罠と考察
暗い廊下を、アンリとランは歩いていた。
先程まで走ってはいたが、アンリが再び何もない所で転んで罠に掛かりそうになったのが原因である。
因みに罠は、上から矢が降って来るというえげつない物だった。
「姉さんは……罠とかに掛かりやすいんだから、自覚してよね」
「大丈夫って思ったのよねぇ……プライドボロボロよ」
「寧ろ私だったら、コウキに庇われた時点で挫けるかな」
姉と妹の立場が逆転したかのように見えた瞬間だった。
そもそも、誰かが見ていないとアンリはすぐ死ぬタイプだ、とランは心の中で呟いた。
「大丈夫姉さん、きっと良いことあるよ」
「だと良いのだけれどね、私の目的のためにもランはいっぱい利用させて貰うわ………家事とか家事とか家事とか」
「家事ばっかり!?姉さん……仕事しないならせめて洗濯位は出来るようになってよ……」
アンリが洗濯をしようとすると面倒臭いのか、水系の魔法で一気に洗い、炎系の魔法で一気に乾かそうとするのだ。
この前はそれでランのお気に入りのコートが炭と化した、赤一色のロングで意外に気に入っていたのだ、もう過去の話だが。
「そ、それにしてもこんな所があったんだね、吃驚したよ」
「恐らくは、この町の隠し通路を利用したのでしょうね」
ラン自身も思ったほど無理矢理過ぎた話題変換だったが、意外にもアンリは食いついてきた。
「人は、何かをする時は逃げ道も用意しておく生き物だから」
「逃げ道?」
「ま、ネコミミみたいに何かに利用しているのでしょうけれどね。どうでも良いけれど」
「姉さん、せめてキャットウォークマンって言ってあげない?完璧に名前がネコミミになってるよ?」
アンリの言葉にツッコミを入れていくラン。
そんなランをにやつきながら見てーーーアンリは足を止めた。
急に止まったアンリを見て、首を傾げるラン。アンリの視線は壁に向けられていた。
「姉さん?」
「………水痕?」
「え、水?」
アンリの言葉を聞き、ランもアンリが照らしている壁を見た。
うっすらと横一文字に痕が残っていたのだ、目で確認できる程度には永遠と垂直に。
「………姉さん」
「嫌な予感がするわね……ラン、早く帰りましょ」
「了解!」
アンリの言葉に頷いて走り出したラン。
……アンリ、本日三回目の転倒を果たした、足をネズミ取り機に挟ませながら。
「……………痛い」
「だろうね」
† † †
放った銃弾を刀の鞘で弾かれ、一気に間合いを狭められた。
容赦のない払いを紙一重でかわすと、微かに腕を引いた神月。
ー………ッッ!
本能的に、後ろに身を引いた。
同時にコウキが先程まで居た場所を虚しく刀の切っ先が突いた。
そのまま勢いを殺さずに後ろに下がり、空の薬莢す素早く銃から取りだし放り投げ捨て、新しい弾丸をリロードする。
「………弾切れ、ではないみたいだな」
「言ってろ………チッ」
ガッカリとした物言いで言ってきた神月を見て、コウキは眉を更に深くした。
明らかに余裕の表情が見れた、本気を出さないのは格下と見られているからなのか、気紛れか。
「コウキ!私も………」
「良いから黙ってそこにいろ!」
前に出ようとしてきたサラに渇を入れ、装填し終えた二丁の銃を再び構えたコウキ。
どうしたら、本気を出させることが出来るのだろうか。そう頭の中で思考して………
「隙だらけたぞ?」
「!ぐっーーー」
意識が一瞬飛んだ隙に間合いを一気に狭められた。
刀を防ごうと反射的に銃を神月に向けたが、軽い振動と共に銃が、斬られていた。
息を飲む間もなく、刀が振りかぶられた。
「コウキ!!」
首から斜め下に、赤い鮮血が走った。




