「だって言えば反対するでしょう?今みたいに」
「そりゃするよ!大体姉さんは一人で行動しすぎ!それで何回死にかけたのさ!」
「累計50回以上」
淡々と返してくるアンリに、遂にランは盛大に頭を抱えて溜息を吐いた。
それを二人の後ろから見ていた六が、ランの肩に手を置く。
「諦めろ。あいつ11年前から考えてたっぽいし、ああなった以上あいつは止められねぇだろ?」
「うぅ………」
「それに、俺にも得があるから困る」
………六を固まった動作で見るラン。
笑顔の六の手には、花祭り数日前の馬車の利用者が明記された一枚の紙。
見覚えのある文字で、見覚えのある名前が連なっていた。
「イヴァル以外は首都で観光するとよ。いやぁ良い仲間を持った持った、ボロ儲け」
「知らなかったの私だけ!?」
「コウキも行くのが意外だったけどな、サラとチェリナの荷物持ちだとよ」
「サラとコウキも!?」
意外な名前も出てきて、更に声を上げた。
皆どれだけ祭事が好きなのだろうか、最早これは観光ツアーに等しいのではないのか。
「…………ま、お前も行ってみればどうだ?」
頭を抱えているランを見て、六は口を開いた。
「お前のお袋さんと親父さんの墓参り、してやれよ」
「…………」
「嫌か?お前ってそういうのはしっかりしてると思ってたけど」
六の言葉に少し俯いたかと思うと、ランは顔を上げて先に行くアンリを見た。
「…………私にとっては、姉さんが母さんだから」
「………ほぉ、その心は?」
「え、いくら師匠でもそれは秘密です。仕方ないかな……姉さん待ってよ!せめて譲歩するから!」
六に笑い、先に行くアンリの元へと走っていくラン。
ふと…横を通った神月が六の目に映った。
「お前も行くのか?」
「………言う必要性があるのか?」
「否、参考序でにね」
六を見て、アンリとランを見る神月。
それから少し考えるように眉をひそめて、再び六を見た。
「……遠出も悪くない」
「がははっ、そーかそーか!お前、あの姉妹好きだな!」
「……否定したい事実だ、痛い止めろ」
バシバシと、音が出そうな位神月の肩を叩いていた六の手を、軽く払った。
† † †
場所は移ってギルド。
ここは何故か、ギルド構成員の溜まり場と化しつつある。
「そういえばミライも行くんだよね……砲弾でも落ちてくるかな」
「だとすれば、全て私の上に落ちてくるわねぇ」
「ちょ、さり気にひでぇ!!そんで想像がリアル!!」
そこにいたミライとセッカを見て、ふとランが口にしたことを対してアンリは頷いた。
確かにミライにも話したが、一緒に来るとは流石に思ってもいなかった。
ミライはいつも、依頼をこなす以外は家に閉じこもっている人間…と言うか、セッカやランが引っ張り出すのが日常の一コマである。
「えっと、引かない?否絶対引くなぁ……言わなきゃ駄目?」
「魔法弾顔にぶつけるわよ」
「死ぬからぁぁあ!!分かりました言います言わせて下さいお願いします死にたくないですまだ28年しか生きてないんです」
「私よりは生きてるよね……セッカの方が長生きだし」
「ふん、当然だろう」
鼻を鳴らすセッカとは対照的に、縮こまった動作をするミライ。
…アンリが軽く手のひらに魔法弾を出すと、それを見たミライは何故か直立不動で敬礼し、アンリを見る。
「まると白状します!!キルトさんが遊ぼて言てくれたからです!!」
「遊ぼてって……何でミライ片言なの?」
ランと神月は首を傾げたが……アンリとセッカは驚きに満ちた表情でミライを凝視した。
あの風来坊が、首都で、遊びに誘う。しかも特典は祭。
「あの人も他に良い子がいるはずなのに……趣味を疑うわ……」
「あの天然紳士と馬鹿が釣り合うはずが無いと思うがな」
「…あのー、悪口って本人がいないところでするもんだよねぇ?」
「……………?」
「イヤイヤイヤ、聞こえないフリしないでよ」
セッカとミライのやり取りも、このギルドならではになってきた気がする。
だが、ということはキルトも首都に行くのだろうか。
ー……あの二人も、居ると良いのだけれど…。
ー…………なんちゃって、ふふ。
アンリの心の声が、ランに聞こえることはなかった。




