一日八時間の休憩が必要です
「……すまない。つい、極東に居た頃を思い出した」
「ついって感じじゃないよな、感触確かめてたよな」
「…………………」
「否答えろよ」
野原に座り込み、話す4人。
途中、蒼姫がお茶を差し入れてくれたので休憩中なのだ。
因みにアンリとランは紅茶で神月と六は緑茶である。
「神月にあんな特技があったなんて……」
「ラン、あれは特技とは絶対に言わないから覚えておきなさい。あれはむしろ暴走、轡を外した馬に匹敵するわ」
「俺を馬と一緒にするな」
まぁ、とアンリは紅茶を一口含んで神月を見る。
クリスタに来てから、神月は最初会った頃よりも表情が和らいでくるようになってきた。それは喜ばしいことだろう。
だが今日、問題としてキャットウォークマンの死体の謎が浮上してきてしまった。
ー…あの場で取り乱さないのは、流石って所ね
ー…ランだったら、絶対暴れてたわ
と、視線に気付いたのか神月がアンリを見る。
「また悪巧みか?」
「えぇ勿論。私の趣味なの」
「そんな趣味私初耳なんだけど」
ランの横からのツッコミはさておき。
「今日の事についてなのだけれど、これ結局修行なの?」
「ちょ、姉さんもう少しオブラートに包んでよ!直球すぎて師匠返す言葉がないぐらいに固まってるじゃん見てよこの困り顔!」
「私からすれば、アレはシスコンの延長線上の果ての暴走行動よ」
だがランの言うとおり、彼は苦笑いを浮かべていた。
通常ならアンリはここで「このシスコン」と返すのだが、隣で妹がもの凄い睨んでくるのだ。
未だかつて無いほどに睨んでくるのだ。空気を読めと、場を察しろとアンリに念を送ってきている。
補足すると、六の位置からではアンリの方へと顔を向けるランの表情は伺えない。
アンリの目の前にある選択肢は、黙るか喋るかの2択。と言うわけだ。
「そういえばそろそろ首都で花祭りねぇー」
「姉さんその話の反らし方分かり易すぎ!」
「もうそんな時期かぁ、随分歳喰ったわねおっさん」
「師匠の話なの!?姉さんじゃなくて!?」
「ラン、自分の個性って言うのは大切にしないと駄目よ?」
「その個性を壊そうとしてくるのは誰!?」
「誰かしらん?」
もう何も言うまい。
そんな風にランが頭を抱えるのを見て、静かに笑う。
さて、ここで今出てきた花祭りについて補足説明をしよう。
この国の首都、メルリーンで10年に一度開催される祭で、癒しの象徴とされている花を愛で、讃えようという行事だ。
分かりやすく言えば、花の消費が尤も激しい自然に優しくない祭。
「確かに。蒼姫も花の出荷で大変だって言ってたぞ。それに俺もこの時期になると、花ばかり取引に出やがる……」
「儲からないものねぇ、一本単価が低いもの」
「首都って大変なんだね……此処とかは余り影響受けないから……」
「え?」
「ん?」
ランがそう言うと、聞き捨てならんとアンリが疑問系を浮かべた。
「え、いやいやいやいやいやいやいやいや。ランあなた何言ってるの」
「へ?だって祭なんてフラグ立ちまくって人が多い所なんて、姉さんが行くわけないじゃん。私も興味無いしさ」
「………アンリ、お前ランに説明したのか」
「……そう言えば言い忘れてたわ」
言い忘れるのはいつものことだ。
なのでアンリは、普通に普通のことを話すように妹へ言った。
「新品種登録協議会」
「?」
「私、それに出場するの」
……紅茶の入ったカップが、ランの指からすり抜けて地面に落ちる。
「姉さん死ぬ気なの!?」
「流石の私も聞いてからの発言がそれとは思わなかったわ」
次回、メルリーンでの花祭り編




