彼と彼女 side:セスト
セスト・ウイングスは自身でも平凡な人生を送っていると思っている。冒険者の時点で平凡かと問われれば首を傾げる所だが。
冒険者だった父の影響もありギルドに登録した。だが依頼は殆どこなさず、実家の宿屋の手伝いをしていたのだ。
その結果、遂にイヴァルから脅された。
「セスト君はさぁ、冒険者として働く気がないの?一ヶ月以内に依頼成功させないと……君の人形作って着せ替えごっこするよ?」
男子にとっては、一部の人間を除いて遠慮したい言葉だった。
そんなわけで、同じギルドで幼なじみの親友を誘い、依頼に行こうかと考えていた矢先に、アンリがやってきた。
これはイケる。実力を見てみて誘ってみよう。すぐさまそんな考えがセストの脳内に浮かび、六から共に逃走した訳だった。
だが、彼は目の前の光景に言葉が出なかった。
「首都からか、遠いんだな」
「えぇ、一時はどうなるかと思ったわ」
「…………………」
何故幼なじみとアンリは楽しそうに話しているのだろうか。
嫌な予感は薄々していた、あの幼なじみが初対面の人間とよく話していたからだ。
謂わずとして、セストは蚊帳の外。
アストリッドは基本的に唐変木と評されるような少年だ。
自分以外と余り話さないし、基本真面目だが馬鹿なことも一緒にやってきた仲だ。
だが親友よ、俺に教えてくれ。
ーお前、女子と仲良く話す奴だったか……!?
「セスト、どうした?」
「否、どうしたもこうしたも……俺はお前の変化に驚いてんだよ」
「あら、セス君はもしかして周りの環境に左右されやすいタイプ?そう言う人間って生き残れないから直した方が良いわよ」
「お前は明らかに俺のこと馬鹿にしてるな」
アンリを連れてこなければ良かった。セストは激しく後悔した。
何なのだ、そのいきなり取って付けたような渾名は。ネーミングセンスが無いにも程があるだろう。
「それはそうとセスト、俺と依頼を受けるんじゃないのか?」
「そういえばそんな事言ってたわね」
「!お、おぅ……」
急に本題に戻られても困惑するだけなのだが、言うしかない。
「お前と、出来たらアンリの奴を連れて盗賊退治の依頼受けたくってよ。お前どう思う?」
「俺は構わないが、アンリはどうするんだ?」
「うーん、役に立つなら良いわよ?」
何故上から目線なのだこの女は。
二人の同意……内一人は渋々だが、得た。後は行くだけだ。
と、そこでアストリッドが口を開いた。
「なんで盗賊退治なんだ?」
「ん?格好良さそうだったから」
「アンリ、こいつはこんな単純馬鹿だから気を付けろ」
「是非ともそうするわ」
「お前等……泣くぞ!」
この時、二人はアンリの《幸福刈り》の力をまだ知らなかった。




