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冒険者登録

 コルパの街は高さ2mくらいの城壁に囲まれた、直径10kmくらいの円形の街だ。

 街道が縦横に走っており、北区、西区、南区、東区と分かれてそれぞれに特色がある。

 街道の行き着く先は門であり、こちらは北西門、北東門、南西門、南東門となっている。

 俺がたどり着いたのはその中の南西門だった。

 

「止まれ! 身分証を出して貰おうか!」


 南西門の門番が声を張り上げる。威勢があって大変よろしい。大声はうるさいが。

 

「あー・・。身分証は無いんだ。ギルドカードを作るから、中まで付いて来て貰えるか?」


 この世界の常識として、門番は身分証の確認を行う。

 身分証が無い場合は、門番監視のもと身分証を作り、それを確認して門番は門に戻るという。

 それも門番の仕事なのだ。

 

「そうか。冒険者になりにコルパまで出てきた、って所か?」

「まぁそんな所ですね」

「よし、良いだろう。 開門!」


 門番の掛け声に、他の門番が門を開ける。あれ、この人ちょっと偉い人なのかな?

 

「じゃあ、コルパの街を案内がてら冒険者ギルドまで付き合おう」

「お手数かけます」


 言葉を交わすのは初めてだが、どうやら上手くいっているようだ。女神様様である。

 街に入ってからも、あれが道具屋だ、あれが武器屋だ、あれが防具屋だ、ととても親切な門番さん。

 ついでにオススメの宿も聞いたりして、女神講座では知りえなかったコルパの情報収集も行う。

 道中、「お前さんは訛りが殆どないな」と言われてドキッとしたが、まぁそれくらいで何事も無く冒険者ギルドに着いた。

 

「ここが冒険者ギルド コルパ支部だ」

「ほー・・」


 建物をを見上げる。3階建てで横にも広く、イメージどおりのギルドって感じ。

 1階は食堂兼受付らしく、昼間だというのに一杯ひっかけて騒いでいる厳つい男たちが居る。

 

「ほれ、行くぞ」

「あ、はい」


 冒険者ギルドの中に入る。入って振り返れば依頼の張られた掲示板が壁に並び、体を前に戻せば受付だ。

 左奥には買い取りカウンターのような物も見える。

 門番さんは入って直ぐの所で立ち止まったので、俺だけが進んで受付へ向かう。

 

「あの、冒険者登録がしたいのですが」


 受付は皆女性だ。少しだけしり込みしつつも、声をかける。

 声をかけられた女性はやんわりと笑うと、カウンター下から書類を引っ張り出した。

 

「はい、承ります。まずはこの用紙に必要事項を記入して下さい」


 渡された用紙は、名前、性別、出身地、得意武器などを書く簡単な物だった。

 出身地にちょっと迷ったものの、素直に「ニホン」と書いておいた。まぁ国も村も無数にあるこの世界で、不思議に思われる事も無いだろう。

 

「はい、書けました」

「では次に、こちらの水晶に手を当ててください」


 受付嬢が次にカウンター下から取り出したのは、一抱えもある大きさの水晶だ。

 ちょっとビックリしながらも、手を当てる。

 すると、水晶が淡く輝き、透明だった水晶が銀色に濁る。

 そして、その濁りが一点に集まると、カードとなって吐き出されてきた。俺の方へ。

 

「どうぞお取り下さい。それが貴方のギルドカードになります」


 先ほどの用紙をカウンター下にしまいつつ、受付嬢が言う。

 恐る恐るそのカードを引き抜いてみると、何も書かれていないただの銀板だ。ひっくり返しても何も無い。

 

「あの・・?」


 受付嬢を見ると、受付嬢は笑顔のまま、

 

「情報開示、と念じてみて下さい」


 と言った。

 言われるまま念じてみると、銀板に「ステータス」で見た情報を同じ物が浮かび上がってくる。

 

「へぇ・・。これは中々」

「開示したい情報は選択できます。ですが、嘘の情報は表示する事が出来ません。また、裏面にはギルドの依頼達成や、討伐モンスター数や、預金情報などが表示させられます」


 簡単な説明だが、これは中々便利だ。

 取り敢えず名前だけ常時開示としておいて、ポケットに仕舞う。

 

「ギルドカードの初回発行にはお金はかかりません。ですが、再発行の際は1万ソルかかりますのでご注意下さい」

「はい、解りました。それで、初心者向けの依頼って何かオススメなのありますかね?」

「それでしたら、こちらなどがオススメですね」

 

 受付嬢はカウンターしたから分厚い冊子を取り出すと、その中の1ページを開いてこちらに向けた。

 書かれた依頼は薬草10枚の採取。場所はここから歩いて1時間ほどの森の中。

 薬草は自生のものであるため、10枚以上採取した場合は、追加報酬どころかギルドに罰金を取られるとの事。

 

「ふむ。良さそうですね。では、それを受けたいと思います」

「はい。では、ギルドカードをお貸し下さい」


 ギルドカードを受付嬢に渡すと、受付嬢は先ほどの水晶の中にそれを差し込んだ。

 淡く輝く水晶。どういう原理だかは解らないが、魔法の一種だろう。便利なものだ。

 

「はい、終わりました。裏面を確認下さい」


 渡されたギルドカードをひっくり返し、依頼状況開示、と念じると「薬草採取 0/10」との文字が浮かび上がってきた。

 これはMMOで慣れ親しんだアレにそっくりだな。

 

「では、いってらっしゃいませ」

「うん、ありがとうございました」


 そう言って受付を離れる。ギルドの出入り口に向かうと門番さんがこちらを睨むでもなく見守っていた。

 

「どうやら無事発行出来たみたいだな」

「えぇ、はいコレ確認お願いします」


 そう言ってギルドカードを見せる。

 

「キサラギ トウマ か。犯罪歴の開示も頼む」

「はい」


 ギルドカードを持ったまま、犯罪歴開示と念じる。浮かぶのは当然「犯罪歴:なし」の文字だ。


「よし、確認も終わった。ようこそ、コルパの街へ! 今更だがな」


 ニヤリと笑う門番さんに、俺も笑顔を返す。


「これからよろしくお願いします」


 そう言って頭を軽くさげ、俺はこの街に本当の意味で迎え入れられたのだった。


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