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死亡フラグを回避しながら妹を育て始めました  作者: 音国 心
怪盗キャットウォークマン編
38/97

青と赤の語り

気付いたときには、既に水中に身を沈めていた。


ー………私も馬鹿か……。


勢いよく飛び込んでしまったので、少し体に衝撃が走ったが気にせずに水面に顔を浮かせるラン。

着物の裾はまだ掴んでいたので、男も少しして浮いてきた。


「………あ!あなたさっきアホって言ったでしょ!?」

「…………………」

「開口一番にアホって酷いよね……まぁいいや、上がろう」


裾から手を離して陸へと泳ぎ始める。

音からして大人しく着いてきているのだろう、意外に素直だ。


ー………。

「はぁ………えっと、私ラン。あなたは?」

「……………………」

「……………………無言かい」


小さくツッコんで、男を見てみる。

白みがかったブルーグレーで毛先が少し上に跳ねている髪、目は兎のように赤い色をしている。

体格は細めだが、着物の上からでも分かるように鍛えられているようだ。歳は多分だが、20歳前後。


「………あんな物見た後だから、説得力はないと思うけど………私はあなたが悪い人には思えない」

「………………」

「でもコウキは完璧に敵認識してるから……話は通じないって思ってて、会えて良かった」

「……………あの少年は、生きたか」


そこで初めて、男は口を開いた。

正確には落ちる直前も口を開いたが、カウントに入れていない。

それに対して頷くと、男は小さく肩を振るわせて笑った。


「ははっ、そうか………手加減したつもりは無かったんだが」

「それ、嘘でしょ?手加減しなかったなら内臓傷つけてるはず。それに、逆に手加減しないとコウキ、絶対死んでた」

「……………口達者だな」

「姉のお陰で苦労してるから」


苦笑ともとれる笑みをランが浮かべると、男はランを見た。


「俺が怖くないか」

「は?」

「あれだの惨状を見たんだ、普通の感覚なら恐怖するだろ?」


その質問に、首を傾げたラン。


「…………師匠がさ、いつも本気出すと一般人でも血祭りに上げるような人なんだよね」

「…………………?」

「同じギルドの仲間も、いきなり銃撃ってくるし、強い敵が来るとすぐ逃げるし、何か突然歌い出すし、一番許せないのが…………私を子供扱いしてくる人いるし」


後半は、ほぼグチだった。


「何が言いたいかって言うと、変な日常がいつも身の回りにあるから感覚が鈍ってるんだと思う、だから怖くないよ」

「……はっ、俺の場合、慣れるにしては異常な感覚持ってないと駄目だと思うがな……頭大丈夫か?」

「な、何か姉さん相手にしてるみたい………」


頭が痛くなったが、ランの中では確証が生まれていた。

やはりこの男は、コウキが敵視するほどの悪人には見えないのだ、言動と言い動作と言い…………師の六そっくりだ。


ー……もしかして

「ねぇ、あなた極東キョクト出身?」

「!………その地名を聞いたのは久しぶりだな」

「やっぱり、師匠が極東キョクト出身なんだ。でも聞いてたのと見た目が違うような………」


同時、ランの背中を悪寒が駆け巡った。

その場から飛び退くと同時に、男の刀が先程まで居た場所に突き刺さった。

目を白黒差せるランに対して、地面から刀を抜く男。


「……………結局は、そこに行くか」

「え、え?どうし…」

「他の奴と違う………そう思った俺が馬鹿だったみたいだ!」

「まっ……いきなりどうしたの………うわっ!?」


今度は顔に刀の切っ先が飛んできたので体を横にずらして避ける。

応戦したいところだが、残念なことに剣は二つとも宿に置いてきてしまった。

そして刀が振りかぶられてーーー両手で刀を受け止めた。


「あ、危なっ………!!」

「!……一つ問う、俺の依頼主を止めたいか」

「依頼主……キャットウォークマンの事?それは勿論!」

「なら、あいつに一矢報いてやるんだな……悪人でも依頼主、お前等のこと、止めてやる」


男から殺気が消えたかと思うと、刀を鞘に納めてランに背を向けた。

慌ててランは着物の裾を再び掴んだ。


「………足を止めさせたいときは裾を掴む癖でもあるのか?」

「違うから!名前、結局教えてもらってないから」

「……………本当に、つくづく面白い奴だな」


首だけをランに向け、言った。


神月かつき、だ。姓は忘れた」

神月かつき………最後に一つだけ、何でキャットウォークマンに着いていくの?」

「………………忘れた」


そしてランの手を振り解き、神月かつきは歩き去った。

神月かつきの言葉が、ランの頭に渦巻いていた。


ー………忘れた、か。

「……分かりやすい嘘だなぁ……姉さんでも言わないよ」

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