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もしかして:奴隷

 早速薬草採取に行こうと思ったが、ギフトの確認をしたいと思い、俺は今街の中央、噴水広場に来ている。

 俺の格好はパーカーにジーパンなので、中世風な服装な方々の中では目立つ事この上ない。早く稼いで服を買わなくては。

 ちなみに角ウサギの角と魔石はギルドを出る前に買取カウンターで売り払っている。魔石が500ソル、角が800ソルになった。

 この世界の物価は女神講座でも習ってはいるのだが、値段付けが割りと適当らしく、街を実際に歩いて確認した方が良いと言われている。

 一応は1ソル=1円くらいなのだそうだが、日本にあるものがそのままこちらでも売られている訳ではないので、あまり対比しても仕方が無いのだ。

 

 さて、そんな事よりギフトである。識者の眼。最初の発動では無制限で発動したからとんでもない事になったが、2度目の発動では的確に角ウサギの場所を割り出していた。

 そしてその際に表示された事。角ウサギの詳細情報。

 あれは角ウサギだけでなく、何に対してでも詳細情報が出るのではないか、というのが今俺がここに居る理由だ。

 

 道行く人の一人、戦士風の格好をした人を見つめ、識者の眼を発動させる。

 すると現れるウィンドウ。内容にサッと目を通すと、ステータスと同等の事が記載されていた。

 人のステータスが見られるだけならば、「鑑定」や「解析」のスキルと変わらない。ギフトである理由が無い。

 そこで、もう一歩踏み込んだ情報を見てみる事にした。

 プライバシーに引っかからない程度に。

 ・今朝何を食べたか

 ・今から何処へ行くのか

 etc. 直接聞いても淀みなく答えて貰えそうな事と、識者の眼で引き出してみる。

 識者の眼は、その全てを正確に表示した。正しいかどうかは本人に確認をとっていないから解らないが、ギフトが間違う訳はないだろうとそこは信じておく。神の加護だしね。

 

 そんな他愛の無い事をアレコレ読み取る情報を変えつつ通行人に使いまくり、しばらくして。

 

「・・飽きた」


 うむ。そろそろ薬草採取に行こう。

 

 

   ◆◇◆◇◆

 

 

 薬草の自生地は街から歩いて1時間ほどの森の中。それは依頼書にあった通りだ。

 森の中に分け入って、識者の眼を発動。薬草の場所を探す。

 見つけたそれを、10枚だけ引き抜いて、ギルドカードを見る。

 「薬草採取 10/10」となっている事にニヤつきながら、街に帰って冒険者ギルドへ行く。

 

 発行手続きをしてくれた受付嬢さんの所に顔を出し、依頼達成を告げる。

 

「へぇ、こんなに早く。薬草って割りと探すの難しい所にあるんだけどね。薬草の特徴も訊いてこなかったし」

「ん、まぁ、それはあれだ、どうにかなるかと思ってさ」


 しどろもどろになる俺。識者の眼に頼るのは怪しさも付随するのか。勉強になった。

 

「まぁ、良いわ。ギルドカードと薬草をこっちへ」

「はい」


 受付嬢はギルドカードを水晶に入れると、薬草は後ろの棚にポンと置いた。

 

「はい、完了。そういやギルドランクとかの説明って受けておく?」

「いや、その辺は知ってるから大丈夫ですよ」


 ギルドランクはFから始まり、SABCDEFの順だ。依頼は自分のランクのものしか受けられない。

 ランクを上げるには依頼に設定されたポイントを規定量集めた後、ギルドで試験を受ける。


「そう。じゃ、カードをお返しします」

「どうも」


 カードを受け取る。


「これが報酬の1500セルね。確認どうぞ」

「はい」


 渡された小袋の中には、銀貨が15枚。間違いない。

 

「ありがとうございました」


 そういって受付嬢の元を離れれ、掲示板へ向かう。

 掲示板はABCDEF用の6つがあり、俺が向かうのは勿論Fの掲示板だ。

 貼られているのは、殆どが街の雑用。ドブさらいとか、引越しの手伝いとかだ。

 報酬も薬草採取とそう変わらない。1000~3000ソルが相場って所だろう。

 討伐系だと、角ウサギ10匹の討伐や、ドリルモグラ10匹の討伐などがある。

 こちらは5000ソルと割高な上、素材や魔石も売れるから美味しい。

 しかし今はそこまで金に困っている訳でもないし・・。服は欲しいが、もう少しゆったりスローライフを送りたい。

 明日やれる事は今日しない。日本に居た頃のニート根性はここでも健在なのだった。

 

 

    ◆◇◆◇◆

 

 

 俺はブラブラと商業区を回っている。この街には冒険者区、商業区、居住区、雑事区、という4つの区が存在する。

 明確な住み分けではなく、何となくそうなっていたから、折角なので呼び名を付けてみました、という感じ。

 その辺アバウトなのは嫌いじゃない。

 

 そんな商業区の道すがら。ふと檻が乗せられた馬車が奥まった所へ進むのが見えた。

 そして見間違えじゃなければ・・。

 俺はブラブラ歩いて興味ありませんよー、という風を装いながら進み、馬車の行く先をガン見した。

 そこには瀟洒な造りの一軒の建物があり、馬車からは檻が下ろされている所だった。

 檻の中身は、やはり見間違えではない。

 

「猫耳か・・。獣人は初めて見たな。それに奴隷も」


 そう。運び込まれていたのは獣人の少女だった。首輪を付けている辺り、奴隷なのは間違いないだろう。

 

「人身売買とか・・。でもこの世界では当たり前なんだろうし」


 郷に入っては郷に従え、という言葉もある。奴隷自体に何か言うのはお門違いだろう。

 それよりも。何よりも。

 

「あの娘、可愛かったなぁ・・」


 俺はふらふらとその建物へと歩いていった。


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