早起きは得を生み出すかもしれない
若木が大樹へ、岩が削られ石になるほどの時が経過した。
路地を走り、ゴミ箱を飛び越える一人の少女がいた。
ー………あぁもう!
「私関係ないじゃんか……!!」
そう一人呟いて、後ろを見る。
ぞろぞろと路地から、柄の悪そうな男達が出てきていた。
「てめっ、金返せゴラーー!!」
「だから、私はあんた達から金なんて借りてないって!!前に裏カジノで稼いだけど!!」
「俺らより悪質じゃねーかぁぁあ!!」
「興味本位で一回だけスロットやったら当たったんだよ!!」
弁解になっていない弁解を叫びながら、クリスタ中央の市場へと入る。
「おらランちゃん、またアンリちゃんを捜してるのかい?」
「まぁそんな感じ!」
「朝からご苦労さん!持って行きな!」
「おっと」
小さい頃からお世話になっていた店主からリンゴが投げられたので空中キャッチする。
そのまま人混みを避けながら、再び路地へと入っていった。
ー…また姉さんが私のフリしたのかな……。
ー……本当にあの人達知らないんだけど……あ。
「ああっ、テメェもう逃げられると思うなヨゴフゥッ!!」
「ごめん邪魔!!」
先回りしていたらしい男の顔に脚をめり込ませた。
その勢いのまま路地から出て、とある家の扉の取っ手に手をかけて回し、中に入った。
……息を吐く。
「危なかった………」
「何が危なかっただてめぇは」
「あ、おはようコウキ」
声に反応して後ろを見れば淡い黄緑色の髪をした少年が睨みながら傍に来るところだった。
彼はコウキ・ローブス、サラの従兄弟で同い年である。
苦笑いして立ち上がれば、その猫目が更に細められた。
「いい加減俺の家をてめぇの避難場所にするのはやめろ」
「ゴメンナサイ許シテー」
「棒読みも良いところじゃねーか。またあの年増若作り女捜してんのか」
「ちょっ………一応その人の妹前にしてその言い方は……」
「けっ、よく愛想尽きないな……俺だったらあの女が姉貴なのは死んでもイヤだね」
「コウキはそもそも大人嫌いでしょ………?」
結局皆、最後は大人になるのだがそれに触れて怒られたのは、まだ記憶に新しい。
男達がいないのを窓から覗いて確認し、扉に手をかける。
「じゃあまた後でね」
「二度と来るな」
「考えとく、じゃあね!」
そして外へと出て行った。
……コウキがふと時計を見れば、まだ6時だ。
「………あのババア、こんな朝早く動いて………歳か?」
クリスタから少し離れたところの森にて。
一人の女性が、森の中に作った小さな畑で花を栽培していた。
ー……経過順調、これならおっさんに売りつけられるわ
「………さん」
ー……こっちの毒花は薬が作れるかしら…幾つか持ち帰
「姉さん」
「っ!?」
頭に本の角がめり込んだ。
後ろを振り返れば、妹が凶器の本を元の位置に戻していた。
「全く、店の開店準備はどうしたの?」
「あら、ランはやってくれないの?非情な妹ね」
「はいはい、ほら帰ろう?」
その姿が、彼の姿と重なった。
………小さく笑う。
「………昔もこんなやりとりしたわねぇ………」
「?」
「さ、帰りましょうか」
ランの言葉に………アンリは微笑した。




