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星々の涙  作者: 空想の魔女
第1章 思い出の故郷編
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第2話 勝負魂

 朝二人で呑気に世間話をしながら登校していると、校長先生が校門を閉めようとしているのが見える。

「やばい!!!」

朝礼が8時30分なので、10分前の8時20分になると閉門されるのだ。

さすがに私のせいで、凪紗を待たせた挙句に遅刻させる訳にはいかない。

「走ろ!!」「うん!!」

二人は急いで校門に向かって一直線に走り出す。

すると私たちの背後から、力強い足音が猛烈な勢いで迫ってくる。

気になって振り向いて見ると、同じクラスの親友でありライバルの真大だった。

「急げ急げ!!」と真大に後ろから追い越される。

それを受けて陽菜の勝負師に火が付き、「負けてたまるかぁ!」と全速力で後を追いかける。

少し前傾し、腕を後ろに鋭く振り、足で地面を叩いて加速する。


校長先生はこちらに走ってくる生徒達に気づく。

「またあの二人か……」と校長先生に認知されるほどの困った子達だ。

陽菜が後ろから追いつき、真大と横に並んだ。

お互い抜きつ抜かれつで、一進一退の攻防が続く。実力はほぼ互角で、どっちが勝ってもおかしくはない。

校門というゴールテープに向かって、風をきり裂くかのごとく無我夢中に駆け抜ける。

ゴール直前、陽菜は勝ちを確信した。このまま行けば足一歩分の差で真大に勝てる。

だが最後の最後、足の位置は自分の方が前なのに、真大の胸が先にゴーラインを割った。

陸上競技において、手足ではなく胴体がフィニッシュラインに到達した時点でタイムが決まる。

凪紗も二人の後に続き、ギリギリ三人とも無事に校門を通過することが出来た。


ゴールした瞬間に緊張が解け、全員がその場に崩れ落ちるように膝をついた。丸めた背中を大きく上下させながら、冷たい空気を何度も吸い込み、荒い呼吸を整えることに必死だった。

「よっしゃあ今日は俺の勝ちやな!これで38勝38敗!」と真大が清々しい顔で話しかけてくる。

陽菜は惜しかっただけに悔しさが残るが、出だしが遅れてしまったことと、真大の勝ちたいという執念に負けを認めざるをえない。

しばらく動けなかった陽菜だが、やがて顔を上げたその瞳には、すでに次の戦いを見据える光が宿っていた。「次は絶対うちが勝つ!」



 学校の鐘の音が鳴り響く。

「起立・礼・よろしくお願いします・着席」その日の日直の号令で授業は始まる。

「では今から社会の授業を始めます。皆さん前回出した宿題はやってきましたか?」と先生が尋ねる。

前の席に座る真大は、先生の言葉を聞いて慌てる。

「しまったぁ!忘れてた!おい、陽菜も宿題やってきてないよな???」と後ろを振り向いて聞いてきた。

聞き方からするに、どうせ自分と同じく忘れて来ているはずだと高を括っているのだろう。


「ふふふふふ、もちろん!!!」と自信満々に陽菜は答える。

だが安心させたかのように装いつつ、机の中から宿題用紙を取り出す。

「昨日徹夜して答え丸写ししてきた!」と全問正解の宿題用紙を自慢気に見せつける。

それを見た真大は眉間に深くシワを寄せ、苦虫を噛み潰したような顔で悔しがる。

陽菜はその顔を見て、競争では負けたがしてやったりと思うのだった。


「では前回のテストを返却しますので、呼ばれた人から取りに来てください」

先生が順番に名前を呼び、呼ばれた人は前に取りに行く。毎回テストの点数を確認する時になると、期待と不安な気持ちが入り混じる。

「よし!せーので見せ合おうぜ!」「せーの!!!」この2人は何かとくだらないことで張り合うのだ。

「よっしゃーー!!!」

「くっそぉーーーーー」

真大が37点。陽菜が34点。

わずか3点差。あと2問合っていたらと、その僅かな差に届かなかったことに悔しがる。


「凪紗は何点だった?」と陽菜は聞きつつ、凪紗の答案用紙を二人で覗き見ると、驚愕な点数が書き込まれていた。

「92点!!!!!」二人の言葉が同時に合わさる。

取ったこともない点数を目の当たりにして、驚きのあまり口がふさがらない。

凪紗は非常に賢く、毎回クラスで上位の成績を収める。

「すごいよなーー」

「そんなことないよ」と謙遜する。

自分なら見せびらかしたくなるものだが、本当に優れた人はその知識や才能をひけらかしたりはしない。

それに比べて私達は、なんて底辺の戦いをしているのだろう……。


先生が授業の説明をしている。

黒板の文字をノートに執筆するが、陽菜の首がカクンカクンと上下に傾く。

上瞼が磁石のように下瞼とくっつこうとする。

「えーー、では62ページを読んでくれるか如月。ん、如?如月!?」と先生が振り向くと、左腕を枕にして爆睡していた。

授業中居眠りをして「如月起きろ!日向もだ!」と真大も巻き添えになり先生に注意される。

眠気には勝てない……。



 お昼の鐘が鳴る。

陽菜はお昼休みに、母が朝早く起きて作ってくれるお弁当を食べるのが楽しみの一つ。

弁当には、陽菜が好きなおかずが沢山入っている。

のり玉の掛かったふりかけご飯に、黄色い卵焼きと赤いタコさんウインナー、そして昨日の晩御飯の唐揚げと赤いプチトマトが添えられており、まるで食の玉手箱だ。


まずはいつも通り卵焼きから食す。めんつゆと砂糖のシンプルな味付けで、ふんわりしっとりとした食感がたまらない。

タコのような見た目のウインナーは、パリッとした歯ごたえで少し濃いめの塩見と甘みがクセになる。

柔らかくてジューシーな唐揚げは、昨日より味が染み込んでいてすごく美味しい。

最後に口の中で噛むとプチっと果汁が溢れ出すプチトマトは、赤いルビーのようで陽菜にとっては締めのデザートなのだ。


お弁当を食べ終わると、血気盛んなお年頃の小学生の遊びといえば……

「陽菜行くぜ!」「おう!」校庭に集まり、ドッジボールをするのが恒例である。

靴でコートの線を描き、グッチーでグループに別れる。

陽菜と真大はチームが別れ、お互い闘争心に火が付く。


勝負が始まるや否や、陽菜はラインの外側にいた。

ドッジボールは1対1の勝負ではなく、誰かが一人でも多く生き残った方が勝ちの団体戦だ。

男子相手に真っ向勝負で挑んでも力の差で負ける。ならこちらは戦略的に戦うまで。


まずボールがアウトラインへと転がってくる。

陽菜はすかさず拾い上げ、直さま左足を前に出して体重移動させながら思いっきり投げ込む。

そのボールは惜しくもターゲットの横を通過して外してしまった。

いや違う。相手選手に攻撃をすると見せかけて内野の仲間にパスしたのだ。

まずは中と外の連携プレイで、敵の数を減らしていく。


中盤戦になると、サイドラインを利用して横から挟み撃ちで攻撃する。ターゲットの動きよりも、いかに素早いパス回しが出来るかがポイントだ。

ある程度外野の仲間が復活したら、自分も復活して相手の戦力を一気に減らす。

相手を当てる際は、肩や足元、横を狙う。

なぜなら相手が最も取りやすいのは、胸から腹にかけての体の中心部だからだ。


後半お互い半数に減り、ここからは如何に仲間を守りつつボールを死守できるか。

真大は思いっきり、こちらに向かって剛速球を投げ込んでくる。

真大のボールはドッシリと重みがあり、普通に受け止めると体から弾け飛んでしまう。なので腰を落として、ボールを抱え込むような姿勢で衝撃を殺しつつキャッチする。


すると敵が陽菜の方を見つつ、別の方向に投げてフェイントを使ってきた。

「キャ!」相手の攻撃が仲間の凪紗に向かって投げられた。凪紗は避けられたとしても捕球力はそこまでない。

この距離では避けるのが誠意一杯で、避けられても外野で待ち構えている敵に当てられてしまう。

体が咄嗟に動く。凪紗の目の前に陽菜は素早く移動し、ボールを受け止める。

「なかなかやるじゃねえか」「ふん、女を舐めたら痛い目にあうぜ」

汗が頬を滴り、楽しく生き生きとしている。

真大に向けてボールを投げようとした瞬間、お昼休み終了の鐘が鳴る。


今日の勝敗は引き分けに終わった。



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