死亡フラグは役立つときは役立つそうです
「アンリ伏せろ!」
セストの言葉に反射的にアンリはランを抱き抱えてしゃがんだ。
矢がアンリに突き刺さる直前、セストが投げた投擲刃が飛んできて矢を全て真っ二つに切り裂く。
「何で全部アンリの所に飛んだんだよ……ったく、一人だけ高みの見物決め込んでるせいだぞ!」
「ま、セス君にしては上出来ね。ありがとう」
「お前俺に謝罪の一言はねぇの!?」
「私の辞書に謝罪なんて文字は無いわよ」
「胸張って言うな!つーか最悪だなその辞書!」
「てめぇら前見ろ」
六に言われて、渋々二人は前を見た。
盗賊達はすでに臨戦態勢に入っていた。一部仲間割れかと汚い顔で笑っている者もいる。
「……仕方ないわね、嫌だけれど働くわ」
「アストの奴どこ行ったんだよ……」
「アストの事だ、何か考えがあるんだろ、今は……来るぞ」
六が何かを言い掛かったか瞬間に、[盗賊]の職と思われる男達が一斉に襲いかかって来た。
標的は………勿論、アンリ。
「だから、何で私なのよ………っと」
短剣の突き払いを避け、男の顔に物干し竿をめり込ませた。
そのアンリの背後から襲おうとした男を、セストが跳び蹴りを喰らわせて沈める。
「そりゃあお前、《幸福刈り》っつー世にも遠慮したい能力の影響だろ」
「?何だそりゃ」
盗賊の顔面に砂をぶっかけながらセストは首を傾げる。
セストの戦い方がいかにも不良のようだとアンリは思ったが、言うと面倒臭いので黙っていた。
「後で説明するわよ……面倒ね、ホント」
「[銃士]!!一番弱そうな女を狙え!がっっ」
「あら、ごめんあそばせ」
そう叫んだのにムカついたので男の脳天に物干し竿を力の限り叩き落とした。
[銃士]達の銃口がアンリに向けられてーーースコープ一面に六の姿が映った。
「!?」
「居合い抜刀・竜胆」
同時、銃が縦に分かれると共に、体から血を吹き出して倒れた。
頬に飛び散った血を指で拭う六。
「………何で技名言ったのかしら、あのおっさん」
「さぁな、でも格好いいよなぁ!」
「残念だけれど男子の心境は読めないの私」
その後も嬉々として今度は[弓士]部隊に向かっていった六を見て、二人はそう話していた。
「早く帰りたいわ……雑魚が多いし、私のいる意味が分からない」
「言ってやるな!初心者にしてはマシとか、そんな事思って俺これ選んだんだけど!」
「さてと、残りも片づけましょうか。私帰ってすぐに棍買いたいのよ」
「そんなに嫌なのか、物干し竿………」
そうやり取りをして、背中合わせになる二人。
残り人数も少ない、後少しで終わるだろう。
「………ガキ共、[盗賊]なめんじゃねぇぞ」
「……………!」
そう言った男の姿が、アンリの視界から消えた。
「アンリ!上だ!」
六の言葉に反応して上を見上げる。
確かに男が短剣の先をアンリに向け落ちてきていた。が、軽く魔法で防げる程度だった。
そう瞬時にアンリは判断して魔力を解放させようとして……視界が歪んだ。
ーっ………これ、魔力切れ………!?
魔力切れとは、言葉の通り《魔力源》の魔力を出しきった事を示す言葉である。
短い間、六へのやり返しにずっと魔法を放っていた、そのツケが今回ってきたのだろう。
「アンリ!」
セストがアンリの腕を引いて庇おうとしてーーー銃音が鳴り響いた。
………倒れる、男。
「………?」
「全く、やっぱり俺がいないと駄目みたいだな」
「この声は………てめぇ、アスト!どこ行き」
声の無視に振り返って、セストは固まった。
確かにアストリッドは居た、可笑しいことに、巨大なライフルを手に持って。
因みにアストリッドは[銃剣士]ではあるが、銃は所持していなかった。
「あの裏側に言ってみたらあったんだ、似合うか?」
「………やっぱお前、[盗賊]に転職しろよ」
「?」
日は、沈んでいった。




