観光案内は絶対一日で終わらない
夜に戻ると伝え、ミライとセッカを連れて町に繰り出していた。
太陽が傾いてきたからか、路地の奥にある酒場が段々と灯りを灯していく。
人混みも少し少なくなった道で、ランは神月の手を引っ張りながら歩いていた。
「あれが市場だよ。今は閉まってる店も多いけど朝になれば全部開いてるから、行ってみるのも面白いかも」
「………おい、何時まで手を掴むんだ?お前が人を呼び止めるときは着物の裾を掴むんじゃなかったか?」
「否だからそんな癖付いてないって……こうにして歩けば迷わずにすぐ覚えられるって友達が言ってたんだ、だからだよ」
「魔法学的根拠は一切含まれてないわよ?」
アンリが横から茶々を入れると、ラン自身苦笑いをした。
そして更に神月の手を握る。
「それでも良いじゃんか、こういう根拠のない事でも効果はあるかもしれないでしょ?」
「かも、多分、をあまり連用しないことをオススメするわ」
「あ、アンリちゃん厳しいね………大丈夫だよラン!私は信じるから!」
「期待はしないでおく」
………ランの重い言葉の一撃に、ミライの重い想いは散った。
地面に膝を付けるミライを、冷たい視線でセッカで見ていた。
「飼い犬に手を噛まれるとはこういう事か………」
「裏切ったようには見えなかったが……」
「あーいつもの事だから。私チェリナとミライの扱い結構適当なの」
「みたいだな」
そう言って笑う二人を横目で見る三人。
アンリとミライの顔が、悪役も吃驚するほど悪に満ちた顔になっていた。
因みにセッカはいつものボーカーフェイス。
「やっぱり、あの二人は仲良いわねぇ」
「私、神月の方が段々好きになってく王道的展開に一票!」
「私は別にどちらでも良いが、強いて言うなればどちらかが私の下僕になればそれで良い」
「セッカちょっと黙ってて」
アンリとミライは、ランの異常なほどの神月に対する構い方と世話の仕方で、何かあると踏んだのだ。
その熱心さをラン的には仕事に回してほしいのだろうが、生憎現在の観察対象はラン自身であり、本人もそれに気付くことは暫くの間ないだろう。
「ランって何かと世話焼きなのよねぇ、家事全般大好きで運動得意で勉強も出来てしかもあの性格」
「神様に何能貰ったらああになるんだろ、ザ・主人公って感じ?」
「姉が駄目人間じゃあ嫌でもああいう風になるだけだろう」
「そうなのよねぇ、私家事全般不得意だから。頭と運動神経は私に似たのに……おかしいわ。神様ってロリコン?」
「………何話してんの皆?」
三人のやりとりを見ていたランが遂に口を開いた。
そう問われ、何故か笑顔でランと神月を見るアンリとミライ。
「別に、何も?」
「気にしないで続けてて案内!私達ついて行くだけだし!」
「仕方ない……今度は私が行きつけの武器専門店に案内してやろう」
「ムードも何もありゃしない所連れてく普通!?」
セッカの言葉に苦笑いをしたラン、隣の神月も何故か目をそらしている。
まさか自身達が観察していることに気付いたのだろうか、とアンリは思考してーーーー
「もう遅くなるから明日にしようかなと」
「意外に普通だ!」
「平凡すぎて少しがっかりよ」
「楽しいというのに……火花が散る幻想的な鍛冶、光を反射して黒く輝く美しい胴の銃達……」
「セッカ本当に黙ってて」
拳を握りしめて本当に悔しそうなセッカの頭を、ミライは軽く手でチョップした。




