02 旅立ち前夜
彼の迎えを了承した後、すぐにでもと行動を起こそうとした彼に1日だけ時間が欲しい旨を伝え、渋々ではあるが、了承してもらった。
・・・彼の配下には睨まれてしまったが。
彼らが去った後、ため息をついて家の整理を始める。
すぐ解放されればよいか、長期間にわたって拘束される場合もある。もしくは殺されるか。
そんなことを考えながら整理をし、旅の支度をする。
物はたいしてない為、すぐに終わる。
一年半暮らした部屋を見回した後、部屋を出る。
夕方近くで人が多くなっていたこと、将軍を拝命しているお偉い方が来たこと、そして彼の配下が怒鳴ったためだろう。少なくない人がこちらを伺っていた。
またもやため息がでる。話しかけるなオーラを発しながら、人ごみを抜ける。
行き先は大家さんの家だ。
私の部屋がある建物より2軒先に大家であるアリア様の家がある。
玄関でノックをすると年配の男性が顔を出した。アリア様のお世話役、アーライ様だ。
アーライ様は私の顔を見て苦笑し、応接間へ通してくれた。
少し待っていると、車椅子に座った年配の女性が姿を現した。
私の家主であり、恩人でもあるアリア様だ。アリア様もアーライ様と同じように私の顔をみて苦笑した後、椅子を勧めた。
「で、いつ行くの?」
挨拶する間もなく、決定事項のように言われ、さらに膨れっ面になった私だが、はぁっとため息をついた後、明日出立すること、部屋にあるものは好きなように処分して欲しい旨を伝えた。
「あら、帰ってこれないのかしら」
「分かりません。あれから3年も経っています。いまさら私をどうするつもりなのか検討もつかないので」
「それでいいの?まぁ、あなたがそれでいいのなら私はかまわないけど」
「お世話になっておきながら、恩も返せず、大変申し訳ありませんが・・・」
「別に楽しかったからいいわ。あなたにはほーんとに楽しませてもらったわ」
頭を下げているとくすくす笑い声が聞こえ、いわれた言葉に冷や汗をかいた。
「では、これは私からの餞別よ。受け取ってくれないかしら」
アーライ様より受け取ったものは碧い石、レイルのペンダントだ。レイルは魔石といわれる物で価値の高いものだ。そんな高価なものは受け取れないと断ろうとすると、
「たいした価値はないものよ。でもあなたを守ってくれるわ。私の心配を少しでも減らすと思って受け取ってくれないかしら?」
と首をちょこんと傾げながら言われてしまった。そんなこと言われたら断れないじゃないかー!と心の中で叫びながら、
「・・・・ありがとうございます。大事にします」
受け取った瞬間、一瞬光ったような気がしたのは気のせいだろうか・・・?