三角関係は修羅場決定フラグ
「悠々亭?」
「そ!私と姉さんが二年前まで住んでた宿屋なんだけどね」
契約が完了し、予想道理神月が[侍]になり、三人は町に繰り出していた。
切腹した人間が直ぐ回復する訳ないのだが、神月の要望で無理矢理出て来たのだ。
「この子が赤ちゃんの時から住んでたのよ。私達は家もう持ってるし、ランには交渉しに行ってもらってたのよ」
「コンマ単位でOK貰っちゃったよ……シャワーが付いた一室、約三万四千ギル!お得じゃない!?」
「……固定住居は持っていなかったから知らん」
ランの嬉々とした目に答えられず、神月はさり気なく視線を逸らした。
「因みに私の自宅兼仕事場はこの15年で貯めたヘソクリ200万ギルで買ったわ!」
「その忠実さを仕事に生かしてくれれば助かるんだけどな」
「良い買い物したわ……あ、ここよ」
アンリの足が止まる。
目の前には、少し古びた木の、二階建ての建物が建っていた。
蔦が少し絡まった看板には“悠々亭“と彫られている。
神月の手を取り、ランは店の扉を押し開けた。
「リュウズさん、アリスさん、連れて来まし」
「ほほぅ、これが噂の切腹男か……筋は良さそうだな」
「うはぁ私と身長同じくらいかな?」
「た………って!?」
神月の手を引きながら慌てて間合いを開くラン。
目の前には赤と白の髪の眼鏡少女と、盾を背負う黒い短髪の女性がいた。
「セッカ、ミライ!?何でここにいるの!?」
「久々の登場なのにその言葉は酷い!!」
「ふん、チェリナから話は聞いたぞ……死にたいなら何時でも私に言え、一撃で殺してやる」
「否だからその優しさは生きてる人には伝わらないって!!」
三人のやり取りを呆然と眺める神月。
その神月を、二人は見た。
「セッカだ。年上なのだから敬えよ?そして平伏せ!」
「何言ってんだぁぁあ!?私はミライ・フォルトス!宜しく!」
「二人は[砲撃士]と[盾士]なのよ、コンビを組んでるの」
横からアンリが覗いてきながらそう説明する。
ふと二人の後ろから、赤髪の女性が来た。
「あらあら、賑やかなのねぇ」
「おば様!この子が噂の切腹男ことかーくんよ」
「あらそうなの?切腹なんてしちゃ駄目よ?」
「アリスさん、神月だよ。ほら!」
「っ」
ランに引っ張られて、神月はアリスの前に出される。
口を開こうとするが、その前に両頬を包み込むように触れられた。
「じーーー…」
「………何だ」
「んーん?ふふっ、セストを思い出すわねぇ。息子持った気分!」
「君が神月か」
アリスの後ろから、今度はオールバックの男性がやってきた。
「リュウズ・ウイングスだ、この店の店長で…妻のアリスさ」
「見てみてリュー君!セストを思い出さない?このコンパクトサイズ!」
ーーーリュー君!!!?
一同に衝撃が走ったが、リュウズはいつものことなので気にせず神月を見て、笑った。
「おー、アストリッドの奴と背比べしてた時を思い出すじゃないか。懐かしいな、これから宜しく」
頭をワシャワシャさせる神月。
顔が困惑の表情を浮かべていて明らかに対処法を見失っていて、ここ数日で見た神月の雰囲気とは別物だった。
が、まんざらでもないようでその手を振り払おうとはしない。
「そしてこの後アリスを巡る三角関係に巡るという訳か………考えたなラン」
「否何言ってるの!?そんな事考えないし!おぞましいこと言わないで!」
「そうだ、一応言っておくね」
セッカの言葉を聞いてか、急にリュウズは神月の肩を握った。
つい数時間前にも、見たことのある光景だった。
「アリスに手なんか出したら………シバくぞコラ」
「…………………………」
「やだリュー君ったら……!!」
頬を染めるアリスと、どうでも良かったのか黙り込む神月。
ランとミライも、溜息を吐いた。
「…………心は新婚って所かしら?」
「歳と見た目を考えろバカップルが」
「ちょ、お二人さんキツいお言葉で!!」




