獣人の占術士
朝食を食べ終え、アンリはランをセストに預けてギルドへ向かった。
相変わらず乙女チックな外観の建物を潜ると、働く人形の中に見慣れてきた少女を発見した。
「!来たですの………って、妹ちゃんは今日は居ないです?」
「セス君に預けて来たの。あのおっさん擬きいる?」
「マスターは今は所用で居ないですの!だから私が変わりに紹介するですの!」
「紹介?」
シェルの言葉に首を傾げていると、二階から誰かが降りてきた。
目元が隠れるまで深く帽子を被った、肌の色が黒い青年だ。
その帽子からは二本、耳が出ていた。
ふと青年と目があった。
「初めましてアンリ・ヴェストルドちゃん、僕はキルト」
「!何で私のファミリーネーム知ってるのかしら?イヴァルさんにも教えてないのよ?」
本来この町に来たのは、メルリーンでのいざこざに合わないようにだ。ギルド登録したときも敢えて教えなかった。
「シェルちゃん、まさかイヴァルさんの用事ってこの人?」
「なのです。キルトは獣人の[占術士]なのです」
[占術士]、占いを得意とする珍しい職だ。
手練れでは約97%当たるようになるとは言われているが、戦う技がない為に人気がないという、親近感を覚える職だ。
「昔から居るのです。私も何歳かは知らないのです」
「獣人はエルフ族の次に寿命が長いからね。………ふむ」
そう言って、アンリをジロジロと見始める。
一周して、満足そうに口元を歪ませた。
「君の能力、《幸福刈り》は本来は禁術と呼ばれる魔法の類だったんだ。知ってた?」
「……………いきなりすぎて何とも反応できないわ」
「でもそれがどうしてか、君の魂に刻み込まれている。それを消すのは容易じゃない」
キルトの言葉に、段々と目を細めていくアンリ。
この男は自分に死ねと言っているのだろうか、今朝早速、大怪我をする所だったのに。
「でも安心して、いつかは消えると僕の占いに出たから」
「………嘘言ってたら、その耳引きちぎるわよ」
「安心するのです!キルトの占いは約60%の確率で当たるのです!」
「それ、聞きようによっては低いのよ?」
「ははっ、厳しいな。僕自身は占いに余り依存はしてないんだけどね、けどそれで他人の可能性を示唆出来るのは嬉しいんだよ」
キルトを見る二人。
「全ての人には等しく可能性がある、僕は[占術士]という職はそれを与えるモノでしかないと考えてる」
「………いきなり語り出したわよ」
「だからアンリさん、変わろうとしなくて良い。今のままで焦らずにゆっくり変わればいい………って、占いで出たんだ」
そして、キルトは笑った。
「肩の力を抜いていこう。君には君の未来がある。………未来と言えば、ミライちゃんはどうしたんたい?」
「今依頼でセッカとロータス共和国に行ってるですの」
二人が去り、アンリは一人になった。
暫く考え込んで、珍しく首を傾げた。
「……結局、私のファミリーネームを知ってる件について話してもらえなかったわね………まぁいいか」




