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死亡フラグを回避しながら妹を育て始めました  作者: 音国 心
怪盗キャットウォークマン編
35/97

出て来て欲しくないときに出て来る奴は大抵空気読めない奴

馬車の上で自己紹介をわざわざしてくれた怪盗を、アンリは目を細めながら観察した。

ただでさえ暑い季節に入ったのに、黒い仮面に黒いマント、黒い皮の手袋に黒い編み上げのブーツ。

シャツが白なのが幸いしているが、正直言って、見てるこっちの方が暑苦しく思えた。


「んだよ、ネコミミ付けたババアじゃねーか」

「恥ずかしくないんですか?」

「と言うか、何で呼んでもないのに出て来るかなぁ」

「空気読みなさいよ痛いおばさん」

「うっさいわね!!私はそこの女よりは年下よ!!」


どうやら唯の猫好きな女らしい。


「キャットウォークマン!業者さん達に何をした!」

「別にぃ?操ってるだけよ?大丈夫、その間の記憶は無いから」

「……………」


キャットウォークマンの解答に、ふむ、となって考え始めるアンリ。

恐らく魔術の一種、傀儡術による操りだろう。この魔法は下準備が必要だが効果を発揮すれば術者を叩くしかなくなる。

そしてーーーー黒魔法に区別される、禁術の一つでもある。


「まさか、黒魔法を使う怪盗だとは思わなかったわ」

「んふ、凄いでしょう?ある人に教えてもらったのよ」

「ある人?」

「それは秘密。あなた達の事は見てたわぁ、[人形師パペッター]の作った服……高く売らせてもらうわよ」


その言葉に、アンリの隣にいたランが剣を抜いた。


「その必要はない、今すぐ私が切り刻んでその首、イヴァルさんに差し出してやる」

「あら良いの?この人達がどうなってちゃっても?」


キャットウォークマンが笑って指を動かす。

同時に、四人の目の前の業者が自身の首もとに鎌を当てた。


「っ…………」

「ランちゃん待って、危ない」


サラに肩を掴まれ、小さく舌打ちするラン。

それを見て、ニヤリとあくどい笑みを浮かべるキャットウォークマン。


「同じ女の子でも、そっちの子の方が優秀ねぇ?」

「うわ………一寸ムカつく………」

「誰がんな脅しに怖じ気ずくかバーカ」

「え」


コウキは言い放ったと同時に、ズボンのホルダーから銃を取り出し、躊躇なくキャットウォークマンを撃った。

弾は、キャットウォークマンの頬を掠めていった。


「……え?君、その子が諦めたの見てなかったの?え、馬鹿?」

「大人なんか滅びてしまえ」

「私達がいる限りその考えは世界には通用しないと思うよ」


コウキの言葉にわざわざランはツッコんだが、アンリはそれによって出来た隙を見逃さなかった。

素早く背中の棍を構える。


「棍術一の技・風鈴立花!!」

「っあ!?」


棍を回転させながら振り回し、近くの業者の鳩尾に先端をくい込ませるアンリ。

不意打ちにはっとしたのか、キャットウォークマンが慌てて他の業者を操ろうとするが、ランは剣の柄で殴り、コウキは銃で殴り、気絶させていく。


「ひ、卑怯じゃないのよぉ、不意打ちなんて!」

「それをテメェが言うか!!」

「さ、力の差は分かったでしょう………捕まりなさいな、今なら内蔵闇ルートに売らなくて済むわよ?」

「相手が犯罪者だからって臓器売買は違法だよ姉さん」

「じゃあ、拘束魔法かけるね?」


そう言って、サラが魔法陣を展開させてーーーーコウキの背後に、音無く着物の青年が現れた。


「「!!」」

「あ?ーーーーっっ」


コウキが気配を感じ、後ろを振り返る。

青年が刀を抜いたのは、ほぼ同時だった。


「………っコウキ!!」


重い音が響き、コウキの体から鮮血が吹きだした。

サラの魔法陣が青年の方に目標転換する。


「《レイ》!!」


魔法陣から光の槍が青年へと飛ぶが、あえなく避けられて間を開かれる。

その隙にアンリがコウキに駆け寄った。


「!この斬り方………」

「姉さん、コウキは!?」

「医者っぽく言うなら、命に別状は無し。かしら?」

「回復魔法………!!」

「そうねぇ………一度逃げましょうか」


そう言ったアンリの足下に、大きく魔法陣が展開される。


「《天光アスティオン》」


同時、視界が一気に光り輝いた。

キャットウォークマンがつい目を閉じ、光に目が慣れた頃には四人の姿はなかった。


「………まぁいいわ、ローツェルブでまた会えるでしょうし」


そう言って笑うキャットウォークマンを、青年は冷たい目で見ていた。

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