地下路で
ランの声が聞こえたが、時既に遅し。
アンリは思いきり足を踏み外し、暗い階段を転がり落ちていた。
「………………っ!」
手を階段に叩くように付け、回転の反動で体が少し浮くのに合わせて、体重をかけて跳ねた。
空中で体を捻り、床に着地する。格好良くポーズを決めて。
「ふぅ……危なかったわ。ランのクセに後から言うなんて…」
八つ当たりに近い言葉を一人吐き捨て、手に《炎》を灯した。
先程まで居た廃屋とは違い、石畳の床に火の付いていない燭台がかけられた壁、奥へと続く道。
…頭を指で軽く叩くアンリ
ー……ラン達を待とうかしら。
ー……けど、待っててもその間暇だし……。
そう考え、一人先に行こうと頷き歩き出そうとした。
……石畳の間と間に爪先が引っかかり、何もない所で転んだ。
ー…………。
「………ふふ、ふふふふ……私ったらドジっこなんだから。ランに見られなくて本当に良かったわ………」
内心、冷や汗を掻きながら起き上がろうとした。
同時に、背後から足音がしたかと思うと頭を掴まれた。
「このバカ女!!」
「がふっ!?」
再び床とご対面してーーー壁に亀裂が一気に入った。
「コウキ、ナイス!」
「アン姉大丈夫!?」
「死ね」
「うぇぇえーー!!?」
「姉さんサラに八つ当たりしないの!ほら立って!」
コウキがアンリから手を離したのを見て、ランが手を差し伸べてきたのでそれに甘えてアンリは立ち上がった。
壁の亀裂を見ると、亀裂というより、斬ったような痕だった。
「………ラン、一つ分かったわ」
「うん、これ多分神月の仕わ…」
「アナタ私が転んだ所見たわね?」
「良いじゃんか今そこは!見てないから安心して!」
「良くないわよ、私のプライドがかかってるのよ」
場違いな会話をしている姉妹を一瞥して、コウキはホルダーから銃を取り出した。
廊下の先で、赤い目をした男がその場に佇んでいた。
「!神月………」
「……俺の今夜の仕事はお前達を消すことだったが、手間が省けた」
そして、腰を低くして刀を抜く体勢になった。
「恨みはねぇが、ここで沈んでくれ」
「………ラン、彼はあなたの言う通り、良い人なのかしら?」
アンリはそうランに問うてみた。
急な質問に驚いたのかランは目を開いて、すぐにいつも通りの表情になって肯定した。
それを見て、微笑する。
「コウキ、彼はあなたにお任せしても?」
「俺は元からそのつもりだ、勝手に先に行け」
「そうね、ラン、行きましょう」
「分かった!ごめんね二人とも!」
コウキとサラが頷いたのを見て、二人は神月の側を通り奥へと走り出した。
それを見てコウキが目を細める。
「………女は斬らねぇのか」
「敵を目の前にして、背中を向けた敵を斬る気はない」
「けっ、おいサラ」
銃を構えながら、背後にいるサラに振り返らずに言った。
「俺より前に来るな、守れなくなる」
「っ………約束はしないよ!」
「上等」
そして、神月を見た。
「コウキ・ローブス、てめぇを倒す男の名前だ、宜しく」
「……神月だ、斬る」
そしてお互いに、笑った。




