ヘタレ盾士とエルフな砲撃士
悠々亭でモシャモシャとピーチパイを頬張るランとサラ。
その二人を見ながら、アストリッドは口を開いた
「アンリ、森で何をしていたんだ?」
「三万で良いわよ」
「お前は情報屋か。良いから教えろって」
「仕方ないわねぇ……花の品種を作ろうかと思ってるの」
セストにも言われ、アンリは渋々と言った感じで口を開いた。
アンリの能力、《植物学者》は、簡単に言えば本を見なくてもその植物の情報が見るだけで分かる、という能力である。
但し、世の中にはそれを利用して毒薬などを作る人間もいるが。
「森で良い花を見つけたの、草丈が高くて一輪咲きの花よ。今日それを少し採取したから後で実験してウイルスフリーにしてみるつもりよ」
「…………お、おう」
「本当だったら自前の顕微鏡が欲しいのだけれど、嫌なことしか起こりそうにないから使いたくないのが本音なのよね…あっ培地は蒼姫と検討中よ。カルス形成が良いのか不定芽が良いのかも検討中、不定芽だと少し面倒だから私的には一気に数を増やせるカルスの方が………」
「ごめんなさいアンリ様話に着いていけません」
遂にセストが子を上げたのを見て、アストリッドは呆れるしかなかった。
アンリも爆笑していると……店の扉が開いた。
「あら、いらっしゃ………あら?」
アリスが首を傾げる。
そこには、黒い髪を二つに結った、背中に人の背の高さ分はありそうな盾を背負った少女がいた。
その視線は、ランとサラに注がれている。
「………お?お前ミライじゃねーか!帰ってきたのか!」
「何この光景マジ天使なんだけど可愛すぎるでしょ!誰か、空間投影魔法使える人いない!?」
「煩いショタコン、さっさと中に入れ」
その後ろから少女をど突く、赤と白のグラデーションの髪で、珍しく眼鏡をしている少女。
だがその耳は尖っている、恐らくエルフ族だ。
「………どちら様かしら?」
「すいませんこっちのセリフッす」
「………アンリ、紹介する」
押し問答になってしまうのが分かったのか、フォークを置いてアストリッドがアンリに紹介する事に。
「ミライ・フォルトス、俺達の一歳上で[盾士]。隣の眼鏡はセッカ、[砲撃士]でミライとよくツルんでるんだ」
「誰が眼鏡だ将来絶対禿頭が」
「俺に対する喧嘩の売り方と見た」
「ちょちょちょちょちょまっっ!!」
ズボンのホルダーにしまっている拳銃を取り出そうとしたアストリッドを、セストとミライが慌てて押さえつける。
その手際の良さからして、日常的に見られる光景なのだろう。
「こ、こいつらロータス共和国に行ってたんだよ!なっ?」
「そうそうそう!長期依頼にイヴァルさんの命令で行かされちゃって!やっと戻ってきたんだよ!アスト何か力強くなってるっっ」
未だに暴れるアストリッド。
それを見て、アンリはピーチパイをフォークで刺した。
「アストリッド、あーん」
「へ?」
「!!…………」
……餌付けされた犬のように、咀嚼するアストリッド。
そんなアストリッドを唖然としてみるミライ、セストは慣れた。
「………オーラが巡り巡ったな……アンリと言ったな」
「何かしら?」
「お前、相当深い呪にかかってるな」
「……それ、キルトっていう獣人にも言われたわ」
そう思い返せば、あの時キルトがミライについてシェルに訪ねていたな、とアンリは思い返した。
そうなればきっと占いでまた来るだろう。ファミリーネームの件はまだ片付いてなかったので良い機会だ、聞こう。
「キルトさんに会ったんだ…珍しいなぁ、あたしも会いたい」
「あの男は好かん、アンリ安心しろ、死にたくなったらいつでも呼ぶが良い。一撃で優しく殺してやる」
「その優しさは生きてる奴には通じないな」
「………姉ちゃん」
サラと光景を呆然と見ていたランが口を開いた。
アンリがランを見ると、笑っていて。
「にぎやかになったな!」
「………この子は、偉そうに言っちゃって」
そう笑う妹の額を、アンリは指で軽く突いた。




