話は意外に逸れやすい
合宿中にサボりながら考えました。
「音波自体、防ぐ方法は少ないわ。けれど雨の日に傘を音波の元に向ければ大体が防げるって、知ってる?」
「……………」
「さっきの魔法……《雨》、あれは《激流》の応用なの、私オリジナルよ?」
少し楽しそうに話すアンリ。
室内に雨を降らせて、一瞬だけだがキャットウォークマンの動きと音を止め、ランを動かせるようにしたのだ。
ランは音波が聞こえる年齢なのだろうが、止めさえすればこちらのモノだった。
「私が[音律士]なんて証拠、どこにあるの?」
「特に無いけれど仮説を立てて挙げるとしたら動きかしら?[盗賊]は職の中じゃトップスピードを誇るとされてるわ……そのスピード、あの子が見切れるわけ無いじゃない」
「あっ、姉さんあったよ!」
部屋の中を物色しているランを見ると、声を上げて子供サイズのエプロンドレスを手に持っていた所だった。
灰色と黒をベースにしていて、スカートの襞に花の刺繍があるのが特徴だ。
ー……………。
「………イヴァルさんの依頼品だよ」
「そうそれ!」
「姉さん忘れてたの!?私たちこれ取り戻せなかったらクビだったんだよ、忘れちゃいけないことだよ!?」
すっかり忘れていた。
本来はネコミミ怪盗が盗んだシェルのエプロンドレスを取り戻すことが主題だったのだ(半ば無理矢理)
糸も解けておらず、新品その物の状態で保管されていて、ランが安堵の息を吐くのが目に見えてわかった。
「一つ聞きたいのだけれど、あんな欲にまみれた薄汚い服なんかどこで売るつもりだったの?」
「姉さん、一言多いよ」
「誰が言うもんですか~」
問うと、アンリに対してべー!と舌を出して黙秘を主張したキャットウォークマン。
……どこからかロープと蝋燭を出すアンリ。
「ここで一句……『吐かぬなら、吐かせてみせよう、ホトトギス』」
「物騒すぎて敵に憐れむよそれ悪役の仕事!」
慌ててランがアンリを羽交い締めにして止める。
ふとーーーキャットウォークマンが、小さく笑った。
「……ふふふ……こんな所で油なんか売ってもいいのかしらぁ?」
口を突然開いたキャットウォークマンを見る二人。
「この地下路は、地理で言うと湖の真下になるのよ?」
「それが?」
「………すっごく偶に、奥の突き当たりから水が漏れ出すのよねぇ……この地下路は町への氾濫を防ぐために作られた…」
昔話を語るように、ゆっくりと話を紡ぐキャットウォークマン。
段々と、嫌な予感がしてきた。
「今はもう防がれてるけれど……穴なんか空いたら、ここは廊下一面川になるわねぇ…ふふふっ」
キャットウォークマンの言葉に、来る途中で見た水の跡を思い出した。
アンリの身長からしても、あの高さは廊下の天井ギリギリだった。
アンリ同様に何かに気づいたのか、キャットウォークマンの襟首を乱暴にランが掴んだ。
「貴様、何をした!」
「貴様って、アハハハハ!時代まちがえてなぁい?」
そのまま笑うキャットウォークマンに、ランはつい後退り、手を離した。
ふと、そんなランの肩を叩くアンリ。
「ラン、そんな奴は放っておきなさい。奥見てくるわ」
「姉さん!?わ、私も行く!!」
アンリがランに言いながら部屋の外へと出て行ったのを見て、キャットウォークマンを残そうか迷ったのか足を止め、すぐにランも走り出した。
……ニヤリと笑い、傷を押さえながら立ち上がるキャットウォークマン。
「この借りはちゃんと返さないと………ドレスは持ってかれちゃったけど、主様には情報だけで十分よねぇ………」
壁に手を当てると、紫色の光を発光しながら魔法陣が浮き出てきた。
笑ってそこを潜ろうとして………腹部に異物感。
「……………は?」
声が漏れると同時に、異常なほどの吐き気が込み上がってきた。
腹部を恐る恐る見ると、細長い剣が突き刺さっていた。体を貫通しているらしい、手足が動かなかった。
剣は、魔法陣の中から伸びていた。
「………な、んで………こうなるのよぉ………!?主さ」
魔法陣から覗く、剣を握る手が更に強く構えた。
そのままーーーー手首が上へと捻り上げられ、天井に赤い斑点が大きく飛び散った。




