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EP 6

突入ブリーチング! 闇カジノを制圧せよ

「……ビンゴだ」

T-SWAT本部(廃倉庫)の薄暗い作戦室で、俺は一枚の地図をホワイトボードに貼り付けた。

先日の現場で確保した仮面の男は口を割らなかったが、所持品にあった硬貨の流通ルートと、太郎(国王)が裏から仕入れた情報を照らし合わせた結果、一つの拠点が浮上した。

「王都の地下水路跡を利用した、会員制の闇カジノ。ナンバーズの資金源(金庫)の一つだ」

俺の説明に、ピザ(タロー・ピザの新作『ギガ・ミート』)を頬張っていた太郎が口を挟む。

「ここの売り上げが、奴らの活動資金になってるわけだ。……ちなみに、押収した現金は国庫に入れていいからな。あ、2割はT-SWATのボーナスにしていいぞ」

「言質は取ったぞ」

俺はイグニスとキャルルに向き直った。

作戦ミッションを伝える。目標はカジノの制圧、および帳簿と資金の確保。敵戦力は不明だが、魔法使いの用心棒が多数いると推測される」

「魔法使いか……。あいつら、遠くからチマチマ撃ってくるから嫌いなんだよなぁ」

イグニスが爪楊枝で歯をシーシーさせながらぼやく。

「大丈夫だよトカゲ君! 私が懐に入って顎を砕けば、呪文なんて唱えられないし!」

キャルルが安全靴をコツコツと鳴らして笑う。

「その通りだ。魔法使いの弱点は『詠唱』と『視認』だ。そこを突く」

俺はベストのポケットから、円筒形のグレネードを取り出して見せた。

「今夜のパーティーの招待状だ。派手に行こうか」

***

時刻は深夜2時。

王都の歓楽街、その裏路地にある古びた酒場の地下。

重厚な鉄扉の前に、二人の屈強なオークの見張りが立っていた。

「あぁ? なんだテメェら。会員証は……」

オークが言いかけた瞬間、暗闇から飛び出したイグニスが、巨大なスレッジハンマーを振りかぶっていた。

「会員証? 俺様の顔面ツラがパスポートだオラァ!!」

ドゴォォォォォォン!!

轟音と共に、鉄扉が枠ごとひしゃげて吹き飛んだ。

オークたちは扉の下敷きになり、ピクリとも動かない。

突入ブリーチ成功! GO! GO! GO!」

俺の号令と共に、T-SWATがなだれ込む。

カジノフロアは一瞬にしてパニックに陥った。

ルーレットを楽しむ貴族、カードに興じる商人たちが悲鳴を上げて逃げ惑う。

その混乱を縫って、黒服を着た用心棒たち――魔法使いたちが杖を構えた。

「侵入者だ! 焼き尽くせ! 『赤き炎よ、我が手に――』」

「遅い」

俺は床を滑るように投げ込んだ。

安全ピンを抜いた『M84スタングレネード(閃光手榴弾)』を。

カッッッ!!! キィィィィン!!

「グアァァァァッ!!? 目が、耳がぁぁ!!」

強烈な閃光と、鼓膜を破壊するほどの爆音。

狭い地下空間での効果は絶大だ。

魔法使いたちは視界を奪われ、三半規管を狂わされ、詠唱どころではなくなる。

「制圧する!」

俺はKorthを構え、躊躇なく引き金を引いた。

狙うのは眉間ではない。杖を持つ手、膝、肩。

バン! バン! バン!

「ぎゃあっ!?」

「手が、手がぁ!」

「オラオラオラァ! シールドチャージ!!」

イグニスが暴走機関車のように突っ込み、盲目状態の魔法使いたちをボウリングのピンのように跳ね飛ばす。

魔法障壁を展開しようとした者もいたが、イグニスの物理的な質量攻撃の前には紙切れ同然だ。

「月影流・乱れ鐘打ち!」

キャルルはカジノテーブルの上を跳び回り、残った敵の頭上から安全靴の踵を落とす。

ゴォン! ゴォン! と小気味良い音が響き、用心棒たちが次々と沈黙していく。

状況終了クリア。……いや、まだだ」

俺はフロアの奥、支配人室のドアを見据えた。

***

「くっ……! 馬鹿な、私の城がたった数分で……!」

支配人室に逃げ込んだ男――ナンバーズの幹部候補である支配人は、震える手で金庫の中身を鞄に詰めていた。

裏口から逃げようとドアノブに手をかけた瞬間。

ガチャン。

冷たい感触が、こめかみに押し当てられた。

俺だ。

「詰み(チェックメイト)だ。アンタのボスはどこにいる?」

「ひっ……!」

支配人は両手を挙げ、ゆっくりと振り返った。

その顔には絶望と、それ以上の「恐怖」が張り付いていた。

俺に対してではない。もっと別の何かに対する恐怖だ。

「い、言えない……。言えば、殺される……『No.0(ゼロ)』様に……!」

「No.0?」

俺が眉をひそめた瞬間、支配人の目が焦点を見失った。

彼の胸元にあったペンダントが、不気味な紫色に発光する。

「あ、あがっ、ご、ごめんなさ……リセット……しないで……!」

「おい、どうした!?」

俺が銃を下ろし、胸倉を掴んだ時には遅かった。

支配人の口から黒い泡が溢れ、その身体が急速に炭化していく。

自害か? いや、これは――遠隔操作による『口封じ』だ。

「……あ、あ……『予定通り(シナリオ通り)』……だ……」

支配人は最期にそう呟き、崩れ落ちて灰になった。

「チッ、尻尾切りかよ」

俺は舌打ちをして、灰の山から焼け残った手帳を拾い上げた。

そこには、数字の羅列と、次の計画を示唆するような走り書きがあった。

『No.3 輸送ルート確保』

『No.1 次の標的:リベラ法律事務所』

「……リベラ?」

あの弁護士か。

俺は手帳をポケットにねじ込み、灰になった男を見下ろした。

カジノの制圧は成功した。資金も押収できる。

だが、敵の底が見えない。

「No.0……。随分と趣味の悪い脚本家がいるようだな」

俺はポケットから赤マルを取り出し、火をつけた。

甘い勝利の味はしない。

ただ、焦げ付いた灰と、火薬の匂いだけが漂っていた。

「隊長ー! 金庫の中に金貨がいっぱいだよー!」

「こっちには高級な酒があるぞ! 今日は宴会だ!」

部下たちの呑気な声が聞こえる。

俺は煙を吐き出し、少しだけ口角を上げた。

「……ま、今はこれで良しとするか」

俺たちはカジノの莫大な「売上金」と、わずかな手がかりを持って、地上へと帰還した。

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