さり気ない本心
神月の言葉に、唖然とするラン達。
アンリは目を細めて神月を見ていた。
「………六、君は聞いたことはあるかい?」
「さてな、極東は一揆や山火事なんぞ結構やってたぞ」
「な、なんぞで片付けて良いんですか師匠……」
「…………兄がいた」
イヴァル達が話していると、神月がふと、口を開く。
いつもよりも声のトーンが低いのは、仲が悪いコウキでさえも気付いた。
「何時も味方してくれた兄が、死んだ、殺された」
「極東は少し治安が悪いからな。少しのいざこざで誰かが死ぬなんぞ珍しい事じゃない」
「き、極東って危険なんだ…………」
「…………俺に、生きる術を教えてくれた……味方だった」
今度は六も口を出さなかった。
「…………俺は」
「そんな事はどうでも良いから、キャットウォークマンの情報を教えてちょうだい」
……空気が、固まった。
先程までは沈黙が落ちて重苦しい空気だったが、今のアンリの言葉で一気にそれは崩壊した。
あり得ない、そんな顔で一同はアンリを見た。
「ばっ……お前、普通ここは聞くところだろ!?」
「語ってんだから聞いとけよ考えろ婆」
「姉さん普通ここで中断させる!?」
神月でさえも目を少し開いて驚いている。この介入と中断は誰も予想していなかったのだ。逆に予想していたら怖い。
「え……何で聞かないとなの?あんた達実はドM?悪いけど私自称隠れドSだから、そんな趣味ないわよ?」
「姉さんの性癖なんて心の底から興味ないから!!」
「お前はバリバリドSだろ!!隠れてねーよ!!」
「……もう、聞きたいなら勝手に聞いてなさいな。私は必要な情報だけ聞いたら外に出て行くから」
仕方がない、と言う動作で溜息を吐くアンリ。
だがすぐに聞いて出て行くかと思えば、アンリは意外にも神月を見て言った。
「かーくん、別に好きな時に昔話をするのはあなたの自由よ。私はそれを止めないし口外する事もしないわ」
「姉さんさっき止めてたじゃん……」
「けどね、過去なんて皆抱えてるのよ。悲劇のヒロインみたいに淡々と暗く話して………馬鹿じゃないの?」
もう少しで顔に触れる、そんな距離まで神月との距離を縮めて、言った。
「話すんだったら、笑い話に変えられるくらいに図太くなってから話しなさい。それが出来ないなら最初から話そうとも思わないで」
「……………お前に説教されるとは、夢にも思わなかった」
そう呟て、小さく神月は笑った。
アンリが距離を少し取るのを見ると、イヴァルへと振り返る。
「ラット・ヴォイス」
「…………キャットウォークマンの本名かい?」
「家族はいないと言っていた。出身はロータス共和国の山岳部、隠れ家も基本ロータスが多かった」
「ありがとう、ロータスに知り合いがいるから調べてもらうよ」
そう言ってイヴァルは二階へと上がっていった。
その背中を見届けてから、神月はアンリを見る。
「………お前も調べるのか?」
「えぇ勿論。丁度ここにロータス出身の子も居ることだし」
そう言ってアンリはコウキを見る。
コウキ自身はこっそり帰ろうとしていたのか、扉に手をかけていて、アンリにそう言われると小さく舌打ちする。
「…………俺は首都出身だぞ」
「まぁまぁ、良いじゃない別に。減るものじゃないし」
「てめぇと話すと寿命とやる気が減る」
「ふふっ、良い度胸してるのね」
「姉さんクールダウン!!棍納めて!!」
棍を笑顔で出そうとしたアンリをランは羽交い締めにして止める。
と、その後ろで六が神月を見て口元を歪めた。
「お前、話さないのか?」
「……今話すと不幸が襲ってきそうだからな」
「がはははは!違いない……おーいラン、一回アンリ離せ」
アンリとランを分断して、六は不適に笑いながら言った。
「修行、やるんだろ?」
「はい!是非お願いします!!」




