萌えって一体、なんだろう。
あの人の相方到来
「萌えがない!!」
「………………………は?」
神月が入って丁度二週間。
三人でギルドにて依頼を物色しているとき、後ろから入ってきたチェリナが唐突に叫んだ言葉である。
そのままランに歩み寄るチェリナ。
「赤いジャケットコート、黒の半袖シャツ、パンツ!!全く萌えない服なんだけどどう言うことお母さんに説明して!!」
「落ち着いてチェリナ!!いつもの事だけど急にどうしたのさ!?」
「いつもの事なのか?」
「えぇ、いつもの事ね」
「うわっちょ、くっつかないでっ……か、神月ヘルプ!!」
……静かに神月は溜息を吐き、ランにくっついているチェリナを剥ぎ取った。
その間に割って入り、同情混じりの視線でランを見る。
「………苦労しているな」
「………うん」
「萌えがないの、萌えが足りないの!!昔のランはとっても可愛くて食べちゃいたいぐらい可愛かったのに!!今じゃこうだ!!」
「シェル、斬って良いよ」
「?」
シェルがよく分からないかのように首を傾げる。
瞬間、チェリナの目が光った。
「シェルちゃんみたいに萌えの塊みたいな子が居ればいいんだよ!もう楽園だよ、受付嬢最高!!」
「姉さん斬って良いかな」
「面白いからヤメて」
「低身長、フリフリドレス、萌え袖!萌え要素満載だよね!!」
チェリナは、こちらでは通じない不思議な呪文を唱えているかの如く、ギルドのど真ん中で熱弁していた。
後ろから入ってくるギルド員や商人達には迷惑だ。ラン自身早く退かしたかったが、何分姉が笑って阻止してくる。
「……何やってんだお前?」
ふと入口から、バーテンダー服の青年が入ってくる。
そして背中のギターを掴んでーーーチェリナの頭めがけてスイングした。
良い音がして、床とご対面するチェリナ。
「よー、悪かったなコイツが」
「………誰だ?」
青年に対し、目を細める神月。
ダークグレーの髪をして、目は光の角度によっては翡翠色にも見える黒い色。
一見極東の人間の特徴と合うが、蒼姫以外の存在は知らない。
そんな神月を見て、薄く笑いながらアンリは言った。
「チェリちゃんの相方さんよ、初めて会うのかしら?」
「おー!お前もしかして、噂の切腹侍か!?初めて見んなぁ」
「……俺の噂はどこまで広がるんだ?」
「良いじゃない有名になれて。この人はナフィルド・ドレッサ」
「愛称ナル、てかナルって呼んでくれよ」
「神月、だ………宜しく頼む」
頷いて、神月の周りをぐるりと見るナル。
そして、首を傾げた。
「背丈、意外に低いんだな」
「!」
「極東の人は殆どこれ位って聞くわよ?」
「否でも姉さん、師匠は背高いよ?186cmって言ってたし」
「………そうか、そういうことか」
何を思ったのか、ナルは神月の肩に手を置いた。
身長はナルの方が高く、神月が少し見上げる程度だ。
そして………ナルは殴りたくなるような顔で、微笑んだ。
「シークレットブーツでも履けば大じょうごっ!?」
「黙れ」
実際神月はナルの顔を思い切り殴った。
それ程にナルの顔は馬鹿にしていて、人の中に絶対にある踏み込んではいけない領域に堂々とした表情で押し入ってきた。
げしげしと倒れたナルを蹴り続ける神月。
「だっ、ダメダメ!!一応昔からいる人だし、ダメ!!」
「煩い、相方と同じ様に人の領域に付け込んできて……斬る」
「それこそダメだから!!何当然って感じに言っちゃってるの!?」
「ラン、貴女が言っても何も解決しないわ」
だって……と、アンリは目を細めた。
「貴女、かーくんと背丈同じ位じゃない」
「……………アンリ、それはわざとか?」
「えぇ勿論」
「安心して神月君。太古の昔からチビ侍は愛される存在として認識されていて、更にそれにツンデレ等々の性格がプラスされることによって神々に牙をむける鬼の如く気品と荒々しくも愛らしく思える地位が手にはいるから」
「要するに忠犬みたいで格好可愛いだとさ」
「まだ続いてたのその討論!?というかナル復活早い!!」
「…………俺は動物か?」
「存在がって事だから、喜んでいいんじゃないかしら?」
……何となく、喜ぶ気にならなかった神月だった。
補足説明
ナル:183cm
神月:170cm
ラン:168cm
……という設定ですね




